3話―①―サマナーVSゴブリンリーダー
「ルカ。ドローだ!」
カードスロットから出てくる5枚のカードを手札に加える。
ユニットカードだけだ。
マナは5。何を召喚するべきか。まずは相手の戦力を見きわねばならない。
中は薄暗く殆ど見えない。入り口からわずかに光が漏れ出てくるが全然足りない。
だが問題ない。俺はバーチャルモニター越しに入り口を見る。
そう、問題なく見えるのだ。
相手の戦力はこうだ。
ゴブリンリーダー。
ゴブリンソルジャー×2。
ゴブリンガードナー×2。
ゴブリンプリースト×2。
ゴブリンメイジ。
ゴブリン×4。
総勢12体だ。こんなに連れてきちまいやがって……。
いや待てよ、なんだこれ!
[モンスター(小型)]
名 前:ゴブリンソルジャー
H P:400/400
攻撃力:1500
防御力:400
[モンスター(小型)]
名 前:ゴブリンガードナー
H P:600/600
攻撃力:300
防御力:1100
1500!? あぁ、そうか。カードにもこの効果は書いてあった。
ゴブリンは集団だとより強くなる性質があるんだった。
これは敵もつけてくるのかよ。待てよ相手は12体。効果通りなら1700になるんじゃないのか?
ひょっとしてあちらの上昇効果もこちらと同じように計算されるのは10体までということになってるんじゃないか。
それは朗報ではあるが1500もあるということに変わりはない。
こちらもソルジャーは持っているが1500に達するには召喚の上限である10体をすべてゴブリンで埋め尽くさなければならない。それをするのにどれだけ時間がかかるんだ?
くそっ。どう対抗すればいい。
とりあえず今は守りを敷かなければならない。こんなに大量のゴブリンに殴られたら俺のHP2000なんて一瞬で消えてしまう。
「サモン! ゴブリンガードナー、ゴブリンメイジ!」
2体のゴブリンが現れ、火の玉が放たれる。
「ソルジャーだ!」
って俺が対象を指定すると火の玉が急な進路転換を始めソルジャーの一体に当たった。
[モンスター(小型)]
名 前:ゴブリンソルジャー
H P:300/400
攻撃力:1500
防御力:400
100ダメージ。1500の攻撃力あるソルジャーは一番脅威だ。こうしてすこしでもダメージを与えておきたい。
だが、次の瞬間には彼のHPは回復を始めていた。そうだった。あちらにはプリーストがいたんだ。
「アイツ、タオセ!」
リーダーが声を上げると、ぞろぞろと動き始める。くそっ。こんなん反則だろ! いじめはよくないってママに教わらなかったのかよ!
マナが1回復し4になった。さっきメイジ召喚して2回復している。これでまた召喚できる。どうするか。
メイジを召喚してダメージを与えても意味が無い。プリーストが回復してしまうからだ。プリーストなら倒せるか?
敵の数は減らしたいし頭数増やして時間稼ぎもしたい。
「サモン! ゴブリンかける2! ゴブリンメイジ!」
メイジが現れると火の玉が出る。今度はゴブリンプリーストを指定する。被弾確認。だがやはり回復が始まってしまう。
「メイジはゴブリンプリーストを攻撃! 他はメイジの援護だ!」
メイジがゴブリンプリーストに向かってファイアボールを放った。だけどそれはガードナーの盾に阻まれる。
200のダメージが入るがプリーストに回復されている。敵のソルジャーがメイジを狙う。そこでガードナーは前のように盾を叩き、挑発する。ソルジャーはそちらに意識を変えるとリーダーが一喝。
「メイジ! コウゲキ!」
するとソルジャーはメイジに向かっていった。これはきつい。リーダーがいると連携がよくなるのか。鬱陶しい。
メイジを攻撃しようとするが、そこをガードナーが間を割って入った。大きな盾がメイジの前に佇む。しかしそれを剣でひとなぎ、大きな剣痕を残して破壊されてしまった。
さすが攻撃力1500。ガードナー防御力850、HP600が一瞬で……。
これなら1枚手札を消費して効果で無効化したほうがよかったか? だが同じことだ。位置につけば一秒に一回は攻撃できるし。
守備の要ガードナーを失ったゴブリン隊はもはや絶望しか残されていなかった。
ゴブリン対ゴブリンの戦いは互角だったが、メイジやリーダーの攻撃があたってあっけなく終了。
メイジもソルジャー2体にやられてしまう。
全滅。
敵のゴブリンリーダーが勝ちを確信して笑った。
ちくしょう。どうする。
HP2000防御力200はソルジャー2発で沈むぞ。
手札は戦闘中にドローしたゴブリンメイジとゴブリンのみ。望みはこのドローだけだ。だが俺はこんなところで負けられない! まだまだカードを集め足りない! 俺の力はこんなものじゃないはずだ!
目をつむり大きく深呼吸して、俺は――スロットから出ているカードを手にとった。
ニヤリ。リーダーが先ほどしたように、俺は大きく破顔した。
「この戦い、まだまだ楽しめそうだ」
「オマエ、シヌ、オレノ、カチ!」
「いや、それはどうかな。お前はサマナーの魔法――見たことがあるか?」
「ヤレ! タタキツブセ!」
12体のゴブリンが迫るが、俺は気にせず先ほど引いたカードを頭上に掲げた。
そして、宣言するのだ。
「スペルカード発動、竜巻!」
モニターにカードの詳細が映し出される。
「手札を1枚、ゴブリンを墓地エリアに送り、このカードの効果を発動する!」
デバイスが輝き、足元に空気の渦が発生し始める。
「敵に600ポイントの範囲魔法ダメージを与える!」
瞬間、洞窟が爆裂して、石塊と化し、敵ゴブリンとともに突如発生した竜巻に飲まれていった。




