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SAN値ゼロから始めるオカルト異世界  作者: 枝節 白草
上:異世界の現実
2/5

エレベーター

「はい!今日も検証動画やっていきましょう!ということでね、きさラッキーチャンネルのキサラギです。きさらぎ駅捜索から始まった異世界検証動画も第3段!今回は…、こ・ち・ら!」


カメラマンなど居はしない、ビデオカメラを自分に向けて背景と一緒に映り込む。

大学生となり初の夏期休暇、何か新しい事をやりたくなり動画配信へと至る。

本当にただの気まぐれでしかない。


オカルトで良くある異世界への行き方を検証中なのだが正直やり尽くされたネタだ。


第1段は異世界の駅、きさらぎ駅。

これはただの電車独り旅の動画となった。当然再生数は伸びない。


第2段は飽きたと書いた紙を握って寝る。

寝起きにしわくちゃな紙を見つめる動画となった。再生数は伸びるはずもない。


そして今回は第3段。


「はい、とあるマンションのエレベーターに来ております。今日はエレベーターで異世界に行く方法というのを試してみたいと思います」


これもネットで流行った有名なやつだ。内容はこう。

4階→2階→6階→2階→10階と移動する。

この時誰かが乗って来ると失敗。

その後5階に移動すると女性が乗ってくる。

女性には話しかけずに1階を押すとエレベーターは何故か10階に移動する。

エレベーターを降りるとそこはもう異世界だという事らしい。

実はこれも既にやり尽くされている。



「次はとうとう5階へ向かいます。果たして女性はいるのでしょうか」


ここまでは乗ってくる人も居なかった、とりあえずは成功だと言える。

次は女性が乗って来ないといけない。だいたいみんなここで躓くのだ。

キサラギは異世界など信じてはいない。特に緊張する事も無く5階のボタンを押した。




5階の扉が開く…、そこに女性は…。


居なかった。


「……、はい、いませんね。では最後に1階に降りて終了とさせていただきます」



まぁ、こんなもんだろう。1階のボタンに手を伸ばした、まさにその時だ。

エレベーターが大きく揺れた。まるでエレベーターの上に何かが降ってきた様な衝撃。


「うおお!?……おさまった?…1階のボタン…押してみます」


予想外の事に少しだけテンションが上がる、もしかしたら『何か』が起きるんじゃないか?動画再生数にも期待が持てるかもしれない。

エレベーターの故障かもしれないがここで降りてしまっては視聴者は納得しないだろう。

キサラギは恐る恐る1階のボタンを押した。


何て事は無い、エレベーターは普通に下へ向かって行く。

「えー、エレベーターは下へ向かっております。4、3、2…、………あれ?」


いつまで経っても1にならない。


キリ…キリ…キリ…


…2。


キリ…キリ…キリ…


…3。


「待って!え!?ちょっと!え?怖い怖い怖い。みなさんこれやらせじゃないですよ!ほんとに上がって!え!?待って、待ってよ!」


ギリギリギリギリギリ


…4、…5。


「やめる!やめる方法!えっと、確か他の階のボタンを!」

キサラギはボタンの前まで行くがボタンを押す事が出来ない。

「うわぁぁああ!嫌だ!もう嫌だ!」

階層の書かれたボタンがあるはずの場所は全て丸い目玉に変わっていた。

エレベーター内を見回す様にギョロギョロと眼球が動く。


…6、…7。


その時、キサラギの首筋に一滴の水滴が落ちた。

「ひゃあぃ!…なんだこれ、あか…い…」


どこから落ちたのか、キサラギはエレベーターの天井を見上げる。

四角い、穴。

救出口が開いており、その先に暗い空間が広がる。


穴を見つめるキサラギ。

穴から垂れ下がる長い髪、暗闇の中にぼんやりと見える女性の顔。


「あ…、ぁぁ…」

キサラギはもはや叫ぶ気力すら無い。


…8、…9、………10。


エレベーターの扉が開いた。

ネットの噂が本当ならそこは人間のいないパラレルワールドの様な所。

実際に降りた人の書き込みは途絶えている。つまり帰れないという事。

たとえそれが投稿者のただの演出であっても降りる訳にはいかない。

そう思う理性とは裏腹に本能でエレベーターから逃げ出す。

天井裏の女性への恐怖に耐える事が出来なかった。


「うあ、あ、ああー!………ふ…はぁ…はぁ…」

息を落ち着かせて恐る恐るエレベーターへと振り返る。

エレベーターの扉は、閉まっていた。


キサラギは自分の立っている場所がマンションである事を確認すると少し安堵する。

太陽もまだ高い位置にいる、太陽の光を浴びると自然と恐怖心も和らいでいった。


今自分が居る場所は異世界なのだろうか。

確認する方法は人間の有無だったはずだ、しかしそんな事は確認するまでも無かった。



今自分が居るマンションが…、見渡す限りの大森林の中に建っていたのだから。

日本のどこにこんな大森林があるというのか。それほどまでに広大だった。


ようやく和らいだ恐怖心は絶望感として蘇る。

「どこだよ…ここ…」




異世界行っても悪い結果になる事の方が多いと思うんです。ええ。

それでもその悪い展開を見てくださる優しい方はブクマとかしていただけたらとっても嬉しいです。

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