終章
エピローグ
「本当にそれで合ってるの?」
リリは腕を組んで、ケンに苦言を呈する。
「んなこと言ったってさー。アッシュの設計図通りにだと、こうなるんだもん」
「ちょっと、僕のせいにしないでよ。僕の設計は完璧のはずなんだから。あとは、技術者次第って事だからね」
「そういうの、自画自賛っていうんだろ?」
このパターンだと、決まってアッシュは得意の溜め息で返すことになる。
「はあ。レンジ、それを言うなら……あ、合ってるな」
それを聞いていたリリが大笑いをして、釣られてみんな笑う。
ここは、ケンの家の庭。地下にある廃材などを持ってきて、ケンの壊れたエア・バイクを修理しているところだ。最近では、よく集まって、それぞれが失ったものを補う手伝いをしている。
「おーい、これ見た? 今日のニュース」
そう言ってかけって来たのはラウ・ジンだ。
あの日、IAAから無事に逃げ出せたケン達は、そのままコア・シティを出た。アッシュが持ち出していた、採血用の道具を使い、無事、アースの無効化を成し遂げた。
ケンとリリのどちらがPPPだったのか、などと言うことは、彼らには興味のないことだった。とにかく、終わらせることが出来れば、それで十分なのだから。
今までと、何も変わらないように見える日々がまた始まった。そのいつも通りの日々こそが、なによりも大切なものだということに、気づくことが出来れば、それが本当に幸せということなのだろう。
ケン達は、その幸せの正体を、忘れることの出来ない経験と共に、知ることになったのだ。きっと、それこそが、選ぶべき道であったに違いない。
「んで、ニュースって何?」
ケンは油で汚れた手のひらを、リリにわざとくっつける振りをして叩かれていた。
ラウ・ジンが、楽しそうな顔を四人向けて言う。
「探査に出ていた衛星が戻ってきたらしくてね、なんと、地球が数百年前程度まで、環境改善したって。人も住めるだろうってさ」
その数年後、緑豊かな地球の地を踏む若者達の写真が、マナ中を沸かせる話題になった。
完
「Gravel─グラヴェル─」を最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。
簡単にこのお話のタイトルについて、ご紹介させていただきます。
このお話は、「道」というものが一つのテーマになっています。
それぞれが進んできた道。それぞれが進んでいく道。
タイトルの「Gravel」という言葉は、「砂利」と言う意味です。
歩きづらいし、砂埃も舞うけれど、足の裏で歩いていることを実感できる砂利道。
舗装された道を進んできた主人公が、そんな砂利道を歩いていくことをイメージしました。
決して特別ではない、いたって普通である主人公に、共感していただけたら嬉しいです。
重ね重ね、お読みいただきましたことを、感謝申しあげます。
ありがとうございました。
りき