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王朝物語  作者: L'Excuse(愚者)
第一章 サウロン王朝物語
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第七話 「受け継がれる意思①」

第七話 「受け継がれる意思①」




 ナハシュ王とその軍勢を打ち破り、サウロンが初勝利を収めたことで人々のサウロンに対する期待は嫌がおうにも高まっていた。

 そんな中、ギルガルでは戦勝を祝う宴が設けられ、人々は飲めや歌えやの乱痴気騒ぎを繰り広げていた。


「あー若旦那めっけッス!!」

「お前か・・・」

「なーんすか、冷めた感じッスねー ノリ悪いッスよ?」

「ノリってお前っ! はぁー・・・ 正直、この先の展開を考えるとなぁ~ はぁー」

「溜息ばっかッスねぇーwwww 若旦那っ! ぱーっといきましょうや!! ぱぁーっとwww」

「あー分かった分かった。酔っ払い相手にしてる暇は生憎と無いんでな、せいぜい俺の分まで楽しんで来いやっ!!」

「了解ッス!! 若の分までしっかり飲んで喰いまくるッス!!」


 顔を真っ赤にした従者の若者その1が、次の酒盛りの輪に混ざろうと少しフラつきながら遠ざかるのを見送ると、サウロンはまた一つ溜息を吐いてから、給仕の者が運んできた葡萄酒の盃に手を伸ばした。

 

『俺が王だって・・・。この若さで!? イヤイヤイヤイヤイヤっ!! ありえねーだろ? 絶対ムリだって。経験? ゼロだし。人望・・・ 従者にもあんな風に軽く見られてますけどなにか? 周囲の期待? ナニソレ美味しいの? 一介の羊飼いの若者風情に、たった一回外敵を撃退して見せただけで? イヤイヤイヤ。ありえないでしょ? 次に負けちゃったらどーすんだよヲイ! 今回はあの不思議な預言を経験しちまったから、作戦も上手く思いついたし、実行したら上手く行ったよ? でもなー ビギナーズラックってあるじゃん? 俺のはそれだと思うなぁ~ はぁ。誰か代わってくんないかなぁ~ 王様。今なら喜んで譲ってやんよ?』


 サウロンが一人で陰隠滅々とブラックホールを形成していると、いつの間にかサムが隣に座って顔を覗き込んでいた。


「お前さんは、よーやったと儂は思うよ。儂の期待以上じゃ!! 流石は油注がれた者だけの事はある。主神様の目は確かじゃった!!」

「はぁ。俺にはどーして俺なんかが選ばれちまったのか、全然分かんないんすけどねー」

「それで良いのじゃ。」

「ハァ?」

「儂も幼い頃、この神殿に母親に連れて来られて以来、先代の大祭司様にお仕えしとる時じゃった・・・。」


 サムは遠い目をしたかと思うと、自分の心の中に入り込んでしまったようで、サウロンは一人取り残されてしまった。


「あー そーですかそーですかー 自分の世界へ引き籠りなら他所でやって下さいよっと・・・ はぁー マジたるいわぁー ってなんか俺キャラ崩壊しまくりじゃね?」


 実際、王と呼ばれる前まではサウロンの人生は順風満帆だった。父は金持ちで家は裕福。使用人として奴隷を数多く所有しており、若い従者その1も幼い頃からの従者であり、友人でもあった。羊飼いとしての手伝いを幼少の頃より続け、先日だって従者その1と二人だけではぐれた雌駱駝を探しに山野を巡った。

 そして、大祭司エリと出会ってしまったことで、人生が大きく変わってしまう神託を受けた。曰く「闘神の民の王になる」と。

 自信なんてある訳が無い。どれだけの民が自分に従ってくれるというのか。他国の王たちとの交渉は? どうやって国の舵取りをすれば良いというのか・・・。悩みは増すばかりでちっとも、気持ちは軽くなんてなってくれなかった。せめてサムが顧問として、アドバイサーでも良いから自分の後ろ盾にでもなってくれたら・・・。

 何も考えずにばか騒ぎを繰り広げる周囲の者たちのように勝利の美酒になんて酔っていられる気分では無かった。またしても、陰々滅々とブラックホールを形成してしまうサウロンだった。




◇◆◇




『お呼びでしょうか? 先生!!』

『おやおや、サムじゃないかね。どうしたんだね。私はお前を呼んでなどいないよ。自分の寝床に帰ってお休み。』

『分かりました。先生! また御用があったならいつでも僕を呼んでください。』

『ああ。分かったよ、平安を。』


 幼少の頃の紅顔の美少年のサムだった。時を遡ること数十年前の出来事だった。

 この頃、主神様のご神託は絶えて久しく、サムから先生と呼ばれた大祭司エルでさえ祈りの間で香を捧げても梨の礫であった。

 エルから呼ばれていないと聞いた少年サムは、再び自分の寝床へ戻り、眠りについた。


『はい! 先生。僕はここに居ます!! 今度こそ僕をお呼びですよね?』

『おやおや、サムじゃないか、今夜はどうしたというのかね? 眠れないのかね? 私はお前を呼んでいないよ。戻ってお休み。』

『分かりました! 先生! でも・・・ 先生じゃないとしたら・・・ 気のせいかしら?』

『はて、どなた様じゃろうの。・・・!? サムや、良くお聞き。次にどなたか様に声を掛けられたならば「私はここにおります。主よ。お話しくださいませ。しもべは聞いております。」と言ってみると良いかもしれんの。』

