表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/27

057「レンブラントの名画もどき」

「注文するなら、食べきれる量にしてくれ。なんだって、大盛りを注文するんだよ。あー、胃が痛い」

「悪い悪い。つい、いつもの癖で。残したら怒られるのを、すっかり忘れてた」


 脇腹を押さえながら文句を言うテオと、眉をハの字に下げて許しを請うドミニクが、すっかり日が暮れた中庭を歩いている。その手には中にロウソクを灯したランタンを持ち、詰襟で腰に白木の警棒を提げた姿の二人は、学内を見回りしているのである。というのも、始業式を無断欠席した罰として、上級生から夜警当番を言い渡されたからだ。


「その前に、カフェで食べすぎたせいもあるだろうけどね。結局、二階で何をしてたんだ?」

「ヘヘン。それは、教えられないよ。これは、アランさんとの秘密だから」


 セリフの後ろにハートマークでも付きそうな調子でドミニクが言うと、テオはハイハイと軽く受け流して言う。


「あっ、そう。それって、前に言ってた弟くんとも、関係するのか?」


 何気なくテオが疑問を口にすると、ドミニクは口を噤んで俯く。すると、テオは早口にフォローする。

 

「言いたくなければ、言わなくていいよ、ドミニク。でも、話したくなったら、すぐに教えてくれ」

「ゴメンな、テオ。――それにしても、夜の学校ってワクワクするよな」

「どこがだよ。薄気味悪いだけじゃないか」


 急に元気を取り戻したドミニクに対し、テオはウンザリしながら言う。すると、ドミニクは、ランタンをテオの顔に近付けつつ、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら問い詰める。


「そんなことを言って強がってるけど、ホントは暗がりが怖いだけじゃないのか? ヘイヘイ、ボーイ。正直に吐いて、楽になっちまえよ~」

「眩しっ! そういうんじゃないから」


 テオがドミニクのランタンを手で払いのけたタイミングで、前方の茂みがガサガサッと音を立てる。


「風かな? それとも、お化けが寄って来たのかも。た、た、り、じゃー!」

「シッ! 静かにしろよ、ドミニク」


 テオが悪ふざけをするドミニクの口を片手で押さえると、二人は無言のまま、ゆっくりと足音を忍ばせて茂みに近付いていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