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「あのね、僕。君に興味があるんだ」


雪くんは一言目にそう言った。

えっとですね……、雪くん? 私のいた時代にはですね、その……。男同士の行き過ぎた友情が1部のご令嬢、ご婦人に流行っていた訳ですよ。ね?

ま、まさか……。雪くんは違うよな?

あまり、人と喋らないから誤解を招くような言葉になってしまっただけだよな?

内心、大パニック状態です、正直。


「君は優秀な人間だ。

しかし、今は兄の方が優秀だ。

だけど、それは勉強し始めた期間がまだ浅いからで、時期に君は兄を追い抜かすだろう。

君の兄はきっと、自分の才能に酔いしれて、努力しなくなるだろうからね。だけど、きっと周りの大人は君の兄の容姿がいいからと言って、兄の方を課題評価するだろうね。君の方が優秀なのに正当な評価をされない、容姿が平凡だからそんなくだらない理由で。

それが君が才能を貰った代償で、容姿の良さと知能の才能を貰った兄の代償は、ちやほやされた後にドン底に突き落とされると言うこと。

君は今、理不尽に耐えている。

そんな君に僕は興味を抱いた」


ああ、びっくりした。後で、影響力が強いんだから、言葉は選びなさいと言っておかなくては。いつ、彼女らが現れるかはわからない。

美人であるから特に。

私は、最初の一言目である「君に興味があるんだ」の言葉の理由が聞けて一安心した。


正解だった。

あんな公の場で話し合わなくて。

そう考えているうちにも、雪くんの話は止まらない。珍しい、私以外と長く会話するのは。


「だから、哉太くんに僕の友人になって欲しいと思った、人に傷つけられることがどんなに苦しい気持ちなのかを良くわかっている君に。

だから、僕の支えになって欲しいと思ったんだ。ここには月穂以外誰もいない、見ての通り月穂はこの話を断ったところで君を責めることを考えもしない真っ直ぐな人なの。だからさ、正直に聞かせて欲しいんだ。

僕の友人になってくれない?」


ああ、ひやひやした……。

あの妖しげな微笑みを浮かべないか。

あれは一種の恐怖感を与えるからな。

背景が彼岸花が咲いて見えるとか、そんな幻聴を見させられるし、それに口元だけ笑うあの笑みも怖い。その笑みを浮かべた瞬間、雪くんの色素の薄い唇が、まるで真っ赤な紅を塗ったかのように赤く染まるから。

子供とは思えない妖艶さを持つからこそ、雪くんを時々怖いと感じる。怖いけどそれでも側にいたいの、それを望まれても望まれなくても。


まあ、ここで東雲さんに断られたとしてもだ、私が雪くんの側にいるのは変わらないのだから。

東雲さんに断られても、私は引き止めず慰めるだけ。……「あなたには私がいるから」と。

それでも諦められないなら、私は雪くんに協力して、東雲さんと親密を深めるだけのこと。

雪くんの言う通り、身分の差を気にするならしょうがないって受け入れる他ないのだ。


無理矢理命令して、友人にして、権力を使って手に入れたその友情は本物と言えるのか?

脅しで手に入れた気持ちを本心とは言わないし、友情とは強制するものではない。

それを雪くんにして喜ばれるのか?

いいや、喜ばれない。

少し考えたらわかることだろう?

そんなことを考えていると、今まで黙っていた東雲さんがやっと口を開いた。


「僕は、堂々としているあなた達がかっこいいって思った。月穂様はイメージとは違ったけど、男前で雪夜様を本当に大切されてるんだと感じる。

雪夜様は、社交場ではクールな感じだったけれど、本当は優しい方だって知れて嬉しかった。

こちらこそ、友人として仲良く出来たらなとそう思います。よろしく、お願いします」


おどおどとした態度を見せながらも、東雲さんははっきりとした口調でそう話してくれた。

あっさりと友人関係を築くことを了承してくれた東雲さんの態度に私は呆気に取られた。

だけど、雪くんが嬉しそうにしているから何かを言うなんて野暮だと私は口を閉ざした。

東雲さんはきっと、雪くんの限りなく味方に近い存在でいてくれるだろう。

次は、塩原希一の方だ。

彼は、直接屋敷に招くことにしよう。



葉月家の一人として、雪くんが呼ばれ、個室に私と東雲さんと二人っきりになった時。

彼は、私にこう聞いてきた。


「どうして、水月さんは公の場では自分を偽ったりするのですか?」


その答えは一目瞭然。


「それは私が令嬢だからだ。

水月家の人間として、立ち振る舞いは重要なものだ。だから、公の場ではこう立ち振る舞う訳にもいかない。それが、私情を挟まないと言うことだと思うから」


建前がなきゃ、隠してなんかいない。

それに、私の態度によって評価が変わるのは水月家だけではなく、葉月家の方もである。

意地でも、隠して見せる。

……全ては雪くんのために……。

私のためにも、隠して見せる。

信頼出来る人以外には。


「……そうですか……」


表情を暗くさせる東雲さん。

私はまだ、わかってなかった。

……東雲さんに雪くんが興味を持った本当の理由を、意味を……。









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