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今回は主人公視点ではありません。



「あの家の奴らは普通じゃない!」



浅い傷だらけになった男はそう叫ぶ。

男は命をかけて逃げてきたと言うのに、あの家の奴らと呼ばれた使用人達はその男を後追いせず、何もなかったかのように、仕事がまだ終わってないのに……と愚痴をこぼして屋敷へと戻って行く。


……たかが、使用人に本業の分野で負けたと言うのか……と男は逃げながら悔し涙を流しながら必死に逃げた。水月家の人間には手を出してはいけないと言われている理由がわかった、水月家の人間にとっては暗殺者を逃しても余裕でいられるくらい、洗練された強者たちが集まっているから。


本当に強い者の側には強い者が集まるのだと、思い知らされたような気がした暗殺者は痛みに耐えながら、雇い主の元へと走るが……。

偶然耳にした噂話に暗殺者は絶望した。


……雇い主がした悪事、そして水月家の人間を暗殺しようとしていた事実が世間にバレ、雇い主が逮捕されていたから。


暗殺者は察した。

……これが、水月家の人間には手を出してはいけない理由だと。

そう察した瞬間、苦しくはないが、首を絞めるように触れる手の温もりに暗殺者は一気に冷や汗を掻いていた。




殺意に慣れている暗殺者さえ、恐怖に感じるほどの止まることのない強い殺意。




……ああ、殺される……。




巷では腕っ節が強いと有名な暗殺者さえ恐怖を抱き、死ぬんじゃないかと感じるほどの殺意は静まることはないまま、



「ねえ、君? 月穂様に手を出そうとした罪は重いよ? 君は無知なのかな、月穂様に手を出そうとした者は消されてしまうと腕っ節が強いと有名なんだから知ってたでしょ? ああ、もしかして自分は強いって根拠のない自信が邪魔してこの依頼を受けちゃったかな?

愚かだね、バカだね、水月家は確かに政治界で力を持っているわけじゃないけどさ、経済界では重鎮と呼ばれても過言ではないくらいに力を持っている家系だ。そんな家系なのに、使用人が武術使えないとでも思ってるなんて浅はかだよ。それにね、暗殺者の考えることを理解するためには相手の知識を吸収するのも大事だよね? 水月家には、暗殺者として教育されている子達はいるよ? 君と同等か、それ以上の力を持つ子達がここで働いているんだ。

……運が悪かったね、敵が水月家だったら君達はほとんどの確率で僕らには敵わないのだから。不憫だよね」


不憫だよねと言い終わった後、暗殺者は崩れ落ちるように地面へと倒れこんだ。


その姿を見て、


「君がいけないんだよ? 僕らの大切なご主人に手を出そうとするから。

水月家には侵入しちゃダメだよ、ああ今更だよね。こんな忠告。

水月家はね、ただの大企業じゃないから

守秘義務はたくさんあるんだよねー。だからさ、申し訳ないけど、君を生きて返せないから。ああ、事後報告だったね、ごめんね?」


無表情でそう暗殺者に話しかけた後、


「そろそろ行かなきゃ、雪夜様に抜け出したことバレちゃうからもう行くね」


雪夜の付き人である秋葉は、歪んだような笑顔を暗殺者に向けて作った後、何事もなかったかのように雪夜の元へと去って行った。




それから数時間後。

ぴくりとも動かなかったはずの暗殺者はむくりと起き上がったのだ。

首を鳴らしながら、痛みに耐えるような顔をしながら懐からタバコを取り出し、まるで義務かのように吸って、煙を吐き出した。


「ま、俺も普通の人間じゃねーから人のこと言えねーけどさ、さっきの奴月穂様とやらに依存しすぎてんな……。何かが壊れたら、愛情の裏返しで月穂様とやらも殺しかねないし、やばくね?

あー、久しぶりに走馬灯見えたわ。まじでどんな秘密を水月家隠してんだろーな……。引き際はわかってる、これは手を出さないほうが良い案件なんだろう。俺も若くないし、非凡な血を引く奴らに関わりたくなんかねーよ。

ったく、不老不死とは言え、死にかけたら痛いもんは痛いんだっつーの!」


そう呟いた後、ピンッとタバコを指で弾いた瞬間……、まるで最初からなかったかのようにタバコは消え、暗殺者は大きくため息をついた。


その時だった。


「姫、暗殺者の方生きてらっしゃったみたいですよ! 秋葉は容赦ありませんからね……、殺めてないか心配でしたけど大丈夫そう……って!

首絞められてるじゃないですか! 生きてるなら、骨折していてもおかしくはありません! 月穂様、憑依の力の使用許可を」


そんな声が暗殺者の耳に届き、殺される可能性があり、狙われていた当本人が来るなんて……と呆然と暗殺者は立ち尽くしていた。

逃げることだって出来たはずだ。

だけど、暗殺者は逃げるなんてことは無駄なような気がしてならない。


きっと、水月家から死なない限り逃げられないと感じたからである。


……暗殺者が不老不死体質である限り、水月家からは本当の意味で逃げることは出来ないと気づいてしまったから。






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