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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
追放立志編
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星を巡る力 六節

 翌日、二人はヒューが所有する小型のカミオンに乗りアルナトラ郊外にある広大な渓谷に来ていました。


 因みにカミオンとはドラッヘにおける車輌で、キャバルリーを運搬する為の大型タイプや艦艇クラスの超大型の物まで様々な種類があります。


 更にこのカミオンは魔導器と呼ばれるオドを知覚出来ない一般人でも、ある程度オドを取り扱える器具を動力としている為にドラッヘ中で普及しています。


「着きました。ここが修行場所です」


「はぁー王都からカミオンで二時間ちょいの所にこんな自然豊かな渓谷があるなんて知らなかった」


 多くの山々に囲まれ、豊富な水源と巨岩が両岸に迫る山深い渓谷を見渡しながらトワはそう感嘆の声を上げます。


「今はシーズンオフでほとんど人はいませんが、バカンスのシーズンになると富裕層の観光客で一杯になるぐらい人気の名所です」


 ヒューはこの渓谷がそれなりに有名な観光名所だと説明すると続けて・・・


「我々が目指すのはもっと上流にある場所ですので、日が出てる間に行きますよ」


 そう言うとヒューはオドを纏い、何事も無く数多の岩場に軽々と飛び移りながら上流の方に向かいます。


「ちょっ!置いてかないで下さいよぉ~」


 トワも少し情けない声を上げながら、屋敷から持ってきた大量の荷物を装備したままオドを纏い危うい足どりでヒューを追うのでした。


「ふぅ~危なかった。もう少しで足を滑らせて川に落ちる所だった・・・」


 ヒューを追って渓谷の上流地点にやっとの思いで辿り着いたトワはそう洩らしました。


「かなり危なっかしい足どりでしたが、始めてオドを纏って本格的に動き回ったにしてはよく動けていた方だと思いますよ」


 上流地点にあるコテージの扉の鍵を開けつつヒューはそう言いました。


「にへへへっ~私ってば、もしかしてそれなりに凄い奴では?」


「・・・とは言えオドの纏い方や出力はまだまだ不安定で脆い。これからみっちりと鍛練を重ねる必要があります」


「・・・はい」


 少しばかりおだてられた程度ですぐに調子に乗るトワに対してヒューはすかさず釘を刺します。そして-


「コテージに荷物を運んで整理整頓し、滞在の準備が済み次第修行に入ります」


「了解しました。ではちゃっちゃっと始めちゃいますか」


 ヒューの言葉にそう返答し作業を開始します。


 それから一時間後-


「コテージの方はおおよそ片付いたので、早速修行を始めます」


「はい。よろしくお願いします!」


 トワがそう返答するとヒューはオドを纏い下流に比べ流れが急になっている川面を何事も無く渡り切ります。


 更に続けていつもより浅く長い呼吸を行い、纏っているオドを絞り薄めたまま川面に向かい・・・これまた何事も無く渡り切りました。


(凄い!あんな急な流れの上をまるで散歩するように歩けるなんて!)


トワはヒューの行動をじっくりと観察しながら心中でそう驚きの声を上げます。


「私の行動は見ていましたね?では早速同じ事をやってみて下さい」


「りょ、了解しました」


 対岸から川面を歩き渡って帰ってきたヒューにそう告げられたトワはやや緊張しつつも修行を開始しますが・・・


(うおっと!?川の流れのせいで常に水面が変則的に揺らめいてから、オドを纏ってても足を取られかける!!)


 いつもと全く異なる環境での修行に悪戦苦闘し、へっぴり腰になりよたよた歩きになるトワでしたが・・・持ち前の運動神経の高さとここ一ヶ月みっちりと積んだ体幹トレーニングの効果もあり、かなり危なっかしい所がありつつも何とか川を渡り切ってみせます。


(次はオドを絞りながら渡るのか・・・)


 トワは更に少し緊張し渡河を開始します。


(さっきより流れの影響が格段に大きい!)


オドを絞り薄めた事により、川の流れの影響をもろに受けたトワはオドを調整に四苦八苦しやがて・・・


 バシャン!


 対岸まで渡り切る事が出来ず、数歩進んだ所で態勢を乱し川に落ちてしまいました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 難しい訓練を元気に頑張っているトワちゃんが良かったです。調子に乗ってしまうところも愛嬌があって、真面目で厳しいヒューさんとの対比として、面白かったです。カミオンの設定も分かりやすくてこのあ…
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