動き出す歯車 二節
(あれって・・・私がアルナトラに着いた時、路地裏に連れ込んで追い剥ぎをしようとしてたゴロツキ共じゃない?)
以前トワにボコボコにされヒューに捕まり、機士団に連行された件のゴロツキの三人組はどうやらシャバに舞い戻って来ている様で・・・
しかもトワの時と同じく、この辺りでは見かけない異国の装束を身に纏った女の子を三人で囲んでいました。
(・・・どうやらあの三人は全く懲りていないみたいだねぇ~しかしあの囲まれている子は一体何者なんだろう?)
整った顔立ちにハニーブロンドの髪と碧眼で高身長。
しかしこれらの容姿はプーリタイ島においては珍しくない特徴であり、目を引くのはその女の子の纏っている服にありました。
胸元がV字型となっている大きな角襟に、胸元には凝った色のタイが巻かれています。
服は上下でセパレートになっており上は角襟の付いた服に下はスカートという、少なくともこの国では一切見かけない奇抜なそれでいてどこか古風な服装でした。
(南のゲインブルの物か・・・いやひょっとしたら大陸の方の服かも)
そんな事を思案していると、三人は女の子を路地裏に連れ込もうとしていました。
(見てしまった以上は放っておくわけにはいかない。一つ人助けでもしますか)
そう心中で呟き早速三人を取り押さえ、女の子の身柄の安全を確保するために動き出しますが・・・そこでトワ信じられないモノを目にします。
三人のゴロツキ達に囲まれ、手首をも掴まれ恐怖に顔を引き攣らせた女の子は何と乳白色のオドを身に纏いソレを暴発させてしまいそうになっていました。
(不味い!あんな量のオドが暴発したら、ゴロツキ共はタダじゃすまないぞ!)
そう直感したトワは絞っていたオドを瞬時に増大させると-
-バッ!
目にも止まらぬ速度で移動しゴロツキ共と女の子の間に割って入ると、女の子を抱えて連れ去りました。
後に残されたゴロツキ共は一体何が起こったのか解らないままただ呆然とするしかありませんでした・・・
「あのっ、ありがとうございました!私あの人達に急に声を掛けられて上に囲まれて困っていたんです」
「いいっていいって、困った時はお互い様という言葉もあるしね~」
ゴロツキ共から女の子を連れ去ったトワは市街地にある公園で、興味本意からその少女と話を始めました。
「私の名前はトワ・キビマキ、このアルナトラで貴族の屋敷に勤めてるいわゆる使用人って奴だね。あと一応修行中の見習い機士でもあるかな」
「私は・・・水上藤子って言います」
ハニーブロンドの髪をした美しい女の子はそう自身の名を告げます。
「ミナカミ・トーコ?変わった名前だね。ここら辺じゃ全く聞かない姓名だ」
「・・・」
「あ~私、何か気に障ること言っちゃったかな?」
「いえ!そんな事はないです!ただ・・・」
トーコはそう何か言いかけましたが再び口を閉ざしてしまいます。
(う~ん中々警戒心が強い。こうなってくると意地でも色々話がしたいな)
件の乳白色のオドの事を含め、何故かトーコの事が気になるトワは何とかして彼女と話をすべくアプローチを始めます。
「そういえば私達ってあんまり年が離れてる気がしないんだよね」
「それは私も感じました」
「因みに私は十六歳。トーコさんは?」
「私も十六です」
「なんだぁタメじゃん。なら敬語なんて使わなくていいよ私の事も呼び捨てで構わないし」
「そう・・・なの?王城にいる同い年のメイドさん達は私や他の皆に敬語を使ってたから、こちらもそれに合わせていたのだけれど・・・」
「変な遠慮は要らないよ。ってトーコは王城から来たの?」
「ええ?あっうん・・・そうなるね」
「じゃあどこかの貴族のご令嬢様なんだ?凄いや!」
「そんなんじゃないよ!私なんてどこにでもいるただの高校生だし・・・」
「コーコーセー?それって何かの身分?あるいは仕事だったり?」
「あっ!・・・高校生というのは学生って事だよ。もっともこの世界に私達の世界と同じ教育システムがあるかどうか知らないけど」
「学生っていうなら解る。ここアルナトラや私の故郷にも小さいながら学校はあったし・・・それより今トーコ、私達の世界と言ってたけどアレは・・・?」
「ああっ!あれは言葉のアヤだから忘れてくれると嬉しいかなぁ~」
「ハハハ、流石にそれは無理があるよ・・・」
「だよねぇ・・・本当は城の外の人にはまだ話していけないって言われてたけど・・・仕方ない助けてもらった恩もあるしね」
トーコはそう意を決してある事をトワに話し始めます。




