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1、よろしい、ならば攻略だ。

 気づいたら異世界にいた。

 俺は全裸だ。


「え? なにこれ?」


 俺はビビった。

 なんでこんなところにいるんだ?


 手には【木の棒】。

 他には何も持っていない。


 【木の棒】には紙テープみたいなものが巻かれていた。


『とても普通な【木の棒】です。攻撃力は1です。これは初期にする装備です。あなたは頑張ってください』


 とても読みにくい日本語で説明が書いてある。

 なんかムカついたので俺はそのテープを破り捨てた。


「なんだこれ。自動変換かよ」


 とりあえず初期装備らしいので【木の棒】は持ったままにする。


 それは別に良い。

 問題は目の前にある。


 俺は普通に明るい道の端に立っていた。

 継ぎ目のない大理石のような、ツルツルした素材出てきた四角っぽい道だ。


 どこに明りがあるのかわからないが、道全体が光っているみたいに明るい。

 まるで野外にいるみたいだが、道には窓一つない。

 なんとなく、『地下迷宮』という単語が俺の頭の中に浮かんだ。


 いや、そうじゃない。

 もっとヤバイ問題が目の前にあるんだ。


 俺は無意識のうちにソレ(・・)から目を逸らそうとしていたのかも知れない。


 俺の目の前には、俺よりも背の低い緑色の人影が立っていた。


 頭皮はツルツルで耳がデカく、そして尖っている。

 目は小さいが鋭く吊り上がっていて、間抜けそうに開いたままの口の中には鋭い犬歯が生えているのが見る。

 口元からヨダレが一滴、ダラーっと落ちていく。

 ハリガネみたいに細い体を、ボロボロの布で原始人みたいに被っているが、穴だらけで今にも脱げそうだ。


 たぶん、『ゴブリン』だと思う。

 なんでそう思うかって、ゲーム好きなら多分みんなそう思うだろう。

 ファンタジー系のゲームに出てくるモンスターで、大抵は雑魚(モブ)モンスターの代名詞だ。


 俺もゲームは好きな方だから、すぐにそう思った。

 

 目の前にはゴブリン。

 問題はそこだ。


 ゴブリンは俺を襲うような素振りもなく、ただ突っ立ってこちらを見ている。

 いや、俺を見ているのかは良く分からないが、とにかくこっちを向いているのは確かだ。


 そして道は前にしか伸びていない。

 後ろと左右は壁。

 人が通れるような穴なんてなさそうだし、受け道などはありそうにない。


 誰かに与えられたらしい『初期装備(・・・・)』に、目の前のいかにも初心者向け(・・・・・)なモンスター。

 そしてまっすぐ伸びた道。


 そうなると、おのずと答えは出てくるのだが、ぶっちゃけ怖い。


 いや、だって、これはどう考えても戦えって事だろう?

 木の棒でゴブリンを倒せって、そういう事だろう?

 

 ゴブリンが襲い掛かってくる様子はない。

 なにやら、ゴブリンの首にも紙テープのようなものが巻かれて伸びているが、ここからでは何が書いてあるのか読めない。


 なんとなく書かれている事は想像がつくが、どちらにしろ倒さなければ読むこともできない気がする。


「うーん」


 俺は少しだけ考えてみて、やっぱり戦いたくなかった。

 当たり前だ。

 俺は争いを嫌う平和主義な国に生まれ育ったのだ。

 ケンカすら悪として教育されてきた。

 争いは話し合いで和解するのがベター。

 殺し合いなんて持っての外だ。


 というわけで、隠し通路の一つでもないかと周囲の壁を確認してみる事にする。


「どれどれ」


 と、俺が一歩、壁に向かって動いた瞬間だ。


「ゴパーーーー!!」


 5%!?

 ゴブリンが謎の雄たけびを上げながら駆け寄ってきた。


「う、うわああ!?」


 そのまま爪を立て、ひっかこうとしてくる。

 俺は驚いて、咄嗟に手にしていた【木の棒】を振り回した。


「ゴパ!?」


 ちょうど俺の腰ほどの高さに頭があったゴブリンは、めちゃくちゃに振り回した俺の【木の棒】にヘッドショットされ、一撃で倒れ込む。


「よ、よわっ!」


 急に襲ってきた時は驚いたが、終わってみれば楽勝だった。

 というか楽勝すぎて驚いていた自分が妙に恥ずかしく感じる。


(うん。誰もいないで良かった……)


 倒れて動く気配のないゴブリンに近づいて、首に巻かれた紙テープを見てみる。


『これはチュートリアルです。ゴブリンは最初のように弱いです。モンスターはする攻撃で倒すことができます。あなたは倒すモンスターでダンジョンクリアしてください』


 やっぱり良く分からない日本語で説明がされていた。

 とにかくモンスターを倒してダンジョンを攻略しろという事だろう。


 なるほどね、と納得していると、ボウンとゴブリンの死体が光に変わり、紙テープだけを残して消えてしまった。


「え?」


 と思うと、次の瞬間には一枚のパンツが落ちていた。

 白ブリーフだ。


「ドロップ品、って事か?」


 ゲームならよくある演出だ。

 モンスターを倒せばアイテムが出てくる。


 宝箱に入っていたりもするが、この世界ではそのまま中身だけが表示されるのだろう。

 

 拾ってみるとブリーフにも紙テープがくっついていた。

 しかも今度は二枚だ。


 まずは一枚目。

 これはこの白ブリーフの説明だろう。


『これは【純白のブリーフ】です。防御力は1です。あなたは全裸を卒業します』


「そういえば俺、全裸だった……!」


 紙を見て恥ずかしさを思い出した俺は、紙テープをちぎって【純白のブリーフ】を履いた。

 ただの白ブリーフのくせになんかカッコイイ名前がついていてムカつくのは俺だけだろうか。


「よし、これで誰かに出会っても不審者扱いされないぞ」


 俺は【純白のブリーフ】をしっかり履き、もう一枚の紙テープに目を通した。


『チュートリアルクリアおめでとうございます。あなたは元の世界に帰りたいダンジョンクリアしてください。』


 なるほど。

 元の世界に帰るにはこのダンジョンをクリアしなけえれば行けないわけだ。


「よし、じゃあやるか」


 俺は【木の棒】を握り直し、道を進んだ。


 え? そんなにすぐ納得するのかって?


 そう、納得した。

 なぜなら、俺はわりと飲み込みが早い方だからだ。

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