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さよなら、僕の世界

「良く来てくれた。これより…第1回、『勇者の勢力を弱める為には魔王たちはどうしたらいいの会』を開催する。」


「メルバス様、ふざけないでください。」


「こっちは真面目だ!」


「はぁ…」


新人魔王であり、煌めきの魔王・ラルクはため息をついた。真魔王・メルバスは魔王城〈アラストル〉の王で、悪魔の世界の長。メルバスが真面目に話しているということが理解できていなかったラルク。


「まぁ、いい。勇者の勢力を弱め「魔王強化会で良いと思います。」


「…では、それでいこう。…が、その前に。」


招集された悪魔の世界の住人たちは騒めいている。『彼』の存在は魔王の中でも評判だ。


「紹介しよう。こちら、今回の魔王試験を特待生…まぁ、あれだ。1位だ。で、突破した……」


「ラルク・アスタルです。まだまだ力不足ですが、新人魔王兼、煌めきの魔王として成長していきます。皆様、よろしくお願い致します。」


「すまんな、名前が覚えられない。」


「新人魔王様、礼儀正しいな。」「しかも、純粋で格好いい感じがするわ!」「若いのに凄い…」などと、悪魔たちから歓喜の声がラルクに浴びせられた。


「と、まぁ、魔王強化会…いや、ん?強化はしないが…何か、対策が考えたいな。」


「では、『勇者対策会』にしましょう。」


「そのままだが、それが良いな。というわけだ。皆には勇者対策を考えて来て貰いたい。…解散!!」


「………え?」


あまりにも早すぎる解散。そして、雑すぎる説明だった。一体、どういう経由で真魔王になれたのか。それが、ラルクの思ったことだ。



──数時間後。




「ラルク、食事の準備が出来ているぞ。」


「あ、メルバス様。」


「成果が出て来たな…」


「成果?」


メルバスは解散後の数時間、魔王たちの名前を必死に覚えていたのだ。正直、ラルク以外の名前は覚えられたとは言えない程である。


「成果って、何かありましたか?」


「いや、こちらの話しだ。さて、早くしないと食事が冷めてしまうぞ。」


「すみません。今、どうしても買い出しに行きたいんです。最近、趣味が出来て…」


「趣味、とな?」


「はい!『レンキンジュツ』というものです!」


錬金術。簡単に言えば、物質同士を合成させ、新たに物質を作り出すことだ。そのうち、凄いものが出来るのではないかと考えたラルクは錬金術を行い、趣味となっていた。今のラルクを例えると、好奇心旺盛な少年だ。ラルクが人間であるなら、そのものだろう。


「では、行って来ます。」


「気をつけてな。ラルクの分の食事は勿体無いから私が頂いておこう。」





城下町〈ファルニール〉



「必要なのは、暗樹の葉と…」


ラルクは城下町へ買い出しに来た。


それに気づかない者はいない。皆、ラルクに注目している。手を振ったり、応援の声だったり…


「…慣れない。」


正直、ラルクは苦手だった。


「あの、暗樹の葉と…」


「きゃっ!?ら、ラルク様!?えっ、どうしよう…す、すすす、すみません!緊張がっ!!」


「…」


ラルクが普通の悪魔だった頃。今ほどでは無いが、このような状況はあった。ラルクは幼い頃から優秀で未来の魔王候補などと、ずっと謳われていた。


「それにしても、良かったよ。今年は牢獄行きの人がいなくて。」


ラルクは自分が魔王になるだとか、どうでも良かった。魔王試験の成績が低すぎる場合、アラストルから強制排除。牢獄〈ギル〉にての処刑が待っている。魔王試験は強制ではないが、例え下っ端であろうと魔王城に住むことが出来る。城下町に住んでいる者は、魔王試験を受けていない悪魔たち。今の生活が満足なのか、処刑されるのが怖いのか?


ラルクは推薦にて魔王試験を受験した。1回の魔王試験につき3人、魔王城から推薦が来る。推薦を受けた悪魔は強制受験しなければならないが、処刑は確実にないのだ。


悪魔の地位は、魔王、魔王直属配下、将軍、軍人、下っ端と分けられている。将軍以下の地位の悪魔は何かあれば、すぐに向かわなければならない。魔王直属配下以上の地位の悪魔は魔王城での待機となる。ちなみに、魔王の上には真魔王、下っ端の下には住民となるが住民は地位に含まない。そして、真魔王は何もしない。何かしたというケースが過去にない。



「みんなの前にいるだけでも緊張するなぁ〜。」



ラルクは上を見上げる。悪魔の世界は空の上にある世界。一方、『普通の世界』と呼ばれる世界は空の下に存在するらしい。


「今日も星が綺麗。疲れも少しは……ね。」


悪魔の世界の上には星が広がる。これは『悪魔の星』と呼ばれるもので、悪魔の世界の灯りとなっている。



そんな星を見ていた束の間……




「あれ?何か変なような…」



ラルクには、悪魔の星の1つが大きくなってきているように見えた。


実際、ラルクだけではない。



「なんだありゃ…」


「ほし、おおきいね!」


「ちょっと…あれ…」


錯覚ではなかった。






──星が悪魔の世界を目掛けて落ちてきている。





気づいた頃には…




「だれか、たすけてぇぇぇー!!」


「…っ!?」



幼い男の子が走っている。しかし、このままでは星が直撃してしまう。一体、どうすれば良いのか。それを考えている暇無く、ラルクの体は動いていた。




「助かれぇぇぇぇぇーーっ!!」





「ドンッ‼︎」




鈍い音がする。



幼い男の子の体は、ラルクの体当たりにより遠くに吹っ飛ばされた。




そして──





「ラルク様ぁぁぁー!!」


「いやぁぁぁー!!」





そんな悲鳴も虚しかった。





「痛い」「体が浮いている」









「あぁ…僕………」










──落ちているんだね。
















あの男の子、助けられたかな………?
















みんな…









この下って、確か………





















──さよなら、僕の世界

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