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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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キャバルリー、その起源 第四節

「もしかして・・・ダウン・サイジング及びアリア・エンジンのオミットによって機体に使用されるパーツが減少した事による整備性の向上でしょうか?」


「ああ全くその通りだ。但し一つ付け加えるならベルトーネ博士はダウン・サイジングを行った際に量産性と整備性を重視し、機体構造を簡素化した点も上げられる」


 恐る恐る質問に答えたトーコに対し、ハンスはそう肯定しつつも更に解説を付け加えるのでした。


「・・・さてベルトーネ博士が提案を二つまで解説したが、今までの話で三つ目の案についてのヒントが出ているから、今回はその案を皆に当ててもらおうか」


 ハンスの一言により研究生達は各々考えこんだり、ある者達は互いの意見を交換しあって解答を導き出そうとします。

 そんな中トーコも他の皆と同様にハンスの話を反芻しながら考えに耽ります。


(・・・元々ベルフォルマは古代に栄えたエルフ達が自分達のみが扱う事を前提として開発したと他の研究生が言ってたっけ)


 そう思い出しつつ更に考えを進めます。


(そしてエルフは我々人間や他の種族と違い、並外れた運動能力と反射神経に加速度耐性。更にはとんでもない演算能力まで生まれながらに備えていた・・・あっ)


 そこまで思い返し思考を重ねていたトーコはある事に気が付きます。


「・・・三つ目の案はもしかしてエルフ以外の種族が一人で操縦と機体の制御を同時に行うのは負担が大き過ぎた為に、今のように複座式にして、各々が機体の操縦と制御を担うシステムを採用した事とか?」


「正解だ。そしてこの操縦と制御の分業こそがキャバルリー誕生の決定打となり、更にはベルフォルマにとって代わりドラッヘにおいて最大の主力兵器の座に輝く事にもなった。ある意味竜暦における最大の技術革新とも言える」


 トーコが何気なく呟いた言葉こそ正解だと述べたハンスは更に話を続けて行きます。


「分業制の確立により機士は機体の操縦にのみ専心出来る様になった為により高度な機動を行えるようになり、それにより戦術の幅が大きく広がり、同時に戦場における冷静な状況判断・把握能力が格段に高まった」


「状況把握能力が向上した事により大局的に戦場を俯瞰して行動出来るようになった訳ですね」


「ああ確かにその通りではある。がしかしそれは機体を制御している魔導師の助力もあってこそでもある」


「魔導師の仕事はその演算能力を駆使し、機体制御を行いつつキャバルリーとコミュニケーションを行い機体の状態をより安定に円滑に保てるようにする事だけではないと?」


「確かにそれが機体に搭乗する魔導師の最大の仕事ではあるが・・・戦場に存在する味方機や各所に設置された通信量増幅魔導器を介して戦術データ・リンクを形成。味方とのリンクや戦場のデータを常にモニターし機士に伝えるのも魔導師の最大の仕事だ」


「それは・・・戦局を左右しかねない重要な役割ですね」


「その通りだ。更に付け加えるなら指揮官機やコマンド・ポストの役割を担う機体の魔導師は戦場にいる味方機を全て統制下に置き、全軍の足並みを揃え的確な指示を下さねばならない」


「それはまた責任重大ですね・・・」


「全くだな。だがこうして機士と魔導師、二人の能力が合わさり機体はより柔軟で高度な戦略・戦術兵器として完成してゆく事になる」


 トーコを含む幾人かの研究生達との質疑応答を行いつつ、ハンスは更に解説を進めて行きます。


「以上三つの案を提唱したベルトーネ博士はそれを当時のベルモント帝国皇帝陛下に具申し、陛下はそれらの案を全て飲みベルフォルマに代わる人型機動兵器の開発を許可した。そしてその結果産まれたのがこの機体だ」


 ハンスはそう言うと指に嵌めているキュケースをかざし、研究科の一区画にある整備台に固定され、装甲が全て外されて内部フレームが剥き出しになっているキャバルリーを研究生達の目の前まで台ごと移動させ皆に見せます。


「この機体こそ完全独立式骨格クサントス・フレーム、及び複座型操縦システムを採用したドラッヘ初のキャバルリー。バイアリー・タークである」


 ハンスは自身の骸骨頭の眼窩に宿る青白い炎を爛々と輝かせながら、目の前の研究生達にそう厳かに告げます。


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