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前半三人称、後半は主人公視点です。
次回からまた主人公視点に戻ります。
「許可する」
暗殺者は唖然とした。
見た目とは裏腹に、男前な言葉遣いをするもんだから、側にいた男にされるがまま、怪我した箇所を触れられていれば、超能力を使うことなく、男は触れることをやめ……。
「噂通りのようです」
そう、主人に告げれば、
「そう。秋葉に告げないまま、保護する。秋葉は1度でも敵対関係になればそいつは一生敵だと判断する。だから、安心して雪くんの元へと行かせられる。だけど、この人にとっては危険人物に変わりはない。使用人にも内密にことを進めるぞ、理玖」
淡々と、理玖と呼ばれた男に指示を飛ばすその主人に対して、暗殺者は感心をした。
……その年でそこまでの才能があるとは大したもんだ……。それに、秋葉と呼ばれる従者の危険性をに気づいている時点で、一暗殺者でしかない俺のシナリオなど手の上で転がせるくらい簡単に見抜けるわな。
そう考える暗殺者は、もう煮るなり焼くなりお好きにどーぞと言えるくらい、降参状態だった。逃げ出すシナリオなど考えられないくらい、お手上げ状態でもあった。
「俺をどうするつもりだ、水月家のお姫様。俺は化け物だぞ」
暗殺者は嫌味を含めた言い方でそう言い放てば、彼女は、
「皆、私を姫扱いをする。だが、私にはただ護られるだけのお姫様は似合わない。いや、私がそれを望んでない。だから、私はそれだけを望むものを側にはおかない。
私は自分の足で会いに来た。私はあなたを探してたから。殺すためじゃない、誰かをなるべく一人にしないために、涙を流す時に支えてくれる人が側にいてもらうために。
大丈夫、秋葉の手の届かないところに行かせてあげる。私はね、お祖父様のお話相手を探していたんだ。あの人もある意味、不老不死だからな。できるだけ長く生きられる君を探してた。
私は普通の人よりは長生きをするし、見た目も妖の影響から老けない。それを知ったら、誰かは羨み、誰かは化け物扱いをするだろう。そうされる苦しみはとても強いものだから、1人では抱えきれないけど、誰か1人私を愛してくれる人がいるのなら、その人が支えてくれるならきっと耐え切ることが出来る。
だから、あなたに側にいてほしい。孤独の苦味を知るあなたならきっとお祖父様を幸せにしてくれるはず。お祖父様ならあなたの力には負けないから、あなたは誰も傷つけなくて済む。……それに、秋葉に狙われない」
嫌味だと分かりながらも、彼女は丁寧に暗殺者に目的を話した。包み隠さず。
……勘弁してくれよ……、期待しちまうじゃねーか……。期待すればするほど、裏切られた時の痛みは辛いのに。
……俺も人間なんだなぁ……。
暗殺者はただただ静かに涙を流した。
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「あの涙、見たか」
私は静かに陸に聞いた。
彼、暗殺者の弥太郎は、突然の訪問+側においてほしいと突き出した弥太郎の存在に驚くお祖父様の元へとおいてきた。
最初は私の部下に、とそう考えていた。
だが、死を経験したことのある私は、同時に大切な誰かを悲しい思いをさせたことがあると言うことだ。
彼はその、大切な誰かにおいていかれてばかり体験をしている。
そしてお祖父様も、雪くんのお祖父様もそうだ。
私は弥太郎より早く死ぬだろう。他の人と比べたら長生きをするかもしれんが、それは弥太郎より苦しめることになるだろうと思う。
側にいる時間が長いからこそ、依存をし、おいていかれた側を苦しめる。
例え、生きていた時間が短くとも、愛が深ければ、依存し、苦しめる。
「綺麗な涙だったな」




