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ハレユキ!  作者: 滝川なち
第1章
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第2話 「俺が、変えてやる!」

朝。

白雪は窓から差し込む淡い光で目が覚めた。目覚まし時計の針は5時を指しており、起きる予定より1時間も早かった。不思議と眠気も感じず、二度寝をすることはやめ、寝巻きにカーディガンを羽織る。

階段を降りてリビングに行けば、台所から祖母の声がした。


「あら、白雪ちゃん…おはよう」

「おはよう…」


銀髪と白髪が混じる長い髪を後ろで一つに結わえ、少し曲がった背中が特徴的だ。ニコニコと白雪の方を見る祖母に、白雪も微笑みを返す。

しかし、思った以上に笑えていなかったらしい。

俯きがちにカーディガンの裾をいじる。


「ほらほら…可愛い顔が台無しじゃよ…?」


よぼよぼと白雪に近づき、白雪の手を優しく包み込む。


「ありがとう…ちょっと外行ってくるね…」

「ああ…行ってらっしゃい。気をつけてね」


白雪はこくりと頷き、玄関の扉を開けた。入ってきた肌寒い風が、白雪の頬を撫でた。



外は冬を過ぎたと言っても、まだ少しだけ肌寒い。しかし、白雪にとってそれはとても心地の良いものだった。まだ早い時間というのもあり、聞こえるのは森の葉と葉がこすれ合うざわめきの音と、鳥の(さえず)りくらいだった。

再び白雪の頬を冷たい風が撫でる。すーっと深く深呼吸してみる。自然の香りが胸いっぱいに広がり、心が癒される。

白雪は隠れるように森の中にある家から出て、お気に入りの広場に向かった。


開けた場所から、昨日の夜とはまた違う街の景色が見える。

朝のぼやぼやとした空気が街中を包んでいるのがわかる。

広場にあるベンチに腰掛ける。


(今日も、学校…)


少しだけ気が重くなった。

昔から人の多いところは嫌いだった。文香がなんとか助けてくれていたが、それでも…やはり恐い。


(ナグモ…くん)


また彼の姿が浮かぶ。

そしてまた消える。

昨日の夜からそれの繰り返しで、白雪はどこかうわの空だった。

ばれたのが恐いから…あの瞬間のことを思い出すと、今でも胸が苦しくなって息苦しくなる。


白雪ははっとなり、誤魔化すように首を横に振る。

心を落ち着けるためにこの場所に来たのだ。再び大きな深呼吸をする。


だから白雪は気がつかなかった。

近付いてきている存在に。


「はぁ…はぁ、ーーー…え」

バウッバウッ


犬の吠える声に白雪は驚いて、ベンチから立ち上がった。

声のする方を向けば、こちらに向かって走ってくる人影が見える。


そして、見た。

黒い髪、短パンに黒いジャージを着て腕捲りをしている。

真っ黒の二つの目が、驚きに大きく見開かれた。


彼ーーナグモは白雪の姿を見て、足を止めた。

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