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王朝物語  作者: L'Excuse(愚者)
第一章 サウロン王朝物語
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第八話 「受け継がれる意思②」

第八話 「受け継がれる意思②」




 それからサムは、全ての指導者としての勤めを終えることを覚悟した表情になり、主神に向かって呼び求めた。


「主神様よ。今こそしもべの務めは終えましたぞ。僕の務めをお認めくださるか!!」


 すると、天から突然雷と雨、そしてひょうが地面へ向けて次々と絶えることなく降り注いで来た。

 サムが主神に呼びかけての出来事であったので、闘神の民はみんな恐ろしくなってしまった。空から雷と雨、雹を降らせた主神と、それらを呼び寄せたとしか思えないサムの祈りがとてつもなく怖かったのだ。


―――余談ではあるが、かの宗教改革者マルティン・ルターは、落雷の恐怖に死すら予感して思わず、「聖アンナ、助けてください。修道士になりますから!」と叫んだという。その後、彼は誓いを立てた通り修道院で修道僧となり、1517年ビッテンベルクの教会の門扉に「95箇条の提題」を打ち付け、宗教改革 (プロテスタント運動)が始まったという。雷はどの時代でも『神の裁き』や『死の恐怖』を感じさせるものがあるのだろう。―――


 闘神の民は全員がサムに向かって言った。


「あなたのしもべたちのために、サム、あなたの神である主神様に私たちが滅ぼされることが無いように、"執り成しの祈り"を捧げてはもらえないでしょうか。

 私たちのあらゆる全ての罪や過ちの上に、主神様のご意向に逆らってまで王を求めてしまったことで過ちを増やしてしまったからです!!」


 戦神の民は、女子どもや年寄りに至るまで、全ての者が天変地異を思わせる程の降り注ぐ雷と雨、それに雹に怯えていた。このまま自分たちが地上から断ち滅ぼされてしまうのではないかと恐れたのだ。


 それに対するサムの応えは、厳しかった。


「恐れるでない。お前たちは、確かにこれらの悪、罪を行ったじゃろう。

 じゃが、主神様に忠実に従い続けることじゃ。邪な心を抱いてはならん。

 誠心誠意、全身全霊を捧げ尽くして主神様にお仕えするのじゃ。

 糞の役にも立たん、目も開けられず、口もきけん、動けない偶像どもなどに従って、主神様のご恩を忘れてはならん!! 偶像など中身が空っぽの虚しいだけの虚像じゃ!!

 

 まっこと、主神様は偉大なお方じゃ。ご自身の偉大なる御名のために、ご自分の民、我ら戦神の民を決してお見捨てにはならん!!

 主神様はあえて、お前たちをご自分の民として選ばれたからじゃ。

 儂もまた、お前たちのために執り成しの祈りを捧げることを止めて、主神様の前に祭司としての執り成しの務めを投げ出して、罪の罰としてその御怒りをかうなど真っ平御免じゃよ。

 

 儂は、お前たちによって裁き司としての役目は降ろされた。

 じゃが、これからも祭司としては、お前たちと王の前に主神様の御心みこころを告げ、正しい道を示し続けようぞ!!

 

 お前たちは、これからも、ただただ主神様をおそかしこまるのじゃ。

 全身全霊を捧げ尽くし、誠意を込めて主神様にのみ仕え続けるのじゃ。

 主神様が、お前たちにどれだけ偉大なみわざを行って来られたのかを、邪神どもに惑わされることなく見分けるのじゃ!!

 お前たちが悪の道を選ぶのならば、お前たち自身も、お前たちが担ぎ出したサウロン王でさえも滅ぼし尽くされるじゃろう!!」


 そう告げたサムは、言うべきことは全て言い尽したという満足げな表情でエポデを揺らしながら壇を降りた。


『後は任せたぞよ。サウロンよ。儂の務めはここまでじゃ・・・。』


 その日、闘神の民は転換期を迎えた。神政一致体制から、宗教分離での支配体制を確立させようとしていたのだ。


 紀元前まで遡らなくとも、歴史を学んだことがある人であれば、各地、各文明に伝わる支配者階級であった者たちのほとんどが、なんらかの宗教的な役割を担っていたことに気付くであろう。


 彼の地、闘神の民の地でも、サウロンが王として油注がれるまでは、サムが祭司であり、裁き司として、政治、軍事を司って来たのだ。だが、そのサムも高齢となり、かつてのように全ての職務と責任を一身に背負うことに限界が来ていたのであろう。


