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えらべっ!  作者: 璃瑠@
2/7

2話。。過去の傷

えっと・・・誤字脱字があったら報告よろしくお願いします。                    なるべくもう一つの小説と両立して頑張っていきたいです。

気が付くと家の玄関の前にいた。



(ふぃ・・・・疲れた。)


俺は汗を拭い玄関のドアノブに手をかけた。



「やべぇ、忘れた。」



そう、本来の目的。

妹の誕生日プレゼントを忘れてしまった。



命の危険だったとはいえ、今度は別の意味で命の危険にさらされてしまう。



俺は踵を返した。



「ぐへっ」



とたんに後ろ襟を掴まれた。

こんな人の体を考えないようなことをするやつは一人しかいない。



「なんだ樞〈かなめ〉。痛いし」



ゆっくりと後ろを振り向くとニコニコ笑いながら怒気を放っている妹が立っていた。



さっき現われた犬のやつと同じくらい恐い。



「お兄ちゃん、今日何の日か知ってるよねぇ?」



恐いよ、笑顔が恐すぎる。


「も、もちろん。樞様の誕生日でごわす。」



恐怖のあまり言葉が変になってしまった。



「わかってるのかぁ。なら、何でどこかに行こうとしてるのかなぁ?ねぇ?」


「・・・すいません。家に入ります。すいません。」


二度も謝ってしまった。

兄の面目丸つぶれじゃないか。



「よろしい。なら鞄置いて風呂にでも入って来なさい。」



「・・・了解。」



俺はコクッと頷くと自分の部屋にそそくさと非難した。



「年月とは恐ろしい・・・・・・。」



妹の樞は昔はあんなんじゃなかった。純真な笑顔を振りまいていた。で、お兄ちゃんっ子で俺によく甘えていた。



名字でわかる通り俺と妹は血が繋がっていない。

まぁ、どうでもいいことだが。



思春期とは人をあんなに変えてしまうものなのか。



「さて、風呂入ってくるかなぁ」



俺は鞄を置くと風呂にむかった。







「ふぃぃ、落ち着くぅ」

俺は湯槽に顎までつけてリラックスする。



ふと腕を見ると忘れられない傷があった。

見た目ほどひどい怪我ではないが心が痛む。



「もう9年くらいになるかぁ。」



ふと思い出す、昔の記憶。


忘れちゃいけない記憶。



鮮明に刻まれた記憶。



あれは俺が小学校に上がる少し前の事だ。



深夜2時28分。



トイレから出た小さい俺は玄関に人影が映っているのを見た。



俺は怖くなり父さんと母さんを起こした。



そう。これが全ての始まりで終わり。



母さんと父さんは最初、俺を相手にしなかったが俺が半泣きになるとやれやれ、という感じで起きてくれた。



玄関に着いた母さんと父さんはその影を見ると顔を青くして恐い顔をした。



「樹夜〈みきや〉、部屋に入ってなさい。」



いつもと違う母さんの声色にビクつく。



「お母さん。恐いよぉ。」


「大丈夫、安心しなさい。」

そう言いながら俺の頭を撫でてくれる母さん。



その手は最後に感じた母さんの温もり。



「ネェ、アケテヨ、ハヤク、ハヤク、ハヤク、ハヤク、ハヤク。」



その声はハヤク、ハヤクと玄関のドアを揺らし始めた。



「ちっ、この感じ。Sランク〈神上がり〉か。」



父さんはそう言うと玄関に飾ってあった刀をとる。



その刀を鞘からゆっくり抜く。今まで飾り物と思っていた刀。本物だった。



父さんの体から青い靄がたちこめて剣を纏う。



「海香〈みか〉、早く樹夜を連れて逃げなさい。」


「・・・っ!わかりました。」

母さんは唇を噛むと俺を奥の部屋へ促した。



「アケテクレナイカラ、アケテクレナイカラ」



影は奥の部屋の前にいた。


ただの影ではない。眼は一つ、その眼を見開きこちらを見る人型のそれは高い耳障りな声で笑う。



そいつは自分の影を伸ばす。

母さんは俺を庇うように父さんの方へ押す。



「悠〈ゆう〉さん、あとは頼みました。」



母さんはそう言うと影に突進していった。

影は笑い声を更に高くし自分の影を操る。



槍状になった影は母さんの腹に刺さり体を引き裂いた。



俺は何が起こったかわからずに母さんが倒れるのを目で追った。



「海香ぁぁ!」

父さんは、叫ぶと同時に手に持っていた刀を落とし、母さんを抱え込む。



影は笑うのを止めてこう言った。

「タスケル?ナゼタスケル。ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?」



影は問い掛けるように呟く。

それと同時に影を操り父さんの体に槍状の影を差しまくった。



影は沈黙した二人を見て、俺を見た。



「シンジャエ。シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ」



そう言いながらニヤッと笑った。



俺の記憶はそこまでだ。

そこから先は思い出せず、次の記憶は病院の天井から始まる。



どうやってあの場をしのいだのか。あの影はどうなったのか。



それを知っているのは、思い出せない記憶の欠片と、事件のあといつのまにかついていた腕の傷だけだろう。



「ちっ、さっきの路地裏のやつで思い出しちまったじゃねぇか。」



俺はため息を一つつくと、料理を作って待っているであろう樞と、俺を引き取ってくれた嘉那夫婦が待つであろう食卓へ急いだ。


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