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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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業と技 第四節

「!?そんな急に言われてもだな・・・」


「私じゃダメ?そりゃ機士としては半端で半人前でダメダメなのは自分でも分かってるけどさ」


「いや決してそういう訳ではないんだが」


「じゃあ何か他に問題があるの?」


「いやその・・・私の出身国であるゲインブルとトワの故郷であるハイライン王国は歴史的に対立関係にあるし、今なお軍事的な緊張状態が続いているし・・・」


「あのさ友達になるのに国や民族、それに種族は関係ないと思うしそれに国同士が争ってりゃ、その国民同士がいがみあってなきゃならないって事も無いと思うけど?」


「しかし我々機士は戦争の全権代理人という大きな権利と責務を背負っている・・・であるなら簡単に敵国の機士と馴れ合う訳にはいかない。と思う」


「ああそんな事。なら安心しなよなんせ私、正規国家機士団はおろか国からも永久追放くらってるから」


「なっ!?トワよ一体何をやらかしたんだ・・・永久追放なんて全く穏やかじゃないぞ」


「う~ん話せば長くなるんだけれど・・・」


 トワの言葉に驚き疑問を覚えたマルグリットに対し、トワは故郷であるステネス島で自身がやらかした事件からここシン・ロンに至るまで経緯を、ドラゴン関係の事は省きざっと話ます。


「なんとその様な事が・・・しかしトワも色々と苦労してきたのだな」


「そんな大した事じゃないさ。まあでもこれで私がハイライン王国とはほぼ縁が切れてると解ったっしょ?」


「ああ」


「それなら友達になるのになんの障害も無い訳だけど・・・やっぱ無理な感じ?」


「解った・・・私の根負けだ。その今更切り出すのも気恥ずかしいが、私と友人になって欲しい構わないか?」


「全然大丈夫!むしろめっちゃ大歓迎だよ!!」


 マルグリットが少しはにかんだ様子でそう答えると、トワはややテンションを高めてそう答え二人は最悪な出会いから紆余曲折ありながらも、正式に友になり崖壁に掘ったスペースの中で時が経つのを忘れてお互いの事を語りあいました。


「ムニャムニャ・・・」


 一時的に休息を取るつもりが、会話が弾みかなりの時間が経ってしまった事から、一晩じっくり心身を休めて体力とオドを回復させる事を決めた二人は、早速身体を横たえ就寝します。が--


(・・・よく眠っている。ならば今の間に)


 身体を横にし風雪と寒さを凌げるだけの最低限のオドを纏いつつも、じっくりと眠っているトワの姿を確認したマルグリットは彼女に気付かれぬ様に身に纏う甲冑に仕込まれている超小型の通信魔導器を起動させようとします。しかし--


(やはり竜伎様が展開している超強力な結界の中では、こんな小道具は使えぬか・・・)


 全く使い物にならない魔導器を見つめつつ、ため息を吐きながらも次の手を考えます。


(だがこの修行を無事にやり遂げた際には、何があっても本国と連絡をとらねばならない!)


 マルグリットは就寝前にトワの口から語られた敵国であるハイライン王国の現状を思い返しそう強く決意します。


(地球という異星から召喚されたという強力な能力を有する者達の事、更にその者達の手を借りて新造されたという高性能なキャバルリーの事・・・)


(そしてそれらをもって我が国に近い将来大侵攻を仕掛けて来る事をなんとしても伝えねばっ!)


 そうマルグリットが決意を新たにしていると、ふいにトワの間の抜けた寝顔が目に映ります。


(・・・こんな素顔も本名も明かさぬ卑怯者と友人になりたいといってくれたトワには本当に申し訳ないが、機士の家系に生まれた者として、そして何より王家の末席に座る者としてこの情報は命に替えても伝えなければならないのだっ!)


 どんな形であれトワの事をいい様に利用している事に強い罪悪感を覚えつつも、マルグリットはそう固く心に誓うのでした。

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