『「主よ。私はここにおります。お話しくださいませ。しもべは聞いております。」ですね? 先生。』

『そうじゃよ。戻って休みなさい。平安を。』

『平安を。』


 二度も寝ているところを起こされたというのに、エルは自分を呼んでいないと言うではないか。・・・ボケちゃったかしら? などと考えるのは師匠に対して不敬であろうと考えを改めて、エルから教えられた言葉を廊下を歩きながら心の中で反復してみた。それから再びサムは温かな寝床に着いた。


 サムが寝床に着いて、眠り始めて間もなくだった。

『はい。主よ。私はここにおります。どうかお話しくださいませ。しもべは聞いております。』


 それからだった。サムに主神様のご神託が聞こえるようになったのは。以来、サムは次々と未来の出来事や物事の成否、戦いなど、様々な分野で裁き司としてツロの街で闘神の民を導き続けて来た。




◇◆◇




「ふむ。そろそろ頃合いかの。」

「わっ!? 自分の世界に旅立っていたんじゃないんですかっ!?」

「うむ。幼少期の儂を思い出してたわい。じゃがそれも充分じゃ。お主の出番じゃからの。」


 そう言い放つと、見送るサウロンを残して、サムは少し難儀そうに一番高い壇上へとヒョコヒョコと歩いて行ってしまった。

 それから、徐にその場に集まっていた全ての闘神の民へ向けて厳かに語り出した。


「見るが良い!! 

 お前たちが儂に言うたことを、儂は全て聞き届けたぞい。

 そして、儂は一人の王をお前たちに与えた。

 今こそ見るがよい!

 王はお前たちの前に立って歩んでいる。

 儂は年老いた。この通り白髪頭じゃ。儂の息子たちもお前たちと共に歩むようになった。

 儂は若い頃から今日こんにちまで、お前たちの先頭に立って歩き続けてきたわい。

 

 さぁ。今主神様の前で油注がれた者の前で、儂を訴える者はおるかのう?

 儂は誰かの財産や家畜を奪ことをして来たかのう?

 誰かを苦しめて、誰かを迫害したじゃろうか?

 誰かから賄賂を受け取って、不公平な裁きをしたじゃろうか?

 もし、そのようなことを儂が行ってきたのならば、王の前で裁きを受けて、全て返さね

 ばなるまいて。」


 この言葉を聞いた闘神の民は、一斉にサムの問いかけに対して応えた。


「「「「あなたは私たちを苦しめたことも、迫害をしたことも、誰かの手から何かを奪ったりすることもありませんでした!!」」」」


 するとサムは闘神の民へ向けてこう述べた。


「お前たちが儂の手の業について、不正を見出さなかったことについては、お前たちの間では、主神様が証人であり、主神様に油注がれた者である王が証人であるぞえ。」


 すると再び闘神の民はサムに応えた。


「「「「油注がれた王が私たちの証人です!!」」」」


 サムは、闘神の民に向けて慈しむような眼差しと、思いを込めて語り続けた。


「モシュとアハローンを指導者として、お前たちの先祖をファラオの支配地から連れ出したのは主神様である。

 さあ、立つが良い。儂は、主神様がお前たちと、お前たちの先祖に行われた偉大な正義の御業みわざを、主神様の前でお前たちに解き明かしてやるわい。


 ヤアコブがファラオの支配地へ行ったとき、主神様へ向けてお前たちの先祖は悲鳴を上げた。主神様はモシュとアハーロンを遣わされて、お前たちの先祖をファラオの支配地から連れ出し、今住んでおるこの地へと移住させなさった。


 ところが恩知らずにも、彼らは主神様を忘れ去ってしまったため、主神様はお前たちの先祖を、ハトォルの将軍シセラの刃に、フィリスティア人の刃に、モアブ人の刃に引き渡されたのじゃ。そこで先祖たちは戦いを挑まれたのじゃ。先祖たちが『悔い改めますからお許しください。我々は主神様を捨てて、バールやアシュタロテなどに仕えて罪を犯してしまいました。どうか我々を敵どもの手から救い出してくださいませ。我々は再び主神様にお仕えしますから!!』と喚きだして主神様を求めたとき、主神様は、エルバール、ベダン、エフタ、サムエルをお遣わしになられ、お前たちを囲む敵どもの凶刃から救い出してくださったじゃろう。以来、お前たちは安らかに生活して来たではないかのう。


お前たちは、ベン・アミの王ナハシュが攻め上って来たときには、お前たちの神である主神様こそが、お前たちの唯一至高の王であられるにも関わらず、『いや、我々を治めるのには王が必要なのだ。』と儂にせがんだのう。


ほれ、見てみい。お前たちが選び、お前たちが求めた王の姿を!!

見るがよい。主神様がお前たちの上に君臨させた王の姿を!!

もしもじゃ、お前たちが主神様を畏れ、主神様に仕え、ご神託に聞き従い、主神様が授けられた命令オーダーに逆らわず、尚且つ、お前たち自身も、お前たちを治める王も、お前たちの神である主神様に従い続けるならば、それで良いのじゃ。


もしもじゃ、お前たちが主神様のご神託を聞こうともせず、従おうともせず、逆らうならばじゃ、主神様の裁きの御手みてがお前たちの先祖に下ったように、お前たち自身にも下るであろう。


今一度立って、主神様がお前たちの目の前で、これから行われようとしておる偉大な御業みわざを見るがよい。今は、小麦の収穫時じゃろう。じゃが、儂が主神様に天からいかずちを呼び求めるなら、主神様は儂の声に答えてくださり雨と雷が下されるであろう。


お前たちは王を求めたことにより、主神様の御心みこころから大きく外れてしまったことを思い知るが良い。そして、そのことを生涯自分たちの心に刻むのじゃ。」



すいません。一日ずれてしまいました。

次回は土曜午前で投稿したいと思います。


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