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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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基礎学科教室 第六節

(ドラゴンの亡骸!?あの方にも死というモノがあるのかな?)


 トーコは先日ギニー火山で出会った赤竜ロッソの強大にして、美しい姿を思い出し心中でそんな疑問を抱きます。


「あっ、あの・・・亡骸って事はつまりドラゴンとは死ぬモノなのでしょうか?」


 トーコと同じ疑問を抱いた院生の一人が、そう恐る恐るハンスに質問を投げ掛けます。

 質問を受けたハンスは一呼吸置いた後、落ちくぼんだ眼窩からその院生の目をしっかりと見つめ答えます。


「・・・いやドラゴンに生死という概念は無い。それどこらか、あの方々は生物でも無機物でもない」


「はい?」


 質問の答えを聞いた院生は間の抜けた声を上げますが、それに構うことなくハンスはドラゴンについて説明を続けます。


「ではドラゴン達は一体何者かと問われれば、正直に言って殆んど解っていない。しかし確かに解っている事が二つあるそれは・・・」


「そっ、それは?」


「ドラゴン達はこのドラッヘに住まう全種族を遥かに上回る高次元の存在で、この世界の創造主で破壊者で裁定者である事。そして二百年に一度その巨大な体躯を地上に捨て去り、新たな体躯を新調するという事だけだ」


(創造主って事は・・・この星、ドラッヘという世界はドラゴンの方々によって造られたって事!?)


 赤竜ロッソの深遠なオドと不敵かつ妖艶な笑みを思い出しつつ、トーコはハンスの言葉に衝撃を受けます。がそれと同時にある疑問も浮かびます。


(生も死も無く、それ以前に生物ですらないのに体を捨て去り新調するってどういう事なんだろう?それ以前に高次元の存在ならその姿自体我々では認識出来ないのでは?)


 そんなトーコの疑問を見透かした様にハンスは話を続けます。


「諸君等の大半は生死もない、更に生物ですらない高次元の存在たるドラゴンが何故体を持っているか疑問に思っているだろうが・・・ハッキリ言ってしまえばドラゴンは体躯を持っていない。ただその様に見えるだけだ」


「えっと・・・それはつまり体というか姿は目で捉える事は出来るけれど、存在自体はしていないという事でしょうか?」


「結論から言えばそうなる。つまりドラゴンとは目で見る事は出来るが実体は無い。しかし確実にこの世界に存在する絶対的なナニカという事だ」


 その説に更なる衝撃を受け思わず声を上げたトーコに対して、ハンスはそう答えると授業を続けます。


「話を戻すが、ドラゴンはその存在しない筈の体躯を二百年に一度捨て去る。そしてその際初めて、その体躯は物質として確かにその存在を認知出来るようになる。なぜそうなるか理由は今もって全く不明だが、先人達はこの物質化したモノを便宜上、亡骸と名付け研究をしある特異性を発見する」


「特異性・・・それはどういったモノなのでしょうか?」


「簡単に言うと亡骸、ドラゴンの見た目がそのまま反映された全長約九十メートルの巨大物質は、亡骸となった直後一瞬にして全体がファータ鉱物に変化し更に大地の奥深くに瞬く間に溶け込み周囲の空間を侵食すると、その土地一帯を広大なファータ鉱床に変化させてしまう点だ」


 トーコと入れ替わる形で別の院生が質問すると、ハンスはそう答えて話を続けます。


「こうしてドラゴンの亡骸から生まれたファータ鉱床はドラッヘ各地の至る所に存在し、またこの鉱床を多く領土内に保有する国家や、鉱床から採掘されたファータ鉱石を冶金・精製出来る高い技術力を持つ国家がこのドラッヘでは大国と呼ばれている」


 そう説明した後、ハンスは一度話を止めると、指にはめた指輪型のキュケースをかざして魔法を使い、教壇の背後に大型スクリーンを出現させ、そこにドラッヘの世界地図を表示します。


「その点を踏まえた上で、次はそれら大国とその国々の内情を軽く説明していこうと思う。ああそれらの国々や他の中小国家の詳しい情報を知りたい者は授業後、各自の自由時間にでも調べてくれたまえ」


 そう話したハンスは早速、指輪型のキュケースをかざしスクリーンに表示された地図の幾つかの部分を拡大させてゆきます。

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