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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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業と技 第ニ節

 そう彼女の姿を見て悟ったトワは見よう見まねで、両手に握っているアックスにオドを不安定な状態ながら何とか纏わせます。


 ズガガガ・・・ガッ!


「なっ、何とか止まったか・・・」


 あともう少しで地面に叩きつけられる直前で何とか落下を止める事に成功したトワは安堵のため息を洩らします。


「お-いトワ大丈夫か-!」


「お-っ大丈夫だっ!今からそっちまで登ってくぞー!」


 心配そうに声を掛けて来たマルグリットの大声が崖壁に響くと、トワは彼女にそう答えて手でアックスを保持しつつ器用に靴にアイゼンを装着すると、それにもオドを纏わせてゆっくりではあるものの何とかマルグリットのしがみついている地点まで登りました。


「いや~マジで危なかった!あやうくミンチになる所だったよ」


「私もだ。竜伎様にいきなり蹴り落とされた時は、頭が真っ白になってしまった・・・」


「へえ~でもそれにしては直ぐに冷静になって的確に行動してたじゃん」


「まあ、それもこれもここ数ヶ月間の貴公との苛烈な修行のおかげだな」


「おだてても何も出ないぞ・・・それよりアックスに、いや物体にオドを纏わせる技術なんてよくこのギリギリの状況で思いついたね」


「・・・かなり昔の話だが、父上やその門下生の機士達が今みたいな事をしていたのを思い出したんだ」


「成程それで・・・流石代々機士を輩出している家門は色々と情報がある訳だ。羨ましいな~」


「その血統・家門もここにきて竜伎様の課す過酷な修練の前では、つくづく無力だと思い知った・・・そんな事より早くこの崖を登ってしまおう」


「そうだね。でないと時間が経てば経つほど、体力とオドを磨り減らされるし何より・・・」


 ゴオオオオオッ!


「このクソッタレな暴風雪だ!全くたまったもんじゃない!!」


「確かにこの暴風と降雪に身を晒し続けるのは得策では無いな。早く行動を開始しよう!」


 崖壁にしがみついているのがやっとなのに、更に暴風と大雪に襲われている二人はそう大声を出し気勢を上げて壁を登り始めるのでした・・・


(くそ~この風と雪のせいで殆んど登れていない・・・これは結構不味いかも)


 崖壁を登り始めて約半日、トワとマルグリットはその短い間に何とか登山道具を使いこなし着々と頂上に向かっていました。


 しかしヒメの仕業と思われる崖壁の周囲一帯に吹き荒ぶ暴風雪のせいで、想定していたよりも登るのに悪戦苦闘し時間を浪費してしまった二人は、現状に歯噛みする事しか出来ませんでした。


「流石に今日はこれ以上登れないな~」


「ならばどうする?ここには休息出来る場所なんて無いぞ?」


「無けりゃ作ればいいだけの話さ。それにおあつらえ向きの箇所もある」


 トワはマルグリットにそう答え、近くにある丁度崖壁の少し窪んでいる場所に軽やかに移動すると、右手のアックスは保持し壁に突き刺したまま、左手に持ったアックスの柄先に装備された尖った形状の金属部品であるスピッツェで壁を砕き削り始めました。


「・・・!成程、その部分で氷と岩を砕いてそこに休息出来るスペースを作るという事だな!」


「そういう事。なんでマルグリットも手伝ってくれ一人では時間が掛かり過ぎる」


「了解した。喜んで手伝おう」


 マルグリットはそう言うと早速自身もトワの傍に近寄り作業を開始します。

 するとものの十分程で風雪をしのげ、人が二人分手足を伸ばして休息を取れるスペースが完成しました。

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