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おはよう世界、ともだち世界樹。

家近のコンビニが潰れました。めちゃめちゃ不便です。

子供の頃に「世界にはどんな人がいるんだろうか?」なんて考えていたことがある。


どんなものを食べ、どんな風に育ち、どんな友達を作り、どんな考えを持ち、どんな風に言葉にするのか。なんて、そんなことを考えていた。

アメリカに住む人が、エジプトに住む人が、白人が、黒人がなどいろんなパターンで考えていた。


俺は人がどこでどんな暮らしをするのか、が好きだったから小学校も中学校も社会科で勉強することだって好きだった。


けれど、ただの一度も考えたことがない「どんな人?」がある。


それは、どんな風に怒られ、どんな風に悲しみ、どんな風に蔑み、どんな風に絶望し、どんな人を妬み、どんな痛みを味わい、どんな屈辱を晒し、どんな苦しみを受け、どんな風に殺されたのか。そしてその時どう思っていたのか。

俺はただの一度も考えたことはなかった。


_________________________________________________________


「.........あ」

(「知らない天井だ」)


俺が目を覚ますと、ソフィア、ネイト、そして爺が俺を覗き込んでいた。

なぜか、皆、心配そうな顔をしている。いつもなら、目を覚ますたびにニコニコお出迎えしてくれていたのに。


そして皆涙を浮かべて抱き合って喜び出した。おいおいどうしたマイファミリー、生まれた時再現みたいになってるよ。


ていうか、あれ?俺はいつ寝たんだ?

思い、考えをめぐらせる。えーっと確かそうだ偽ティン・○ーベルが...


刹那、

(「殺さないでください,殺さないでください、殺さないでください、嫌ぁぁ......」)


(「......えははははは、えは?えははははははははははははは!!」)


殴られるような痛みと共に、頭に言葉が流れ込んでくる。死の間際、命乞いをする少女の姿がフラッシュバックするように見え始めた。

ゴミ溜めのような路地で、血と、肉が腐った酷い匂いが立ち込める中、頭を地面に擦り付け、必死に命乞いをする少女。目の前にはビンをもった巨漢の男。恍惚とした顔で悩んだ素振りをみせ、容赦無く頭にビンを振り下ろす。


ぐちゃっ、と言う感触と共に我に返る。絶望する少女と殺戮を楽しむ男。その意思が形になって脳に流れてきていた。


わからない。わからない。なんだこれなんだこれなんだこれ!


絶望と愉悦、そしてどうしようもない吐き気に襲われる。


刹那

(「見て!お母さん!一番だよ!私また一番!」)


学校、だろうか?そこで試験結果に喜ぶ犬の耳を生やした獣人の少年が一人、大きな声で母親に訴える。


(「わぁ!すごいじゃない!今日はご馳走にしなくちゃね!」)


母親もそれに応えて笑顔で返し、だきしめていた。

褒めて欲しい純粋な欲望と我が子の成長を喜ぶ母親の母性もまた同時に感じる。


先程の気持ち悪さに反して、この映像は俺に温かみを与えた。全てが拭えるほどとはいえないが今はこれでいいだろう、というところまでは落ち着くことができた。


あぁ、そうだ。


俺は「意思の加護」を授けてもらったんだ。


あまりの衝撃だったことで正直記憶は曖昧だが、授けられるまでの流れは鮮明に覚えている。

妖精のパチモンが俺に能力くれるだけくれて、そこから俺じゃない記憶が濁流となって流れ込み気絶。今に至るって訳だ。


つーか、大体こういう能力って制御できるもんなんじゃないのかよ...


悪態をついても現状はそんなに変わらないのが歯がゆい。

しかし今の俺にできることはただただ耐えること、そして制御方法模索することだけだ。

いくら加護とはいえ、オンオフぐらいはできないと困る。何よりこれが制御できないなら俺は多分世界全ての人間を嫌いになれる自信がある。


というのも、俺がエアリアルに意思の加護を授けてもらった瞬間、大量の映像がフラッシュバックしたが、あの時流れ込んできた情報は()()()()()()()()()()()()というのが理由の一つだ。


嫌な記憶も何もかも記憶にしっかり残ってるのにそんな奴と対面してみろ。ゲロを顔にかける自信があるぞ。


しかしまぁ意思の加護、か。


正直難儀すぎる能力だと思う。


おそらくだが意思の加護(この力)は世界中にある全ての存在の声を聞くことができる力。つまるとこ俺に隠し事はできないし、サプライズやドッキリ無効を手に入れた訳だ。商人とかが手に入れたら余裕で大企業作れちゃうねこれ。


