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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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新たな修練 第六節

(・・・不味いなこれではジリ貧だ)


 組手の修行が始まり一時間ばかり経った現在、トワは肩で息をし全身アザだらけになり鼻の穴や口角から血を流しつつ、心中でそう呟きます。


 これに対してマルグリットはほぼ無傷のままトワの前に超然と立ち塞がっており、その事に対してもトワは焦りを募らせます。


(左腕の負傷があるにしても、私の攻撃は全ていなされ防がれた上にオド集中によって弾かれる・・・これに対してマルグリットの攻撃は私の防御に振り分けたオド集中を易々と貫通し、着実にダメージを与えてくる・・・)


 トワは自身とマルグリットの力量及び技術力の差を痛感し暗澹たる気持ちになります。


(やはり私みたいな庶民出身で後付けでオドを習得した者では、由緒正しい血統を誇る機士の家門出身のマルグリットには並び立てないのか・・・いやそんな事はない、必ずどこかに突破口がある筈だ!)


 一度は家門だの血統だののせいにして実力差を認め、マルグリットに自身の力が通用しないと諦めかけるトワでしたが、そう奮起して再びオドを増大させその身に纏い直します。


「・・・まだ続けるのか?」


「当然!まだヒメ様からは組手を止める様に言われていないし、ヒメ様が言った通り同情は不要だ・・・今まで同様全力で来い!」


「・・・貴殿はそういう奴だったな。ならば私も遠慮はしない全力でやらせてもらう!」


 満身創痍のトワを見てこれ以上組手の修行を続ける事に無意味さを覚えていたマルグリットでしたが、未だに修行の成功を諦めず立ち上がり続けるトワに感化され、彼女もまた改めてオドを高め纏います。


「・・・では言葉に甘えてこちらから仕掛けさせてもらう!」


 マルグリットはそう言うとゆっくりとかつ丁寧に上段回し蹴りのモーションを始め、右足にオドを集中させてゆきます。


(だいたい7~8、右足にオドを集中させているな・・・ならこっちは8、いやオドの総量の差を考えて頭に9集中させる!)


 マルグリットの右足部に集まったオドをよく観察したトワはそう判断し、自身の頭部にオドを集中させ上段回し蹴りを迎撃します!


 ズン!


 そんな鈍い音と共にトワとマルグリット、互いのオドとそれが放つ強烈な光が激突し絶妙な拮抗状態が生まれた様に見えましたが--


(ぐうっ!やはり総量はマルグリットの方が上だ・・・このままだと押し切られるっ!!)


 ズズズッ!という骨まで伝わる重低音と共にマルグリットの強大なオドを感じつつトワはかなり切羽詰まった状況に陥り・・・とうとう拮抗は破れ強烈な回し蹴りがトワの頭に直撃してしまいます!


(あっ・・・これ・・・ヤバ)


 蹴りをまともに喰らったトワは意識が飛んで倒れかけますが・・・


(ま・・・だ、まだ・・・ここで倒れるわけにはいかない!意地でも押し返す!!)


 蹴りを喰らった側頭部から血を流し、意識が朦朧となりつつもトワはそう再び奮起し両足でしっかり大地を踏みしめ体勢を立て直し、再度灰色に輝くオドを増大させつつ頭部に集中させます!


「持ち直した!?不味いこのままではこちらがっ!」


 そうマルグリットがトワの執念に驚いていると--


ズズズ・・・ドォン!


 そんな強烈な爆音と共にほんの一瞬、灰色から鮮やかな真紅の色に変化したトワのオドがマルグリットの蹴りを行っている右足に直撃し・・・見事にマルグリットのオドを押し返し、更に彼女を数メートル後方にぶっ飛ばしました!


「ハァハァハァ・・・やった!マルグリットのオドを押し返した・・・ぞっ!」


 そう自身が成し遂げた事を喜んでいる途中でトワは今度こそ完全に意識を失い、白目をむいてドサリと地面に倒れ伏してしまいました。


「トワっ!」


「やれやれ・・・この程度の修行で又オドを使い切って倒れてしまうとは第二階梯習得への道のりまだまだ遠いねぇ」


 地面に倒れている所をマルグリットに介抱されているトワに対してヒメは呆れたようにそう述べます。


「さてと・・・今までの流れでだいたいオドの振り分けと集中のコツみたいなものは掴めたと思う。この修行を今日を含め毎日続けていれば一~二カ月で全力の速度で組手を出来るようになると思うから、これからまあ精々頑張ってね」


「了解しました」


「あと私はこれから公務があるから今日の修行はここまでにしよう。そこに転がって気持ち良さそうに気を失っているトワ君にも伝えておいてね~」


「はい」


 マルグリットの返答を聞いたヒメは右手をヒラヒラと振り、結界内の暗闇を消し去ると同時に自身も退去した為に結界内にはトワとマルグリットの二人だけが取り残されます。


「オドの振り分けと集中・・・コントロールが難しい。気を引き締めてかからんとな」


 マルグリットはそう決意の言葉を口にすると気を失い仰向けに倒れているトワに対してある疑問を抱きます。


「・・・最後の、私の上段回し蹴りを弾いた時にほんの一瞬だがトワのオドの色が変化し有り得ない程強大になった・・・アレは一体?」


 マルグリットがそう怪訝な顔になり思考を巡らせている間にも、トワは間の抜けた寝顔を晒していました。


 こうしてトワとマルグリットの第二階梯応用編の修行初日はとりあえず終了したのでした。

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