 そればかりか、他国のように「王」であれば、その血筋に支配権を委ね続けることが可能となる。特権階級や支配階級と呼ばれる人々も、歴史の中では時に"悪役"や"役に立たない存在"として登場するが、実際には特権が与えられる家臣団には、重要な意味がある。


 開闢したばかりのサウロン王朝にとっては、家臣団はこれから形成される存在となるが、長い歴史を連ねた国家においては、家臣団は家柄だけの存在では無い。王朝と深く結び付き、忠誠を誓う代わりにその地位や領土を安堵され、長い歴史の中で国家というシステムを守り続ける存在でもあるのだから。


 しかし、サムは"祭司"であり、その血筋に"支配権"を委ね続けることは出来ない。

 事実、彼の息子たちは祭司でありながら、邪な心を隠そうともせず、欲望をむき出しにして人々の嫌悪を買ってしまった。


 無論、暴君や暗君などの国家にとって弊害となる愚者が王冠を頂くこともある。

 だが、だからこその"特権階級"であり"家臣団"なのだ。国家の危機に対しては、暗殺やクーデターも含めて、自浄作用となり、重臣と呼ばれる者たちが粛清されようが、国家の屋台骨が挫けないように支え、新たな支配者を出現させる源ともなる。


 残念ながら、サムには協力者は居たが家臣団は存在しなかったのであろう。

 政教分離を唱える現代ならまだしも、この時代には政教一致が常識の時代。

 そんな中で、今、闘神の民にサウロンという新王が現れ、時代の変化を迎えようとしていた。




◇◆◇




 サウロン視線


 わっちゃぁ~・・・。

 サム爺さん・・・ なんて恐ろしいコトを・・・・

 つか、俺、マジで帰っていい?

 王とかマジ無理だし。

 根性? ナニソレ美味しいの?

 王冠? んなもん、欲しい奴にくれてやるからマジ勘弁して!!


 なーんて、いつまでも愚痴ってばかりもいらんないよな。

 全方位囲まれちゃってますわ。

 完全詰みってヤツですわ。

 もーなるようになれってやつですわ。


 いっそこーなったら・・・

 後宮でも造って毎晩ハーレムでもやっちゃおっかなー・・・

 ん。案外いいかも?


 よし、それなら引き受けよう。

 でもなー・・・ んー・・・

 サム爺と主神様に逆らっちゃーマズそうだしなー

 怒らせると怖い爺さんってマジ居るんだな。


 おし! サム爺には顧問にでもなってもらってー 後見人?

 名誉職とかそんな感じで、適当にあまり煩く干渉して来れないようにしないとアカンな。

 主神様には・・・ ダメだ。ハッキリ言って思い浮かばん!!

 どーしよこの恐ろしい神様はよ。


 うん。ここは一発『いずれ立派なお社建てますからぁ~ それまでは (なるべく大人しく)私どもを見守っていてくださいませー でもって、ピンチの時には例のアレ。空から派手にドーンっと雷&雨、ついでに雹もお願いしますー!』って感じでどよ?


 まさかあのタイミングでドンピシャ来るとは思って無かっただけに・・・

 マジビビったわ。


 んむ。今後の展望考えたら、少しは気が楽になったつーか。

 これからは、俺が王だしな!!




◇◆◇




 後日某所。某集団密会視線


「どうするよ。サム爺マジやべーぜ。」

「んむ。」

「サウロン、マジ調子乗るぜ、きっとな。」

「んむ・・・」

「おいおい、俺たちまであの顔だけ残念王に付き従わなきゃなんねーのかよ!!」

「んむ。残念ハンサム・・・ 略して残サムか。プッw」

「おい。つまんねーギャグで受けてんじゃねーよ!!」

「分かっている。私たちだってあんな頼りなさそうな上辺だけ良さそうな王になんか忠誠を捧げたくなんかない。」

「まったくもって同感じゃ。」

「儂らもあんな温情で懐柔なぞされんな。」

「それで、今後のことなんだが・・・」


その場所には、密かにサウロンを王として認めたくない勢力が集まっていた。

その中には、先の戦いでサウロンが勝利を収めた後、サウロンへの服従を認めず、闘神の民から糾弾され、命を奪われそうになりながら、サウロンの恩情によって赦免とされた者たちの姿も見受けられた。

 彼らの部族ごとの特徴のある服装から察すると、十二部族中なんと半数以上がこの場所に集結していたことになる。無論、部族全てでは無いが、力のある者や長老たちの姿も多数含まれていた。


 新たな門出を迎えるはずの新王朝に早くも暗雲が立ち込めていた。



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