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SAN値ゼロから始めるオカルト異世界  作者: 枝節 白草
下:現実の異世界
5/5

Re:エレベーター

日が沈みかけていた。化け物達の時間が差し迫る。

息を切らしながらマンションまで戻ってきた。



キサラギはマンションの1階でエレベーターを呼んでみる。

しかし電気は通っておらず何の反応も示さない。

慎重に階段を昇っていく。


2階。

通路に化け物が居てエレベーターまでは行けそうに無い。


3階。

エレベーターは反応しない。


4階。

通路に化け物が居てエレベーターまでは行けそうに無い。


5階。

通路を覗き込んだ時にキサラギは思わず叫びそうになった。

通路に並んで座らされている人間達、そのどれもに頭が無い。

文字通り頭が無いのだ。顔はあるが頭が無い。

額より上が存在しない、頭蓋骨を開けられて脳を取り出された死体が並んでいた。

キサラギは逃げるように階段を昇る。


6階。

通路に化け物が居てエレベーターまでは行けそうに無い。

捕まったら自分も脳味噌を抜かれるのだろうか、身震いが止まらない。


7階。

エレベーターまで近づいた所で異変に気付いた。

通路に垂れた血痕、そしてエレベーターの扉が開いている。

否、中途半端に抉じ開けられていた。

扉に挟まった消火器、そして通路に転がったバールが必死さを物語る。


「俺以外にもいたんだ…、ここに迷い込んだ奴」

それ以外の可能性が思い付かない、そしてそいつはやはりエレベーターから帰ろうとしたんだ、元の世界に。

ここまで必死に抉じ開けたんだ、エレベーターが元の世界に帰る鍵である事を突き止めたに違いない。


キサラギは開いた扉の中を覗いてみるが真っ暗で何も見えない。

この階にはエレベーターは停まっていない様だ。

何か落としてみようか、最後のハンドスピナーを取り出して中へ放り投げてみた。


………カラン、カラカラ…カラ


音は割りと近い、エレベーターは下の階、多く見積もっても2つ下の階だろう。

下には化け物が、2つ下は死体が並んでいた階だ。

どうしようか悩んでいたその時だった。


…カッ…カッ


背後から音がする。化け物がここへ向かってる?もしそうなら退路が無い。

キサラギは意を決してエレベーターの扉の隙間へと身を投じる。

飛び降りるつもりは無い、縁に掴まりぶら下がる。

化け物をやり過ごす事ができたら7階に戻るつもりでいた。


…カッ…カッ

……………

カッカッカッカカカカカカカカ


足音が早い?気付かれた?

キサラギは覚悟を決めて飛び降りる。大丈夫、エレベーターの天井に着地するだけだ。


足に強い衝撃、乾いた枝が折れるような音、そして激痛。

「つぅっ、ああああ!」

右足が折れたようだ、だが我慢できないほどでは無い。

体を引き擦りながらエレベーターの天井を這う。


エレベーターの天井に救出口のハッチを見付け手をかける。

ロックされているものかと思っていたがいとも容易く開いた。

中に乗り込む事が出来れば元の世界に帰れるのだろうか。

中の様子を覗き込む。



「今強い衝撃がありました…、しかし女性が乗ってくるような気配は無いですねー」


中に居たのは人間、歳も近そうな女性だった。手にはビデオカメラ。


「元の…世界だ…」


女性はエレベーターの1階のボタンを押そうとしていた。


「だめだ!聞いてくれ!それを押しちゃだめだ!」

そう言いたいのだが声が上手く出ない、落ちた時に内臓も傷めた様だ。

そんな時、エレベーターの中からの光に照らされてキラリと光る物を見付けた。

さっき落としたハンドスピナーがエレベーターの天井に乗っていたのだ。

救出口の近くに乗っている。

キサラギは頑張って手を伸ばすとハンドスピナーをエレベーターの中へ落とした。


カラン…カラカラ…


「きゃあ!え?何?ハンド…スピナー?」

中に居た女性がハンドスピナーに気付いてくれた。

そしてどこから降ってきたのかと上を見上げる。当然目が合う。

「きゃあああああ!!」

女性は慌ててエレベーターから逃げだした。そして…。


ウィィィィィン…


エレベーターの扉が閉まっていく。

まぁ、当然だろう、キサラギだって同じことをするだろう。

キサラギは慌てて中へと飛び降りようとするが足が痛くて上手くいかない。


エレベーターは、閉じてしまった。


それでも中へ入ろうと体制を整えている時にキサラギは何者かに腕を捕まれる。

「ひぃ!?」


細い、女性の手。手には血が滲んでいた。

「降りないでって…言ったのに…」

「…人…間?」


そうだ、こいつだ。あの時エレベーターの天井の上に居た奴だ。

考えてみればまだ一日も経過していない。居てもおかしくなかった。

「君は?」

「あなたと同じです、でも今は早く降りましょう」


先に女性を降ろす。キサラギが女性の腕を掴んでゆっくりと降ろした。

それでも少し距離が足りずに飛び降りることとなる。

明るい所に出て始めて気付いた、女性は自分より若そうに見えるし整った可愛らしい顔をしていた。何故あんなにも恐く感じたのだろうか。


「次はあなたですよ、でも私には無理なので助けを呼んできます」

それはそうだろう、普通の女の子に男を受け止める力など無い。

キサラギは首を縦に振る。


女の子はエレベーターの扉を開くボタンを押した。

扉が…開く。

「………え?」


そこにあったのは綺麗に並べられた脳味噌の無い人間の死体。

「なん…で」


並んだ死体のうち一番手前にあった死体が起き上がる。

「きゃあ!?」

女の子はエレベーターの隅へと後ずさる。

脳の無い死体はのそのそとエレベーターの中に入ると1階のボタンを押した。


ウィィィ…ギギ……キリ…キリ…


エレベーターは何故か上へと向かっていく。


…6

…7

…8

…9




はい、これにて終了です。

オカルト記事読んでふと思い付いた話だったりします。

思い付きに付き合って読んでくださった方に感謝感謝です。

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