キャバルリー、その起源 第五節
(これがバイアリー・ターク・・・成程同じクサントス・フレームを採用しているせいか、関節部とかはシュクルとよく似ている)
眼前に現れたキャバルリー、バイアリー・タークの姿を見てかつて自身が召喚されたハイライン王国の主力キャバルリーであるシュクルと似通っている箇所が多く存在する事を認識したトーコは心中でそう呟きます。
「この機体・・・と言うよりキャバルリーの誕生により、それまでの戦争の常識が一変する事になったのだが、それが何か解るかな?」
「はい。それまでの戦争では運用上の問題から主力兵器であるベルフォルマを最大でも一機ないし二機までしか使用出来ませんでしたが、キャバルリーは同時に数十の機体を運用可能になった為に、より円滑に戦術・戦略目的を達成出来るようになったと戦史研究の授業で習いました」
「更にベルフォルマに比べ構造が簡素になった分、量産制、整備性、稼働効率が一気に上昇した為に、大国だけでなく中・小規模の国家でも生産と運用が可能になった為にドラッヘ各地に瞬く間に製造技術が拡散し、一気に配備が進んだと歴史研究の文献に記されています」
「その通りだ。まあそのせいでドラッヘ各地の安全保障問題に多大な影響を及ぼし各国の緊張、更には種族・民族衝突及び武力紛争を助長する結果になった訳だが」
「・・・」
ハンスの皮肉の効いた一言により、それまで熱心に意見を述べていた研究生達は一様に黙り込んでしまいます。が彼はそんな研究生達に少しだけ満足した様子で話を続けます。
「君達の言った通りキャバルリー、クサントス・フレームは非常に高い運用性とベルフォルマにも劣らぬ高い性能を発揮し、一躍戦争の主役となったが・・・やはり人が造った物ゆえに様々な問題も発生していった。それが何か解るかね?」
「クサントス・フレームは高い完成度を誇る傑作骨格で、様々な装甲や武装を装備可能で非常に汎用性が高いですが・・・重装甲や重量のある装備や武装を施した場合、フレーム自体のオド出力の限界によりたちまちパワーダウンすると師である機工師から聞かされた事があります」
「それとオド出力の限界を超えた重装備を搭載した場合、たちまち貯蔵しているオドを使い切ってしまい稼働時間が極端に低下すると学院の書庫にある資料に記載されていました」
「あと重量増加による機動性・運動性の低下が著しく、更に機体のバランスを取る事も困難になったと整備の現場にいた院生から聞いた事があります」
「ふむ。概ね君達の言った通りだが、一つ付け加えるなら重装備による過負荷がフレームに多大な損傷をもたらし、最悪の場合フレーム自体に亀裂が入り、破断し稼働不能状態に陥る事が続発した」
(ふ~ん。成程クサントス・フレームは完成度と汎用性は高いけど、それ故に重量のある装備や武装を施すと骨格の強度やオド出力が限界を迎えて運用に著しい支障をきたすって事ね)
ハンスやその他の研究生達の発言により、クサントス・フレームの抱える問題点をトーコはそう理解します。