5話―⑥―フォース
それからひたすらリーダーを狩りまくった。こいつが今一番SP効率がいいからだ。ユニットカードはもう足りているが、全部カードは回収している。
夕方になるとディフェンスタワーを召喚した。中に入るといい感じの明かりに出迎えられる。うむ。すこぶるいい気分だ。
もうすこし装飾があればな……。贅沢なこといっても仕方ない。
シャワー浴びよ。
ふと……後ろから獰猛な視線を感じた。き、気のせいだよな。
……っ! 気のせいじゃない!
何事も行動は迅速に行わなければならない! わかったか!!
イエッサー!
脳内長官に返事をしてからの俺の行動は速かった。
勢いよくシャワー室に駆け込み、閉めてモニター操作でロックする。
直後にリリーシャの声がした。
「マスター! 開けてください! わたしもいれてくださいー! 1人だけずるいですよー」
「あとで入ればいいでしょ!!」
ふぅ。危なかった。さすがにこのイベントだけは守らなければならない。精神的にこれ以上は危ないラインだろう。
服を脱いでシャワーを浴びる。あぁ気持ちいい。今までは川で洗うしかなかったんだよな。それにしてもこんだけ部屋あってシャワー室1つって……。このあとリリーシャもここで浴びるのだろうか? いかんいかん顔が熱くなってきた。想像するな心頭滅却。
よし。これでよし、据え付けのタオルで体を拭いて外に出た。
そこにはふくれっ面のリリーシャが立っていた。
「むー。マスター、有罪ですよ有罪!!」
「いや意味わからんし」
「法律でわたしとマスターは一緒に入らないといけないんですよ!」
「何その法律! 絶対変えてやるわ! それよりもごはんを食べるぞ」
「ハートフルーツ。わたしハートフルーツがいいです!!」
切り替えはや!!
ちなみにハートフルーツとは昨日リリーシャが気に入っていたハート型のサクランボだ。名前そのまんま。
リリーシャを先にシャワーに入れてからごはんを食べる。タオルを持っていたので奪った。
泣きそうになってたけどハートフルーツを食べさせたら上機嫌になった。
ちょろい。
「よし、お待ちかねのガチャタイムだ!」
パックから引いていく。うん。見事に外れしかない。リーダーも出たけどいまさら……って感じ。
次はガチャを引く。
こちらもぱっとしない。武器屋は1つだけでいいしな。他もダブり。まぁ数あっても問題ないからユニットカードよりは嬉しい。
だけど引いていく内についに、俺は引くことができたんだ。そう! 念願のフォースカードだ!!!
[スペルカード]
名 前:ゴブリンフォース
コスト:0
【通常効果】カードの精霊リリーシャが場に存在する時、このカードを発動することが出来る。
フォースレベルは1となり、場に存在するゴブリンと名のつくユニットを一枚破壊し、その能力値の半分とその特殊効果をすべて吸収する。このカードの発動が成功するたびにフォースレベルが上がり、3まで達した時、リリーシャは進化する。この操作はサマナースペルで代用できる。
しん……か? おや!? リリーシャのようすが……! おめでとう! リリーシャはギガリリーシャに進化した!!
ってんなわけあるか!!
でも……つまりは……どういうことなんだ?
だが前半の説明。これは相当強い。リリーシャがもともと弱いのはこれで強化していって初めてその真価を発揮するということの裏返しなのか。
フォースレベルと言う言葉がある。これはフォース時だけ出現するものか? リリーシャのカードの横についているLVとは違うものなのだろうか。
実は今日リリーシャにサマナースペルのレベルアップとレベルダウンを試してみた。
だがエラーが出て失敗した。だけどこのテキスト通りなら俺はサマナースペルでリリーシャのフォースレベルを操作出来るということなのだろうか。
いずれにしろ試してみないことにはわからない。
だが、このカード。強い。何より夢がある。ゴブリンを3体まで効果と能力を吸収させられる。
それは即ち、攻撃や防御、はたまた回復だってさせることができるということだ。
これは断然たのしくなってきた。リリーシャをどんどん強くしたいという欲望が湧いてくるのだ。
そして進化というのも楽しみ。これを使いこなせればこの森脱出も夢じゃない!!
「今日はもう寝ようぜ。部屋はたくさんあるんだ。リリーシャはどこにする?」
「え?」
リリーシャは途端に呆けた顔になった。
「いや、え? じゃないけど。別々で寝たほうがベッドスペースが広くとれて寝やすいだろ?」
「は?」
「んじゃ俺は先に寝るからな!」
と部屋に入ろうとしたところで腕を掴まれた。くっ。
「もしかして……1人で寝ようとしているんですか?」
「え、いやだって」
「ギルティです。マスター! こんなことがまかり通っていいんですか!?」
「まかりとおるも何もこれが普通だし」
「わたしたちは一緒に寝ないといけない運命なんですよ!?」
「なにそれこわい」
「それにわたしマスターの腕がないと眠れないんです」
「まだ一回しか一緒に寝てないけど!?」
「とにかく! 今日も一緒に寝ましょう!! 布団ですよ! 布団! 枕投げですよ!」
「いや2人で枕投げって……」
そうしているうちにも俺は連行されてベッドの上だ。
あぁ~。柔らかい布団きもちいい~。
よし寝よう。おいそこ!! 俺の腕で遊ぶな! 挟むな!! やめろ!!
ぐー。




