学院 第一節
「はあ~暫くトワとは会えないのか・・・まあ修行中の身だから仕方ないけれど」
ヒメが付きっきりで少なくとも数週間、トワの修行を直に指導する為に自分とは会えないとムンコーンの女官から告げられたトーコは淋しそうに呟きます。
「数週間などあっという間です。そう気を落とされる必要は無いと存じますよ」
ヒメの付き人で高い実力を持つ魔導師でもあるムンコーンの女官は、落ち込むトーコをそう励まし言葉を続けます。
「トワ殿の事が気掛かりなのは解りますが、今日は貴女が学院に初めて通われる日。御自身の事にも気を使われては如何か?」
「それはよく解っていますが・・・本当によろしいんでしょうか?」
「よろしいとは何がですか?」
「この制服や多くの教材の事です」
白いブラウスに紺色のスカート、それにスカートと同じ色で金色の校章の刺繍があしらわれているケープを纏ったトーコは手に持った幾つかの本と、タブレット型の魔導器を見つめながら女官にそう告げます。
「トワの付き添いで来ただけの外部の人間が、制服を含めこれだけの教材を無償で頂いて本当によろしいんでしょうか?」
「確かに当初はそうだったかもしれませんが、今の貴女は竜伎様がお認めになられた客人であり優秀な才も持っておられるので、これぐらい優遇されるのは当然であると言えます」
「優秀な才ですか・・・そんなモノ、自分が持っているとは到底思えないんですけれど」
「竜伎様の人を見る目は確かです。私も保証するので貴女はもっと自信を持って下さって構わないのですよ」
「はあ」
「まあ、ここでいつまでも問答していても仕方ない。とにかく一旦学院に向かいましょう」
「は、はい」
こうしてトーコと女官の二人はヒメの邸宅から丘を下ったシン・ロン市街地にある学院に向かうのでした。