3話―③―予感
「はぁ……。終わった……」
そう認識した瞬間。どっと疲れた。でも俺は同時に興奮していた。
これが俺の力……カードゲームの力。好きなカードゲームでこの凶暴な世界で戦っていけるなんて……なんて最高なんだ。あの時はあぶなくて怖かったけど。でも俺は充実していた。俺はこの戦いの一瞬一瞬を楽しんでいたんだ。今もまだ心が震えている。
カードをリセットし、戦利品を回収していく。
[ユニットカード]
名 前:ゴブリンリーダー
コスト:3
攻撃力:500
防御力:500
【効果】デッキに存在するゴブリンを2枚まで召喚できる。20秒に一度、墓地エリアからゴブリンと名のつくカードを1枚手札に加えることができる。
はぁあああ!? つんよ! ゴブリンだけだけどデッキからの多重召喚に墓地エリアから手札への回収。そもそもデッキからってがやばい。ただこの場合ゴブリンを増やさないといけないのがネックか。デッキからのみなので全部墓地エリアや手札に来ていたらこの効果は発動しない。デッキ構築がむずかしくなるな。
もう一つの回収。これもたいがいだ。定期的に発動出来る割に手札の補充。この場合ガードナーのコストとしてまた墓地エリアに送ってもまた回収出来るわけだ。永久機関!? イエス!! 何より、唯一のゴブリンプリーストのデメリットだった墓地エリアからの蘇生ができないという制限。これをかなり軽減できること。さらにこれを複数枚持っているときは……。もう想像するだけでよだれがどばーって出そうになる。
「カードの入手を確認。サマナーレベルが2から3に上昇しました」
お、まじ? やった。ってよく考えればリーダーゲットしてもレベル3ないと召喚できないんだったぜ。あぶなかった。
「サマナースペルはなにか増えてるか?」
「新しいスペルがアンロックされています。モニターにてご確認ください」
まじかよワクワクしてきた!!
早速メニューからサマナースペル一覧を呼び出す。
[サマナースペル]
名 前:レイズテッド
コスト:0
【効果】手札を2枚墓地エリアへ送ることでそこに存在するユニットを1体蘇生召喚する。ただし蘇生できるのはカードのみであり、コストとして捨てられたカードはこの効果の蘇生対象とすることができない。
[サマナースペル]
名 前:アナライズ
コスト:1
【効果】対象物の詳細を知る。
[サマナースペル]
名 前:レベルアップ
コスト:1
【効果】レベルとつくユニットが場に存在する場合、そのレベルを強制的に上げることができる。
[サマナースペル]
名 前:レベルダウン
コスト:1
【効果】レベルとつくユニットが場に存在する場合、そのレベルを強制的に下げることができる。
[サマナースペル]
名 前:バリア
コスト:2
【効果】前方にダメージを吸収する障壁を展開する。この時、障壁のダメージ許容量は500にサマナーレベル×100ポイントを加えた数になる。この値はサマナーの防御力計算後に減少する。
[サマナースペル]
名 前:ヒール
コスト:3
【効果】味方1体をサマナーレベル×100ポイント回復する。
きたあああ! ヒール! 回復魔法だ! コスト3もかかるけどでも回復魔法というものを使ってみたかったんだよね!
それにしてもサマナースペルはやけに補助系が多い気がする。カードを使用しない代わりに直接的な被害は与えられないけど、その代わりに攻撃はちゃんとスペルカードを使えってことなのかもしれない。わかりやすくていいんじゃない? あくまでもカード運用がメインなんだし。
っといかんいかん。さっさとカードを回収しないと見つかりにくくなるかもしれんぞ!
俺は12枚のカードを無事回収したあと、先生方を呼び出して新しい寝床を探してもらい、そこで遅めの朝ごはんを食べた。
そして俺はデッキを組む。
リーダーが加わったことでゴブリンの量を増やさないといけないのだ。
他のゴブリンを減らして調整。まだリーダーは1体なのでそこまでの変更はしないけども。
俺は今日の狩りは、主にリーダーを狙うことに決めた。
今までリーダーは集団戦への気後れで意図的に避けていたが、さっきの戦いでやっていけると判断したし、野良の森でうろついてるリーダーの取り巻きは精々4、5体なのでそこまで怖がる必要性もなかった。
リーダーは強い、複数枚手に入ればかなりデッキの増強になる。それにSPの溜まりももっとよくなるだろう。
その時はまたデッキ調整をしよう。
よし、ひとまずはこれでよし、と。さっそくいくか。
外へ出ると、丁度正午なのか、真上に日が登っていて木漏れ日が差し照来る。
ゆらゆら風で揺れる木の葉が軽い音をたて、住処(洞窟)近くの川からのせせらぎの音色もまじって心を和ませた。気温は春なのか丁度よく、自ずと気分を高めてくれる。うむ。この森はなかなかに風情があって大変よろしいですな。
おやじみたいなことを思っていると突然、悲鳴が聞こえてきた。この近くだ。声が甲高かったので女性のものだろう。
すぐさまに体を動かして声の方向に向かって走って行く。
すこしすると俺はその声の主を見つけることができた。
その人は俺と同じくらいの歳に見える女の子だった。恐ろしく整った顔と真っ白な髪、透き通るような青い瞳、そして大きな胸が印象的だ。
その彼女は地面にへたり込んでおり、今まさに複数のゴブリンに棍棒で攻撃されようとしている時だった。
――特に理由はなかった。だけど気づいた時、俺は既に彼女とゴブリンの間に割って入っていたのだった。




