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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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業と技 第一節

 漆黒の闇の中、淡く輝く二つのオドが激しく乱舞します。


 拳撃が、蹴撃が、そして時には投げ技が、常人の目には留まらない程の物凄い速度で交わされてゆきます。


「ふ~ん。たった二ヶ月でこれだけ出来るようになるとはね」


 トワとマルグリットの激しい攻防、技の応酬を眺めていた竜伎ミヅナガラヒメはそう感想を洩らします。


(これだけ素早くかつ柔軟にオド集中と振り分けが出来ているなら、これ以上組手だけをさせておく必要はないかな)


 そう判断したヒメはパンパンと手を叩いて合図し、二人の組手を中断させます。


「えっ?もう休息ですか自分はまだまだやれますよ?」


「私もです竜伎様」


 二ヶ月前より幾分マシになったものの、相変わらず全身に小さなアザがあるトワ。


 そして二ヶ月前よりも更に洗練されたオドを纏い、ほぼ無傷なマルグリット。


 両者はヒメの合図に対し口を揃えてそう答えました。


「二人共やる気があって大変よろしい。であるから組手はここまでとし、次の修行に移ろうと思う」


 二人の答えを聞いて満足そうに頷きそう述べたヒメは、指をパチンと鳴らし結界空間を操作し、それまでの真っ暗闇の世界からまた別の環境に変更します。


「これも竜伎様が創り上げた空間・・・凄過ぎて言葉にならない」


「ギニー山脈の尾根に似てるけど・・・またあそことは少し違うような?」


 ヒメが変更した結果内の環境、寒風が吹き荒れオドを纏っていなければ立つ所かまともに目を開けているのも困難な程の降雪が襲う、どこかの雪山の頂きに立ったトワとマルグリットは呆けたようにそんな感想を洩らします。


「これはかなり厳しい自然環境だねぇ~」


「そうだな・・・ところでここでどんな修行を行うのだろう?」


「まあそう難しい事じゃない。むしろ非常にシンプルな事さ」


 ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべながらそう言ったヒメは、二人に登山者用の各種道具を手渡しそして--


 どげしっ!


「死なないように、死ぬ気で這い上がって来てね~」


 そう軽いノリで言うと同時に、二人を山頂から直下の約千八百メートル程はあると思われる断崖絶壁に蹴り落としました?


「ぎゃあああああっ!」


「ぬうおおっ!?」


 トワは絶叫しマルグリットはおかしな声を上げつつ、崖下に向かって物凄い速度で落下していきます!


(ヤバい!このままじゃ地面に激突してミンチになってしまう・・・何とか崖壁を掴まないと!)


 叫び声を上げ落下を続けながらも命の危機を感じたトワは、本能的に掌と足・特に爪先にオドを集中させ崖壁を掴もうとしましたが・・・


 ツルン!


「何!?この崖壁、素手では掴めない・・・ならっ!」


 崖壁の奇妙な特性に焦りつつも、トワは蹴り落とされる直前にヒメから渡された道具の一つである一対のアックスを両手でしっかりと掴み、ピックの刃先を崖壁に突き立てます!しかし--


 ズガガガガガガッ!!


「なっ!?ヘッドが殆んど壁に食い込まない!どどどうする!?」


 道具を使っても落下を止められないトワは更に焦って半ばパニック状態に陥いりますが、共に落下を続けていた筈のマルグリットが自分と同じくアックスを使いつつも落下を阻止し何とか崖壁にへばりついてる姿を一瞬だけ目撃します。


(!マルグリットの奴、身体だけでなくアックスにもオドを纏わせているっ!アレが肝かっ!!)

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