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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
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星を巡る力 七節

「へくっち!・・・ひどい目にあった」


 あの後、川を泳ぎ自力で岸まで辿り着いたトワはヒューが用意したたき火にあたり暖を取りつつそう洩らします。


「オドを纏い続けかつその量を必要に応じて調整する技術は一朝一夕に身に付きません。まぁ気長にやっていきましょう」


 ヒューはトワの姿を見ないように背中を向けながらそう語りました。


 そしてその三日後--


「ん?なんだろうあの魚?」


 トワはヒューが用意した、川に落ちても大丈夫な様に加工された一種の特殊なスーツを着用しながら修行に励んでいると川の中に妙にキラキラと光る魚を発見します。


「川魚の一種っぽいけど・・・光の反射で光っているのとは少し違うような・・・」


 そう考えていると魚はトワの存在に気がついたのか、更に一層光り輝いたかと思ったら物凄い速度で泳ぎ去り巨岩の陰に身を隠しました。


「間違いない・・・あの魚オドを纏って泳ぎ回っている!」


 異様なまでの光を帯び、目にも止まらぬ速度で泳ぎ回る魚を見てそう確信します。


「この世界の全ての生き物にオドが宿っているといっても、あんな川魚は初めて見るなぁ」


「ああ、あのイワナはこの渓流にしか生息していない希少な魚ですからね。他ではまず見かけないでしょう」


 トワの疑問にそう答えるとヒューはアゴに手をやり少し思案してから新しい課題を告げます。


「フム。ではトワさん今日を含めた二週間であのイワナを手掴みで捕まえてみて下さい」


「修行に関係なさそうだし、その上簡単に捕まえられそうなんですけど・・・」


「さてそれはどうでしょうね」


「解りました。見事捕まえてみせましょう」


 ヒューが意味深に話す時は、何か目的があるとこれまでの経験で知ったトワはイワナの捕獲に力を向けるのでした。


 そして一週間後--


「よ~しそのまま動くんじゃあないよ~」


 オドを絞り気配を薄めつつ、川面に立って水中にいる例のイワナにゆっくりと近づきますが・・・


 -ギュン!


 川面に立つトワのオドの乱れを察知したイワナは凄まじい速度であっさりと逃げてしまいました。


「なんて賢くて警戒心が強い魚なのよ・・・けれど以前よりは近づけてる」


 一週間前なら川面に立っただけで、イワナにオドの乱れを察知され即座に逃げられた事を思うとかなり進歩していると自負します。


「だけどまだまだ纏ったオドを調整・絞る技術は未熟だ。あと数日であの魚捕まえる為にはもっと技術を向上させなきゃね・・・」


 そう呟きつつより一層修行に励みます。

 そしてその二日後--


「よしいたいた・・・しかしここからが問題なんだよねぇ~」


 イワナが生息する川の巨岩を慎重にどかしつつ、その姿を確認したトワはこるからの行動を思案します。


(今までと同じ様に捕らえにいけば多分確実に逃げられる・・・はぁどうしたものやら)


 そう悩みながら気晴らしにふと周りの風景を見渡すと・・・ある事を閃きます。


(もしかして、この渓谷に漂うオドの流れと、自分のオドを限り無く近づければイワナに気付かれないのでは?)


「フウゥゥゥー、ハアァァァー」


 そう直感したトワは深く、深く、呼吸を行い周囲に流れるオドと自身のオドを同調させていきます。


 すると何故か今まで不安定で違和感があったトワの灰色のオドは見事に絞られその気配は周囲の環境に溶け込み見事に薄れていきました。


(なんとなく今までより上手くいってる手応えがある。これなら!)


 そう感じゆっくりとしかし確実に水中にいるイワナに手を伸ばしますそして・・・


「よしっ!捕まえた!」


 オドを纏ったまま、イワナをその怪力で握り潰す事無くきっちりと両手で捕まえ捕獲する事に成功しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] トワちゃんが修行を頑張る様子、とても良かったです。頑張り屋さんが真面目に頑張る姿、素晴らしいですね。また、イワナをうまく掴めるまでも、応援できました。 [一言] 水に落ちた姿を見なかった、…
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