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小種55:価値の変化(ブラック視点)

【with ブラック】

 ―― ……こつ


 重要な仕事。だとは思ったことはなかった。

 種屋は世界に一人しか存在しないけれど、重要な仕事と呼べるようなものがあ

るわけではない。そう、思っていた。


 行うべきものが必要だから在る。ただ、それだけのことだ。


 今もその気持ちはあまり変わらない。

 変わらないけれど、白化をしたときマシロは感嘆の声を上げていた。


 とても、綺麗だと。


 マシロが感極まる理由は分からないけれど、向けられた視線は心地良かった。だから、今は白化の作業が苦にならない。多少、面倒なのに変わりはないけれど。


 持ち寄った者ではなく、いつもマシロが見ていてくれれば良いのに。そうすれば面倒でもきっとなくなる。


 図書館の休日までまだ数日ある。


 どうして、時間の流れだけは正確なのかと、溜息が出た。

 これも、小さな変化。

 月日、ましてや曜日などマシロがこの世界に身を置くようになるまで気にしたことがなかった。


「―― ……おや?」


 空っぽになった種を持って、いつもの場所へと保管しようと立ち上がると外を歩く人影が目に付いた。


 マシロ……と、また、珍しいものを連れている。


 今度は何が起きたのか。

 マシロがいると本当に毎日が平坦では終わらない。同じことを淡々と繰り返し、ただ流れるだけの時間を過ごしているわけにはいかない。

 マシロがこの世界を選び取ってくれる前、マシロが落ちてくる前、自分は何をして時間を費やしていたのか思い出せないほどだ。


 面白い話ではなさそうだけれど、聞かないわけにはいかないだろう。


 こみ上げてきた自嘲的な笑みを零し、とりあえずは、止まってしまっていた作業を続けることにした。

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