6話。。ヤンデレコワイ
エリアの一言に樞の怒気がやばいことになった。
平静を保とうとしてるようだが、口の端がピクピクしてる。
てか、目怖いよ目。
例えるならLevel5に突入した、というかなんというか・・・・突然病んだって感じだ。
「あの、言葉の意味が理解出来ないんだが。」
俺はものすごい量の冷や汗をかきながら手を挙げる。
「そうだね。えっと・・・・名前は?」
名前も知らずに爆弾発言。さすがアメリカ人(金髪だからなんとなく)。
積極的だなぁ。
「えっと、俺の名前は千歳樹夜だ。」
俺が自己紹介をすると、エリアはズビシッと俺を指差してこう言った。
「樹夜、ぼくの事どう思ってるのかな!?」
ちょい待ち、いきなりどう思ってるのか、なんてどうすりゃいいんだよ。
しかも呼び捨て。
俺の方が年上だよな?たぶん。
「いきなりそんなこと言われてもなぁ・・・・」
ちらり、と樞を見る。
おいおい、めっちゃ睨んでるよ。
取り敢えず打開策を考えなければ・・・。樞もエリアも納得させるような一言。
「さ、さっきぼくの胸揉んだでしょ?せ、責任とってぼくのものになってよ!」
ん?今何か言ったかな?樞が俺の横に来て足をつねってるんですけど。
めっちゃ痛いんですけど。
「樞様、痛いです。」
少し抵抗してみる。
「お兄ちゃん、今、糞金髪が言ったこと本当かな?かな?」
あれ?言葉まで病みだしたじゃないか。
おかしいなぁ。なんで冷や汗がグランド20周走った後の汗と同じくらい出てくるんだろ。
「事実というものは時に事実とはかけ離れていてだな、つまり何が言いたいかというと・・・・いえすだぁぁぁ痛ぇぇぇぇぇぇぇちょ、まじギブギブ」
やべぇ、足の肉が引き千切れてしまう。
「へぇ、そうなんだ。お兄ちゃんは糞金髪みたいなロリが好みなんだ。そうなんだ、私なんかより。」
恐いよぉ、まじ半端ねぇ。
「何言ってんだ、兄妹なんだし好みとかないだろぉぉぉぉぉぉ力を入れるなぁぁぁぁぁぁぁぁあまじ千切れるぅぅぅ痛ぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
俺の涙ながらの言葉に流石に力を抜いてくれた。
「・・・・千切れれば良かったのに。」
あれ?なんかさらっと怖い台詞が聞こえたな。
きっと気のせいだよな、ハハハ。
「つか、エリア。俺がほしいって、その、なんか理由でもあるのか?」
「うん、だって樹夜クォーターだし。珍しいんだよクォーター」
エリアの言葉を聞いて樞が俺をじっと見る。
「本当だ・・・・よく見るとクォーターだ・・・今まで気付かなかったなんて。一生の不覚だよ・・・・・・。」
と、何か落ち込んでしまった。
「あの、クォーターて何?」
「んん〜?一言で言うと魔力と霊力のダブルチーズバーガーかなぁ?」
エリアは困ったように答える。
が、意味わからん。
ダブルチーズバーガーって単語が出てくる意味も、それが何を意味してるのかもわからん。
「つまり、ね・・・・人間は本来、魔力か霊力のどちらかしか持ってないんだけど、稀にその両方を持ってる珍種がいるんだよ。それがクォーター。」
と樞が呟く。
なるほど、俺は珍種なわけか・・・・。
「で、その珍種がほしいとかエリアは特殊な趣味の人なのか?」
エリアは首を横に振る。
「違うよ。クォーターが珍種なのは認めるけどぼくだけが欲しがるわけじゃないんだ。たぶん、誰でもほしがると思うよ、クォーターは。」
「・・・・・・何で?」
「えっとね。簡単に言うといい子孫が残せるんだよ。クォーターの子供はクォーターになる確立が高いらしいからね。」
えっと、つまりなんだ。
エリアは俺の子供がほしいと?
「ちなみに現在、協会に登録されているクォーターは3人なんだけど全員既婚者だったり。」
「でも、別にクォーターの子供残さなくてもいいだろ?」
俺の言葉にエリアは眉をひそめる。
「何言ってんのさ。自分の子供がクォーターなんて鼻が高いしね。親冥利に尽きるじゃん。しかもクォーターは、魔法と霊能力の二つを使えるからすっごい強いんだよ?」
まぁ、確かに自分の子供が回りの子供より優れているってのは親として嬉しいかもしれんが・・・・。
「な!?クォーター目的だけならお兄ちゃんは諦めてよ!だって、愛がない結婚なんてダメだし!」
樞がエリアを睨む。
「うるさいなぁ。愛がないなんて・・・・ないわけないよ。ぼくは樹夜に一目惚れしたんだもん!つまり愛はあるよ!かなりどでかい愛が!」
エリアは顔を赤くしながら口を尖らせる。
「で、でもお兄ちゃんの意見は!?」
樞が反論する。
「樹夜の意見は・・・・無視!」
「ダメ。お兄ちゃんの意見は私が決めるの!」
えぇ、俺の意見無視ですか。
何、このわがまま。流石に言われ放題はな・・・・・・・。男が廃る気がする。
俺は二人に反論してみる。
「あのなぁ・・・・。」
「「うるさいっ!」」
二人の怒鳴り声に思わず身がすくむ。
「ごめんなさいぃ!」
どうやら俺はかなりのヘタレらしい。
時計は8時。
朝飯は食ってないが学校に遅れる。
俺は、言い争う二人に気付かれないように、鞄を手にとり、そっと部屋を抜け出した。