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ちっさいおじさんと月の3日間  作者: 早川 りな
ちっさいおじさんの真実
15/20

変身

「さっき、変身できるって言ったよね。あの時は何でちっさいおじさんに変身していたの?」

「僕のマイブーム。それと機能的だったから」

 ヒロはシレっとそんなことを言った。突っ込みどころが満載なんだけど。これは聞かずにはいられない。

「ヒロ、何が機能的なの。それにマイブームって?」

「妖精は何にでも変身できるんだ。ちょっと前はゴキブリに変身してた」

 とんでもないものに変身してるよ。私がちょっと嫌そうな顔をしたけれど、ヒロはそのまま話を続けてた。

「ゴキブリって、隙間、壁、天井、どこでも歩けるし、飛べるから便利なんだ。ただ、よく殺虫剤をかけられそうになって、やめた」

 それは当たり前だ。私だって同じことをする。

「それで他に便利な姿って何かなって考えた時、人のミニチュアだった。最初は、可愛い女の子とか、王子っぽい男の子とかに変身してたんだけど、それもいろいろ問題があってね」

「問題って。おじさんの方が大変そうだけど」

「小さい人の姿だと子供とかに見つかる場合が多いんだ。それでとっさに人形のフリとかするんだけど、子供の人形遊びに付き合わなきゃいけないことが多くて。その点、おじさんだと子供は見向きもしないからね」

「ああ、なるほど。ねえ、人に見つかり過ぎじゃない。もっと上手くやりなよ」

「僕もそう思う。でも、探しものに集中してるとね、他のことを気にすることができなくなるタイプなんだ」

 少し伏し目がちにして照れた顔でちょっと笑った。まつ毛長い。いいな。その長さにするには私はどれだけのマスカラを使えばいいんだろう。

「そんなに見つめられると照れるんだけど」

「あっ、ごめん」

「いや、いいよ。他に質問は」

 ある程度の謎は解けた気がするけど、好奇心で聞きたいことがある。


「何で、日本語が話せるの。妖精の公用語は日本語なの?」

「違うよ。僕は日本で生まれたから日本語なんだ。僕の探しものは日本限定だからね」

「じゃあ、アメリカ生まれの妖精はアメリカ限定で仕事をして、英語をはなすってこと」

「うん、そういうこと。一応、妖精専用の言葉があるから、どの国の妖精とも話せるけどね」

 人間と一緒なんだ、言葉に関しては。人間にも、出身国の言葉と人間語があれば楽なのにな。ちょっと羨ましい、と思った。


「あともう1つっていうか、もう3つか4つくらい聞いてもいい」

「好きなだけ、どうぞ」

 ヒロは私の手をぎゅうと握った。てか、指輪の件からずっと手を握られたままなんだけど。なんか全然気にならなかった。気が付いたら、ちょっと恥ずかしくなってきた。

「どうしたの。顔赤いよ」

「いや、あの手はいつまでこうしてるの」

「う~ん。ずっと。美月の手が好きだから」

 イケメンに好きと言われました。うわ、うわ、うわ。落ち着け私。29歳、それなりに経験してきたでしょ。それに手が好きと言われただけじゃない。そう、そう。

「美月、ますます顔が赤くなったけど大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫。大丈夫だから。じゃあ、次の質問。ちっさいおじさんのときは全くしゃべらなかったのに、なんで今はしゃべれるの?」

「それはサイズの問題。あのサイズだとしゃべっても相手に聞こえないんだ。声が小さいってこと。標準の人のサイズなら声も相手に聞こえるんだ」

「なるほど。納得」

「はい。次の質問どうぞ」


「妖精って瞬間移動できるの?」

「できるよ。妖精だからね」

「ふ~ん。何で、冷蔵庫の中に居たの」

「あれは間違えた。本当はお風呂場に行く予定だった。冷蔵庫の中があまりに寒くて震えてたら、美月が冷蔵庫を開けてくれて助かったよ」

 あれは掃除してたんじゃなくて、震えてたんだ。それにしてもこの妖精、抜けすぎじゃない。そう思ったらまた笑えてきた。

「なんで、笑うんだよ。あの時は、自分でもバカだなって思ったんだから」

 犬みたいなヒロがちょっと強い口調で話すと、男らしさが倍増してる気がして、また顔が赤くなりそうだった。だから、話題を変えた。


「ねえ、最後の質問。休暇はいつまでなの?」

「明日の朝まで」


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