けれど、そんな明るい能力でもない。さっき見た映像は快楽殺人鬼と命乞いをする少女の姿、俺の記憶に残っているのは富が大好きな王様や、権力を振りかざす神官、憎しみを抱えた少女、無能を呪ったゴブリン、人間を殺すために根付いた木、とまぁさまざま。


今はまだなんとか保っていられるが、制御を外れて世界全部の情報が一気に俺に流れてきたら多分余裕で人間じゃなくなる。


しかし、今俺が長々と考察できてるのはなんでなんだ?昨日の出来事で覚えている意思は21個あるけど、今日は起きてから2つしか流れ込んでこない。

眠っている時間に覚えた記憶が0だとして目覚めてから2つの意思ってのは何か引っかかる。


なんだろう?MP依存の能力なのかな?生まれたてでレベル1だとするならMP21あるのも不思議だけど、仮にMP依存なら回復した端から意思が流れ続けるとかか?え?じゃあ永遠にMP回復しないってことにならないか?

異世界転生魔法禁止縛りとか、せめて三週目だろ、普通。


まぁなんにせよ俺が赤ん坊だったことが不幸中の幸いって感じかな。


刹那

(「君も無色(エラー)意思の加護を持ってるの?」)


頭に声が響いた。


その声は透き通るように美しく、全身が甘やかに許されるような声でありながら、どこか震えている。

そんな声だった


しかし、重要なのはそこじゃない。今のは()()()()()()()声だった。


俺はその声に向けて意思を向ける。


(「あんたは誰?」)


が、しかし届いている気がしない。

そうかMP0(仮)か。加護使えないマンだったわ。


自分勝手な仮説で理由付けをしていると。


(「きこ...える...の?」)


また声が聞こえてくる。さっきと同じ声だ。


ははーん、読めたぞ。この相手は俺と同じ加護を持っているマンだな?そして俺は頭に思い浮かべるだけでそれを読み取ってくれている訳だな?つまりは相手に電話代払わせての電話か。なんかそれメシウマだな。


いやいや、落ち着け。さっきの声に返事をしよう。


(「聞こえる。無色ってのはわからないが、俺も意思の加護を持っている。あんたは誰だ?」)


(「.......っ.......わた....しと....同じ、うえ....う....うあ......うわあぁぁん!!」)


泣いちゃったんですけど。俺泣かせちゃったんですけど。0(20)歳、男児(男性)童貞がおそらく女の子泣かせちゃったんですけど。


(「えっと、あの、あー泣かないでー?俺悪いみたいじゃん」)


(「だ...てぇ、はじ、初めて...私の声....聞いてくれる....人見つけた.....からぁ!....うわああぁぁん!!」)


初めて声聞いた、だって?人間でしょ?なんでそんなことになるよ?声ぐらい聞こえるっしょ?


(「うわぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁん!!」)


だめだこりゃ。泣き止み待ちですね。


___________________________________


(「ごめんなさい。いっぱい泣いちゃって...」)


(「あぁうん。いいんだけどさ、ところで君は誰なんだ?」)


実に3回目の自己紹介要求である。


(「えっと、私は、木、だよ」)


まさかの植物さんいらっしゃーいとはびっくりである。


(「私は世界樹、ユグドラシル。世界で一番でっかい木だよ。」)


は?


終盤必須回復アイテムの原木と仰りました?


は?


おいおい、待て待てそんなことありえるのか?


(「死んだ人間も葉っぱで生き返ると噂の世界樹?」)


(「?、葉っぱで人が生き返ったりしないよ?寿命がちょっぴり伸びたりするけど」)


(「なるほど、この世界の世界樹は不老アイテムかなるほど。そんでそんなビックネームがどうして俺如きに話しかけてきたんだ?」)


(「だって、はじめてだったから。」)


(「何が?」)


(「私の声を聞いてくれた人が、だよ?」)


(「ユグドラシルさん、まさかのぼっち?」)


(「うぇ....」)


(「わー!泣かないで泣かないで!ユグドラシルちゃんぼっちじゃないよ!ほーら話せるお友達がここにいるよー?」)


(「ともだち?」)


(「そうそう!友達!」)


(「私君のこと知らないのに?」)


(「俺の名前はソウル・マーシトラス!ほーら名前を知っちゃった。もうお友達だ。」)


(「おともだち....おともだち!ソールは私のおともだち!もう一人じゃない.......うわぁぁぁっっぁん」)






クソザコメンタル ぼっち 世界樹 が おともだち に なった!!








誤字脱字教えてもらえると幸いです。

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