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本編:甘い毒、消去部分。

 ***



「あれ? 珍しい、カナイさんプレゼント持って来たんですか?」


 ふらり、と部屋に戻ってきたカナイを迎えたアルファルファは、カナイが手に持っていた赤いリボンの掛かった箱を受け取って、部屋の中央を占領しているテーブルに載せ、勝手にリボンに手を掛けた。

 カナイも特にそれを咎める気もなく「ああ」とだけ頷くと自分の机の椅子を引っ張り出してぐったりと腰を下ろす。


「うわ、しかもケーキだし。美味しそうだけど、どうしたんですか? 食べ物貰うなんて、ほんっとーに珍しい」

「マシロだよ。あいつにさっきそこで渡されたんだ。みんなで食っとけってさ」

「マシロちゃんかー。彼女なら何も考えてなさそうですよね」


 あ、カード入ってますよ。


 とカナイの方へぴんっと弾いて、くすくすと楽しそうに笑うアルファルファに釣られて、カードを受け取ったカナイもだろうなと笑いを零した。


「エミルは何してるんだ? また、何か変な薬作ってるのか?」

「そうじゃないですかね? カナイさんが戻ってから調べ物は再開しようっていってましたから。エミルさん呼んで遠慮なくいただきましょうか?」

「呼ぶならシゼも呼んでやれ。それに、マシロも待った方が良いんじゃないか?」


 カナイさん優しー、とアルファルファに冷やかされつつも蓋は閉じられて、とりあえずはいつもの作業に戻ることにした。


 エミリオの部屋へ行くと、やはり妙な薬の精製中らしく、毒々しい煙と毒々しい匂いが充満していて直ぐにその扉は閉められた。


 そして、薬の精製に失敗したエミリオが合流し夕方までは作業に徹したものの、アルファルファの集中力は切れ、遊び始めてしまったので休憩をとることにした。


「ケーキ、ケーキ食べましょう! 頭を使ったあとは糖分を摂取したほうが良いですよ」


 アルファルファの強引な提案に、苦笑しつつも納得して三人は自室へと戻った。エミリオの部屋の前で挙動不審な少年を発見。

 何をやってるんだろう? と、顔を見合わせた三人はぽんっと少年の肩を叩いた。


「何やってるの? シゼ」


 びくんっと肩を跳ね上げたシルゼハイトは、おどおどと振り返りエミリオの顔を見て視線を彷徨わせた。どうしたのかと尋ねても、いい淀むばかりでよく分からない。


「……まあ、とりあえず。俺らの部屋でお茶にしよう。マシロがお前も一緒にっていってたからな。一緒じゃないとバレたとき怖い気がする」

「マシロ、さん。帰ってますか?」


 いつまでも廊下で立ち尽くしているわけにも行かないだろう、と、提案したカナイの言葉に反応してシルゼハイトはカナイを見上げる。

 シルゼハイトの質問に、いやと首を振ったカナイに尚も戸惑ったようで「僕も一緒って何ですか?」と切り替えた。


「ケーキがあるんだよ。カナイさんが誕生日だからってマシロちゃんたらお金もないのに無理しちゃって」

「いや、それはいったら駄目だろ……」


 あっけらかんと結構酷いことを口にするアルファルファにカナイは、肩を落としたがシルゼハイトは暫し考え込むような感じで「それを、僕も一緒に…?」と呟いたあと意を決したようにエミリオの名前を呼んだ。


「僕の聞き間違いかも知れないのですけど、マシロさん。大聖堂の学生にフルネームを話していました。わざわざ氏を尋ねる学生も妙ですし、偽名だと思いますけど、何か彼女危なっかしくて……もしかしたら」

「うん。間違いなく本名だね」


 シルゼハイトの言葉に深く眉間に皺を刻み、こめかみをぐっと押さえたカナイを他所に、あっさりとエミリオがシルゼハイトの不安を肯定する。


 最初に会ったとき注意したんだけどと苦笑しつつ、仕方ないよねと諦めたように肩を竦めた。


「で、カナイ。マシロはどこまで届け物をしに行ったの? なかなか帰って来ないね」

「聞かなかった」

「そう。それじゃあ、カナイはギルドで依頼内容とマシロの行き先を確認して……多分ある程度距離があるか名前を使われているかだから今日は戻って来ないかも知れないね。アルファは簡易的なもので良いから野営の準備をして。シゼは寮監さんにギルド依頼の消化の為で良いから僕らの外泊許可を申請しておいてくれるかな?」


 エミリオの言葉に三人ともこくりと頷いて動き出した。


 準備を整えて三人が王都を出て随分走ったような気がする。

 街道沿いに真白が歩いているならば、空が茜色に染まる頃には追いつくだろう。そう踏んでいたのに、もう夜の闇が辺りを覆い視界を奪っていく時間になってしまう。


「おかしいな。そろそろ追いついても良いのに」

「もうオーガの夕飯とかになってたらどうしましょう」

「アルファ、お前少し黙ってろ」


 普段はアルファルファのブラックジョークも軽く受け流すものの、今は、そんな余裕もなく怒り露わに胸倉を捕んで凄む。

 アルファルファは特に気にするでもなくその手を弾くと「僕に当たらないでくださいよ」とぼやく。


「マシロちゃんは魔法石を持ってるんですから、もしそうならそれだって砕けているでしょう?砕けたら場所の特定だってカナイさんなら出来るでしょ」

「……二人とも静かに、僕たちにもオーガは用があるようだよ」


 あ、駄洒落じゃないよ。と続けたエミリオも十分に天パっている。


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