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Cavalry Saga キャバルリー・サガ  作者: 雲来末
竜圏の聖域
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呉越同舟 第三節

「それじゃあ早速オドを纏ってみてよ」


「?意識を取り戻した時からずっと纏っていますが・・・」


 トワは自身の体全体から発する薄ボンヤリとして、蝋燭の炎の様に揺らめく灰色の光を見つめながらそうヒメに返答します。


「確かに纏っちゃいるが、君の場合ただ何も考えずぼんやりと纏っているからむらが多く不安定。故に・・・」


 ドン!ズザザザザザッ!!


「ぐあっ!」


「私が指先でほんの少し押しただけで、数メートルも吹き飛ばされるのさ」


 トワがヒメの指先で押された胸の辺りに痛みを感じ悶えていると、ヒメはトワのオドに対する向き合い方の甘さを指摘します。


「痛っっ・・・つまりもっと精密にオドを意識して纏うようにしろという事でしょうか?」


「ああその通りさ。理解が早くて助かるよ」


 そうヒメの指摘に対して答えたトワは、早速いつもの呼吸法を行いオドを纏い直します。

 ただ今までと違い、頭のてっぺんからつま先、毛先から指先に至るまで可能な限り意識を集中してオドを纏います。


「へえ~さっきまでとは比べ物にならない程、ちゃんとオドを安定して身体中の隅々まで纏えているじゃあないか」


「あり・・・がとう・・・ございます」


 ヒメの褒め言葉に対し、トワはオドを乱さぬ様に集中しながらそうたどたどしく答えます。


「よし、じゃあ次はそのままの状態でオドを増大させてみて。ここからは君も参加してね」


「「はい」」


 ヒメに呼び掛けられたトワと甲冑の人は同時にそう返答し、呼吸法を変化させ纏うオドを増大させます。


「この状態が第二階梯の基本。通常のただオドを纏っている状態と比べて身体能力が更に向上し、攻撃力も防御力も飛躍的に向上する。但し・・・」


(こっ、これは・・・正直・・・かなりキツイ!)


 全身に意識してくまなくオド纏い巡らせつつ、それを増大させ続ける事によりオドが想像以上に削られてゆく現象にトワは苦しみます。


「今、君達が感じている通りこの状態はオドの減衰が尋常でなく早い。ましてやオドのコントロール技術が未熟な君達なら尚更そう感じるだろう」


(確かに・・・ヒメ様の言う通りだ・・・身体中から・・・オドが全部抜かれそうな感覚だ!)


 ほんの数秒間基本状態を維持しただけでしたが、トワは全身からオドが、力が抜けてゆくような感覚に襲われます。


「それでだ。今の状態を一日の内、最低でも一時間の間保っていられる事が君達の最初の課題だ。まあせいぜい頑張ってみたまえ」


(一日で一時間!?そんなの本当に可能なのか・・・というかもう今この瞬間にもオドが無くなって倒れそ・・・)


 ヒメの言葉を受けたトワは心中でそう悲鳴を上げ、更に先程からの激しいオドの消費により、全身に纏ったオドが一時的に大きく揺らぎ減衰してしまいます。そこに・・・


 ガン!


 鳩尾に強烈な衝撃と痛みを感じた瞬間、ズザアアアッ!という派手な音と共にトワは又も数メートル吹っ飛びます。


「がっ!あっあっあっ・・・」


 あまりの激痛にその場で転げ回り悶絶するトワに、暗闇の中からヒメの無慈悲で酷薄な声が響きます。


「あっそうそう言い忘れてたけど、もしこの修行の途中で少しでもオドを乱したり減衰させたりしたら、その時は容赦無く鉄拳制裁を加えるからそこら辺覚悟しといてね」


(マ、マジかよ・・・)


 痛みで悶え苦しみつつもヒメの言葉を聞いたトワは絶望的な気分になります。そんな時・・・


 ゴォン!ズザザザザザッ!!という激しい轟音を聞いたトワはあの甲冑の人も自分と同じ様にヒメから制裁を受けている事を察します。


(嫌味な奴だけど、不幸を嘲笑う気にはなれないかな・・・なにせ私と同じくシャレにならない痛みを味わっているのだから・・・)


 トワは甲冑の人に同情しつつ、未だ痛みの走る鳩尾をさすりながら立ち上がり先程と同じく、オドを精密に纏い増大させ続ける修行を再開するのでした。

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