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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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内なる世界へ 第二節 

「それで竜のオドを制御するには具体的に何をすればよいのでしょうか?」


「幽世に潜って赤竜のオドと対話し説得する。これが一番だね」


「カクリヨ・・・っていうのは一体何なんですか?」


「一言で言うなら内在世界。君を含むこの星に生きる全ての生物が持つ内側の世界だね」


 トワの質問に対しヒメはおどけた調子ながらも、ほんの少し重たい口調でそう答えます。


「それじゃあ早速潜ってもらおうかな。時間も惜しいしね」


「って!いきなりですね!?私まだ潜り方すら教わってないんですけど」


「それは今から説明するから、とりあえず今はここに頭を置きな」


 ヒメはそう言って膝枕をすると、そこに頭を置くようトワに促します。


「ちょっ!?それは余りに恐れ多い気が・・・」


「全くつべこべ言わず、さっさと身を委ねな」


 ヒメはそう言うと半ば強引にトワの身体を引き倒して、無理矢理に彼女を横にしてしまいます。


(こっ、これがヒメ様の膝枕!・・・なんという柔らかさと良い香り。余りに心地良くてこのまま寝落ちしてしまいそうだぁ)


「おやおや、何を蕩けた顔しているんだい?」


「すっ、すみません。ヒメ様の膝枕が余りに心地良かったものでつい・・・」


「まあ構わんさ。そうして夢心地でいられるのも今の内だけだろうからねぇ」


「・・・それってどういう意味でしょうか?」


「さあどういう意味なんだろうねぇ」


 ヒメの言葉に不安を覚え、顔を強ばらせながらトワはそう問いますが、上手くはぐらかされてしまいました。


「さて、じゃあ早速幽世に潜ってもらうとしよう。まずオドを最大まで高めその状態を維持して」


 トワは言われるがまま自身の纏う灰色のオドを最大限まで高めつつソレをしっかりと安定させます。


「フムフム、オドはしっかりと安定している。ここ数ヶ月の修行の成果は出ているねぇ」


「ありがとうございます」


「じゃあ次はそのままの状態を維持しながら脱力するんだ」


「・・・このまま脱力すると眠ってしまいそうなんですが」


「眠っちゃダメだよ。意識を保ったまま出来る限り脱力するんだ」


「わっ、解りました」


「指、腕、足、お腹、背中、顔、それに歯に舌、頭にもまだ力みがある。とにかく全身のあらゆる箇所の力を抜くんだ」


「やべ・・・マジで寝そう」


「寝ちゃダメ。目的を忘れず脱力しつつも集中は切らさないでね」


 トワは言いつけ通りにオドを最大限に高めたまま、出来る限り脱力し意識が朦朧になりながらも何とか集中を続けます。


「そう脱力が出来て落ち着いたら、身体に力を入れずイメージだけで身体を起こしてよ」


(イメージだけでって・・・本当にそんな事が出来るのかな?)


そう半信半疑になりながらも言われた通り身体を起こします。すると・・・


「やば、普通に起きちゃった・・・ってあれ?」


 身体を起こしたトワは今まで膝枕をしてくれていたヒメの姿や気配、更にはあの強大なオドすらも広間から消えている事に驚き困惑します。


(どうやら成功したみたいだねぇ)


「ヒメ様!?一体どこに・・・いやそもそもここは?」


(今、君は幽世の表層にいる。そしてそこは内にも外にも繋がっている場所だから私の声も届く)


「はぁ成程」


(そこから更に深く潜ると、君の中にいる赤竜ロッソのオドと出会えるよ)


「状況はだいたい解りましたけど・・・ここから更に潜るにはどうすれば?」


(赤竜のオドと出会いたいと固く誓い、意志を決めれば潜れるよ。但し・・・)


「但し?」


(ここより更に内側に潜れば、私ですら干渉出来なくなる)


「つまりここから先は己の力のみで赤竜のオドと対峙せよという事ですね」


(ああその通りさ。ここから何があっても万事、君の言動に掛かっている・・・まあせいぜい頑張りなよ)


「・・・了解しました。助言ありがとうございます」


 ヒメのやや大雑把な説明と助言を受けたトワは彼女の相変わらず人を食った様な態度に少し呆れながらも感謝の意を伝えました。


 そして助言に従い心中で強く意志を固め目を閉じ更に幽世、自身の内側の世界へと深く潜ります。


「つっ・・・ここは!」


 目を開いたトワはそこにある光景、自身の内側の世界を見て動揺します。



 --鈍色の空に厚く垂れ下がった雲



 --海からの寒風が吹き込む細った土地



 --粗末とはいかないが、決して豊かではない小さな集落



「・・・ここはステネス島の、私の故郷の村!ここが私の内側の世界なのか・・・」


 そう小さく呟いたトワは眼前に広がる景色に心が重たくなるのでした。



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