第4話 勇者の剣と3代目勇者『魔物』
2代目勇者御一行の冒険が終わり、50年の時が経った。
2代目勇者と魔王の戦いは、最強魔法使い『ユウカ』の魔法により、決着がついたかに見えた。
しかし、魔王は大怪我を負ったものの、倒すことはできずに決着がつかなかった。
そのため、『ユウカ』は、一旦、魔王の力を封印することにした。
しかし、もうすぐ封印が解ける時期である。
そのため、魔界は少しずつ騒がしくなっており、人々に不安が募っていた。
◇
勇者の剣は、2代目勇者との旅を終え、エルフの大樹に奉納されていた。
ある日、エルフの大樹に一匹の魔物が、訪れて来た。
「勇者の剣さん、僕は悪いまものじゃないよ」
勇者の剣は、声の方に視線を向けた。
(視線は向けたと言っても、大樹の中に固定されてるから、最初から見えてるんですけどね!)
拙者は自身にツッコミを入れてると、小学生ぐらいの小さな魔物がこちらを覗く。
魔物といっても、邪悪な雰囲気は感じず、ほんのり1代目勇者を思い出すかのような、優しく温かいオーラを感じた。
「勇者の剣さん、魔物が活発です」
(そうだよな、拙者も感じるよ……ただ、魔物の君にとっては、むしろ朗報ではないのか)
「違います。私は、まものですが、悪いまものではないです」
(そうだよね、悪いまものには見えないね)
「そうなの、だからここに入れたの」
ん?何かおかしい……と不思議に思った。
エルフの大樹には、魔物が入らない特殊な結界が張られている。
「勇者の剣さん、あなたの力を貸してください」
「も、もしかして、拙者の声が聞こえるの?」
ここに魔物が入ってきたのも驚いた。
ただ、それ以上に初めて会話が成立したことに動揺した。
勇者の剣が創られてから、もう100年。
今までずっと孤独を感じていたが、いざ話が通じると何を話せばいいかわからない。
「魔物は、拙者の声が聞こえる力があるのか?」
「いいえ、私のテレパシー能力のおかげだと思います」
どうやら、魔物はテレパシーの能力を使えるらしい。
勇者の剣が、出会った人物の中でも、テレパシー能力を使えた人物は多くいた。
ただ、勇者の剣と会話が出来たものはいなかった。
「このテレパシー能力は、ユウカ様から教わった能力です」
「ユウカ……魔法使いの?」
「はい、ユウカ様が勇者の剣の力を借りるためには、この能力が必要だと」
ユウカは、この魔物にテレパシー能力を教えたようだ。
この魔物にユウカは何故、テレパシー能力を授けたのか。
また、ユウカは、拙者の声が聞こえていたのかの疑問も生まれてきた。
いくつかの疑問が生まれる中、小さな魔物は、話を続けた。
「以前、勇者様に命を救われました。勇者の剣さんも覚えていないですか?」
勇者の剣は、勇者との旅を思い返すと、一つの心当たりを思い出した。
――70年前ぐらいまえの出来事
「ぼ、ぼくも勇者の冒険も連れて行ってください」
勇者御一行と魔物の軍勢は、激しい戦いの末、勇者御一行が勝った。
業火に包まれる魔界は、地獄そのものであった。
しかし、ある小さな魔物は、勇者に命を救われていた。その魔物は戦いを拒み、背中にある剣を抜けずにいた。
「ぼく、強くなりたいんです……勇者のように」
小さな魔物は、勇者の剣技に見とれてしまっていたのだ。
「俺たちは、君と一緒に冒険することはできない。もし生まれ変わったら、君と冒険することを約束しよう」
小さな魔物は瓦礫の中から、勇者に救い出されていた。
何故、勇者が魔物の命を救い出したかは、不明であった。勇者の直感が、この魔物を救い出した方が良いと判断したのだろう。
その場を立ち去る勇者御一行。
「あいつは、きっと強くなるよ……多分、人間界を救ってくれる存在になる」
◇
小さな魔物の話を聞くと、平和のために魔界で戦ってきたようだ。
そのお陰もあり、魔王の復活は遅れていた。
ただ、戦うのが面倒になったので、ササっと魔王を倒してのんびりしたいとのことだ。
なぜ、魔物が魔王を倒そうとしているかは、疑問であった。
だが、1代目勇者が、『人間界を救ってくれる存在になる』と言う言葉と、2代目勇者『ユウカ』が、テレパシーの能力を授けたことに賭けたのであった。
「いいだろう……力を貸してやろう……」
「あ、ありがとうございます。では、こちらへ!」
「ん……」
――勇者の剣は戸惑った。
自らの力では、ここから出ることはできない。
かといって、この魔物にも勇者の力はない。
「あの……勇者が来るまで、ここを出られないんですよ」
勇者の剣は、魔物に現実をたたきつける。
その事実を聞き、小さな魔物はニヤッと笑うと、剣の方に手をかざした。
すると勇者の剣は、光に包まれ、一瞬で小さな魔物の手に渡った。
「あれ、あなた……勇者の資格あるんですね」
「はい、ユウカ様に授けていただきました」
「ユ、ユウカ様強すぎ! もう銅像建てろよ」
「もう建てられていますよ」
勇者の剣は、ユウカの力で都合よく解決することを『どこでもユウカ』名付けた。
その後、勇者の剣と小さな魔物は、魔王を単体で撃破した。




