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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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基礎学科教室 第七節

(こうして見るとルガーブル大陸って結構大きい。地球のユーラシア大陸が更に一回り大きくなった感じかな?)


 スクリーンに映し出された超広大な一つの大陸、つまりルガーブル大陸の地図を眺めたトーコはぼんやりとそう感じているとハンスはキュケースで画面を操り、大陸西部にある一つの大きな国土を持つ国をクローズアップします。


「まず最初はここフリアンソン共和国。政体はその名が示すとおり共和制の民主国家で、それ故に有事の際には国の最高意思決定に時間がかかるという欠点を持つ」


 そう説明しつつ画面に共和国の大まかなデータも表示して話を続けます。


「しかしながらルガーブル大陸一の肥沃な大地と、それなりのファータ鉱床を保有している為に国自体は豊かで他国との交易も盛んに行われ多くの国、特に自国と同じ政体の国家や大陸西部の諸国との交流もある事により、数十年前から西側諸国の盟主的なポジションに収まっている」


 ハンスはキュケースを操作し別のデータも示します。


「現にここ二十年間、東の隣国であるレイランやマルフィム、海を挟んで北にあるプーリタイ島の南部を領土とするゲインブルと安全保障条約を結んでそれらの国々に自国で開発したキャバルリーを提供したりライセンス生産を許可したりしている。また正規国家機士団から機士及び部隊を派遣したり、派遣先の機士や兵の訓練や育成にも携わっている」


(最強の兵器であるキャバルリーどころか機士まで派遣しているなんて・・・それ程までにフリアンソンにとって警戒すべき相手、敵対国家でもいるのかな?)


「これ程までに共和国が安全保障を強化し軍事力を増強しているのには原因がある・・・それが次に説明する大国だ」


 トーコが心中で抱えていた疑問に答える様にそう発言したハンスは画面を操作しフリアンソンの東側、ルガーブル大陸の東部の大半を領土とする巨大国家を映し出します。


「ベルモント帝国。政体は立憲君主制でルガーブル大陸いやドラッヘで最も古い歴史を持ち更に最も広大な領土を持つ国家であり、皇帝一族や一部の有力貴族達の起源は竜暦以前の大動乱時代にあり正に由緒正しき血統を誇っているが・・・」


 ハンスはそこまで説明すると少々呆れつつも話を再開します。


「議会や議員達はお飾りで実権は無く、実質的な国家運営は皇帝一族や有力貴族達で構成される元老院が行っており、一般市民が政治に関わる事は一切無い。しかもその元老院内部では貴族同士が醜い権力闘争を繰り広げており更に贈収賄も平然と行われている」


(星は違えど国というか政治家はどこも似た様なものね・・・この事にコリンナはどう思っているんだろう?)


 トーコが少し呆れ気味に思い隣の席をチラッと覗いてみると・・・コリンナが少し渋い表情になっているのを見て、彼女の心中をうっすら察します。


「この様に政治中枢に多少の問題を抱えているものの、ドラッヘ一の広大な国土と優秀な人材を多く有し、更にこれまた大陸一のファータ鉱床ならびに多くの地下資源を保有している為に国自体は非常に豊かで国力も随一である。それが証拠に・・・」


 ハンスはキュケースを操作し画面上に帝国に関するデータを映し出します。


「軍事力もドラッヘの中でずば抜けて高く、兵士や正面・後方装備も良質で数も非常に充実している。その事実を如実に証明しているのが彼等の存在だ」


 ハンスはそう言うとまたしても画面の映像を切り替えます。

するとそこに白、紅、黒、蒼の四つに色分けされた軍服を纏った精強な機士と魔導師達が整然と居並ぶ姿が映し出されました。


「ハイレッヒ・デイモス機士団。帝国の正規国家機士団でその規模と戦闘力はまさにドラッヘで最大最強を誇り、保有するキャバルリーは千機にも及ぶとされているが詳細は不明。しかしながら団員の練度は非常に高くまた実戦経験豊富な恐るべき集団」


 眼窩の奥に宿る青白い炎を怪しく燃やしながら、低い口調でハンスはそう述べるとまた更に映像を変えます。


 するとそこには機士団と帝国の紋章が刻印された十数機の帝国主力キャバルリーであるヘロディウムが、幾多のキャバルリーを一方的に圧倒し破壊していく様子が映し出されました。


「見てもらった通り帝国もまた国益の為、肥沃な土地とかつて失った領土を奪還する為にアリークやリーネテクスといった自身の息の掛かった国々に軍事援助を行い、西側諸国と対立を続けている」


「失った領土?その言い様ではまるで大陸の西側にも昔、領土を保有していたかのようだけど・・・」


「そうその通り。かつて保有していた領土こそ今現在のフリアンソン共和国なのだ」


「えっ!?」


 トーコの洩らした何気ない疑問に対して、そうさらっと重大な答えを言うとハンスは更に事の詳細を語り始めます。


「そうかつてあの土地は帝国領土であったが、竜暦千年頃に大規模な反乱が発生して、ごく短期間の内に駐留軍が敗北し帝国の総督府も陥落。その後反乱を主導したグループが独立を宣言し、共和国が建国されるが・・・その事実を認めない帝国との間で幾度も紛争が起き、現在に至るもそれは続いている」


 そう言い終えたハンスは一度画面を元の全体図に戻しつつ講義を続けます。

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