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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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基礎学科教室 第八節

「こうして東西の大国及びそれぞれの陣営に属する諸国が衝突を繰り返しているのが大陸中央部の今の情勢だ。その一方対立を続ける両陣営を出し抜き国力を増強し領土の拡大と資源確保を行っている大国が存在する」


 そう述べたハンスはまたも画面を操ると、ここテューロス地方と内海を挟んで西側にあるスマリア半島の地図を拡大表示すると、半島全土を領土とする大国の姿を皆に見せます。


「ウィールヘルト首長国連邦。その名の通り四つの首長国からなる連邦制国家で、政治はそれぞれの首長が任命した議員と四人の首長によって構成される最高評議会によって行われる為に政治に民意は全く反映されない」


 どこか達観した様子でそう語ると、またまた画面を切り替えます。するとそこには・・・地平線の果てまで続く超広大な砂漠の映像が映し出されました。


「見てもらった通り首長国その国土の大半が砂漠と荒地ばかりで肥沃な土地はとても少ない。しかしベルモント帝国程ではないにしろ豊富なファータ鉱床と地下資源を保有しており、その背景を生かし巧みな外交術でもって国益を確保している」


 そう皮肉るように説明を続けます。


「またそれら豊富な資源を生かした重工業国家であり、自国で開発・生産したキャバルリーやカミオンを始めとする多くの兵器を他国に輸出・販売する事により莫大な富を得ていると同時に、ドラッヘの各国や有力な個人あるいは組織・勢力に少なくない影響力を持つ様になった為に共和国も帝国もその存在を軽視出来なくなっている」


 ハンスはそう言って俯き溜め息を吐き出しますが・・・次にゆっくりと呼吸すると再び気を取り直して講義を続けて行きます。


「とは言え首長国の様に大陸中央の対立に便乗し、地位と益を得る事しか考えていない国ばかりでは勿論なく、東西の緊張緩和を求めている国も存在する。次に説明するのはそういった国の一つだ」


 そう言うとハンスは再びキュケースをかざし、今度はルガーブル大陸の東南端、そこから海を挟んで更に東にある大小様々な島によって構成された諸島群を映し出しました。


「それがこのファウタンガ諸島連合。その名が示す通りファウタンガ島を中心に各島々により結成された連合国家だ。かつてはファウタンガ島に存在した王家が支配する封建国家だったが、王権の弱体化と王室の断絶。そして民主化運動の結果現在は民主制国家となっている」


(この国がトワが所属しロブさんが率いるリャンシャン傭兵機士団のスポンサー・・・傭兵に援助しているから軍事独裁国家かなんかと思っていたけど、案外普通の民主国家なんだ)


 シン・ロンに辿り着く道すがらロブに自身が率いる傭兵機士団について、軽くレクチャーを受けたトーコはそう謝った認識を持っていましたが、ハンスの説明により誤解が解けました。


「見てもらった通り連合は典型的な海洋国家で、位置的にも海上交通の要衝である事から他国との貿易がドラッヘ一盛んで、海洋資源の採掘も積極的に行われている事もあり非常に豊かな国家だ。更に気候も温暖で過ごしやすい為、どこかおっとりした国民性も特徴の一つである」


 ハンスはそう説明するとほんの少し声のトーンを下げて話を続けます。


「しかしそれ故に他国から領土及び領海を狙われる事も多く、また海賊の存在にも常に悩まされている。それが証拠にここ数年は資源の採掘権や排他的経済水域を巡って海賊達や連中を支援している幾つかの国家や犯罪組織との小競り合いが絶えないでいる」


 ハンスはそうすらすらと説明してゆきます。


「また更に国土に耕地が少なく食料自給率が低い為に食料品、主に穀物等はドラッヘ一肥沃で広大な穀倉地帯を誇るルガーブル大陸の中央部からの輸入に依存しているのが現状だ」


(成程、それで大陸中央部での東西両陣営の対立と衝突を望んでいない訳ね)


 トーコはハンスの話から連合がルガーブル大陸中央部の情勢安定を望んでいる理由を察します。


「以上の理由で連合がルガーブル大陸の東西陣営の対立を望んでいない事は解ってもらったと思う。しかしファウタンガやウィールヘルトと違い両陣営のいさかいに全く興味を示さず、一貫して静観を続けている国も存在する。それがここだ」


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