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あの方に恋をした時、私は今と違って従者として生きていたから、私にはわかる。今の私はお嬢様の立場であり、恋をした相手は、世間では秘書であるが、役目を見たら従者だ。

私が例え、この計画の結末を迎えた時、父上にこの恋を認めてもらえるかどうかはその時になってみなければわからないのだから、この恋に希望を持てるかと言われれば、「出来る」とは断言は出来ない。

今の私は、理玖と2人っきりになってしまえばこんなに弱くなってしまう。恋をしなければ、私は躊躇いもなくこの計画を進められたのに……、今の私はためらう気持ちを抱いている。


なんて、今の自分は精神的に不安定なんだろうとそう思う。

この計画を進めるために強気に出たり、進めることを躊躇ったり……と、こんな様子じゃ、部下達にも影響が出てしまうじゃないか。


私には部下がいる。

お嬢様だからしょうがないでしょ、と自分の立場を言い訳にして、自分が望んで協力してもらっている計画で躊躇い、計画を狂わせる訳にはいかないのだ。私は上司であり、部下を路頭に迷わす訳にはいかないんだ。


だから、今更ながら、恋をすると言うことの恐ろしさを知った。

こんなにも、恋をすると言うことは人を弱くさせるものなんだと。

こんなにも、恋をすると言うことは人を変えてしまうこともあるんだと言うことを。

こんなにも、恋をすると言うことは、その相手だけのことに夢中にさせてしまうんだと言うことを、私は今世で始めて知った。


……恋をしなければ良かった……。


そしたら、私以外に理玖が仕えてしても何とも思わなかったのかな?

……苦しいと思わなかったのかな?

その人の元で頑張れよって、素直に応援することが出来たのかな……?


苦しい、苦しいよ……。

好きなのに、好きと言えない。

なら、……雪くんを好きだと勘違いしたままの方が幸せだったのかな……?


そう考えながら私は、


「理玖……。っ⁈」


理玖の名前を呼んだ。

……もし、私が水月でなくなった時は好きなところに行けばいいと言おうと思って。……思ったのに、言わせてはくれなかった。


……理玖は、私が言おうとしていたことを察したかのように、見たこともないくらいにとても怖い顔をしていたから、言えなかった。


……いや、言わせてくれなかった。


私がいることを確認するかのように、私の頬を撫でるように触れて、その触れるては優しくとも、表情は怖いまま。

手足は自由だから、逃げようと思えば逃げられるはずなのに、逃げられなくて。


その時、逃げていれば良かった。

気がついたら理玖に抱きしめられていて。


「私は言ったはずです、私の主人はあなた1人だと。あなたがいる場所こそ、私が行きたいと望む場所です。あなたが給金が払えなくなったら、正当な手段を使って、私があなたを養います。そこまでしても、私はあなたの側にいたい。あなたが笑っている姿を見ていたいのです。

あなたが満足するまで、納得するまで言いましょう。私はあなたのために生きています、あなたが側にいなければ生きていないのも同然。言ったでしょう、あなたが私を側にいることを望む限りはあなたの側にいます」


理玖は私を抱きしめる腕を緩め、また私の存在を確かめるように、撫でるように頬を触れる。

そんな動作に、ドキリとさせられた。

彼は年下なはずなのに、触れる動作はとても大人っぽくて……、緊張から声が出なかった。


理玖はそんな私の様子でもお構い無しに、


「あなたがこの計画を成功させた時、私は従者としてではなく、あなたの恋人の座を奪いにいきますので、覚悟しておいてください。

私はもう我慢しません。

私はあなたに始めて会った時から、あなたのことが好きだったから、従者でも良いからあなたの側にいたかった。自分に自信は持てないけれど、あなたを好きだと言う気持ちは先輩にも負けません」


私が言おうか言わまいか迷っていた言葉を、理玖は迷いなく断言して見せた。





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