業と技 第七節
「そう衝撃斬。これが出来て初めて周囲から半人前を卒業し、一応一人前の機士として扱われるのさ」
「成程、ではなかなか一筋縄では行かない感じですかね?」
「いやそうでもないさ。裂空と掌破の二つを習得出来ているならそう難しい技ではない」
「ほうほう」
「でも機士としての才覚は最低限でかつやる事なす事不器用なトワ君には難しい技術だろうねぇ」
「それはまあ・・・その通りですね」
ヒメのいかにも安い挑発、もとい的を射た指摘にトワは少しションボリとなりそう答えます。
「まあトワ君をからかうのはここまでにして、さっさと技を実践してもらおうか」
そう述べるとまたも指を鳴らし先程とほぼ同じ大きさの巨岩を今度は二人から十メートル程離れた場所に出現させます。
「では私がさっき説明した要領で岩を破壊してくれたまえ。今回はまず君が先にやってよ」
「わっ、私がですか!?」
突如ヒメから指名を受けたマルグリットはすっとんきょうな声を上げます。
「ああ、私の見立てでは君は恐らく一発で見事な衝撃斬を繰り出せるだろう」
「それは買い被りという気がしますが・・・」
「そんな事は無いさ君なら確実に出来る。そしてそれはトワ君にとっても良い手本になるだろうしね」
「それは私も思った。だからバシッと技が決まる格好良い所を見せてよ」
「二人がそこまで言うなら・・・やってみせましょう」
トワとヒメの言葉を受け渋々ながら答えたマルグリットは、早速技を放つ準備を始めます。
「コオオオオッ・・・スウウウッ!」
マルグリットはオドを高め効率良く扱う件の呼吸を行うと、右腕をゆっくりと振り上げます。
(マルグリット凄い集中している。でも腕を上げた時、一瞬周囲の空間が少し歪んで見えた様な?)
そうトワがマルグリットの周りの風景が朧気に歪んで見えた事に疑問を覚えていると--
スウッ・・・ズトォン!!
マルグリットが身体を僅かに捻り途轍もない速度で腕を振り下ろすと、凄まじい爆音が響きそれと同時に超強力な衝撃波の烈風が巻き起こり、十メートル程離れた場所にあった例の巨岩を跡形もなく粉砕しました!
「すっ、凄ぇ・・・」
「お見事!流石一流機士の家系だ。たった一度の説明で要領を掴み、難なく技を繰り出すとはね」
トワは半ば呆然としてそう呟き、ヒメはそう褒めそやしました。
(やっ、ヤバい破壊力だ。今のはただの岩だったから良かったけどもし人に当たっていたら・・・)
目の前に示された衝撃斬の威力に驚き、かつそれがもし人間に直撃していたらどうなっていたかを想像したトワは血の気が引きます。