キャバルリー、その起源 第八節
「さて今までの話でバリウス・フレームは高い性能と戦闘力を誇る骨格だと理解したと思うが同時に資金と材料、更には整備の面で問題を抱えるフレームだという事も解ってもらえたと思う」
ハンスはトーコを含む目の前の研究生達の顔をしっかりと見据えながら話を続けます。
「これに困った中・小規模国家やドラッヘ各地の魔工師や機工師達はこの問題を解決しようと様々な試みを行うも中々上手く行かなかったが・・・これまた一人の天才魔工師の登場により解決される事になった」
「ヤン・モデナ博士の事ですね!カーン博士に負けずとも劣らない素晴らしい実績を残した偉大な魔工師であったと伝え聞いています!」
「ふむ。ではモデナ博士はどの様な実績を打ち立てたのか答えられるかね?」
「はい。モデナ博士は周囲が海に囲まれている海洋国家、ファウタンガ諸島連合の出身という事でその環境に合った画期的な新型装甲を設計・開発したとキャバルリー関連の歴史書に記されていました」
「そしてその装甲こそが鱗状振動装甲と呼ばれるモノで水上は無論、水中や海中といった過酷な環境下でも高い機動力と運動性を発揮するとされています」
「では何故その装甲が高い性能を発揮出来るかというと、フレームが発生するオドが装甲表面に並べられている微小な鱗状機器を振動させ、一種の推進力として作用されるからと現役の機士様から教わりました」
「鱗状振動装甲について皆よく調べて来たと感心する。では次にモデナ博士がいかにしてフレームに関する問題を解決したか・・・解る者はいるかな?」
そうハンスが問うと、先程からハンスに対して積極的に発言をしていたあるリザードマンの研究生が一瞬だけトーコを一瞥します。
(?)
トーコがその無遠慮な視線に対して疑問を覚えていると、その研究生は堂々とした態度でハンスの問いに答えます。
「ズバリ機体の小型化です。モデナ博士はバリウスは勿論、クサントス・フレームより更に小型のフレームを構想・提唱し青図を発表しました」
「ふむ、その通りではあるが・・・クサントスより小型化するという事はオド出力が低下するという問題にぶつかるが、モデナ博士はそれをいかに解決したのかね?」
「小型化しつつも、関節部やフレームの各主要部はバリウス・フレーム並みに骨太にするという工夫を施しオド出力の低下を防いだとされています」
「確かにその通りだ。学院にある資料や文献を読み漁り、よく勉強しているだけの事はある。がそれだけでは残念ながら問題を全て解決出来ない」
「つっ!」