第3話 魔法使い>2代目勇者
ーー2代目勇者と冒険が10年目を迎えたある日
(なぜ……こうなってしまったのか……)
勇者の剣は突然、闇のオーラに包まれていた。
勇者とは比べ物にならないほどの大きな手で、剣を握る巨大な男。
「これで世界は我のものだ! 震えて眠れ、勇者よ……」
どうやら、勇者の剣は、魔王の手に渡ってしまったようだ。
突然の出来事に、勇者の剣は動揺を隠せなかった。
(せ、拙者の冒険は、ここで終了するの? あまりにも早くない? 小説だったら、数話で連載終了だよ?)
勇者の剣は、勇者が救出してくれることを祈るしかなかった。
しかし、2代目勇者はすごくケチで、頼り甲斐もない。
そもそも、勇者の剣が魔王に渡った原因は、2代目勇者に原因があるのだ。
ーー遡ること数日前
「私たちの冒険が、昨日で10年を迎えた。明日は、魔法城に乗り込む! 各自、回復薬の準備や装備の確認を忘れないように!」
勇者は、勇者御一行に念入りの準備を促す。魔王との最後の戦いを明日に控え、人間界も魔王界にも緊張が走っていた。
しかし、魔法使いのユウカは、危機感を感じていたのだ。
(今のままだと、確実に魔王に勝つ事は厳しい)
ユウカは、勇者御一行の単純な経験不足を懸念していた。
道中で戦う魔物はユウカの魔法で倒し、中ボスやボスと言われそうな魔物に対しても、ユウカの魔法でゴリ押しで倒してきたのだ。
「ゆ、勇者さん……この装備が欲しいです」
ユウカは勇者に魔力を上げるブレスレットが欲しいことを伝えた。
このブレスレットをつけると、魔力が3倍になるという。
「しかし、高いからな……」
「そこをなんとか……お願い!」
ユウカは勇者に必死に交渉する。僧侶のおじいちゃんにもおねだりをするが、あまりにも高い。
勇者は悩んだ果てに決断した。
「よし! 俺に任せておけ」
珍しく勇者が購入することを決意した。
勇者はケチなので、預金があることは、ユウカも知っている。
「いいの? ありがとう!! 勇者さん」
「ちょっと待ってろよー」
そう言うと勇者は、質屋に消えていった。
ーー1時間後
「ユウカ、買って来たぞー!」
そういうと、勇者はユウカにブレスレットを渡した。
今回は前回と違く、ユウカが欲しかったブレスレットであった。
「え、ほ、本物じゃん! ありがとう!!」
ユウカは、まさか要求通りのブレスレットを渡されるとは思わなかった。「どうせ型落ちの買ってくるんだろうな」などと思っていたのだ。
「あ、ありがとう! 勇者さん!」
「あぁ、その代わりに勇者の剣を質屋に出してしまったがなぁ〜」
「うんうん! 勇者の剣をねぇ……ユウシャノケン??」
勇者は、勇者の剣を質屋に売ってお金を調達したのだ。
しかも最悪なことに、その質屋は魔王城最寄りでもあり、買い取られた魔王剣は、すぐ魔王の元へ送られたのだ。
こうして、勇者の剣は魔王の手に渡ったのだ。
「勇者の剣よ……貴様の力を我が物にしてやろう」
そう言うと、魔王は勇者の剣を高く掲げる。魔王は、勇者の剣の力を魔王の剣に取り込もうとしている。魔王の邪悪なオーラが、勇者の剣を包む。
(やめろぉぉぉおおおお!!)
勇者の剣は必死に叫ぶが、届くわけもなく……。
1代目勇者の時も、同じようなことがあった。
魔界盗賊団に不注意で、勇者の剣を盗まれたことがあった。
魔界盗賊団は、魔王の傘下の団であり、盗品を魔王に献上する。
その時の勇者は頼り甲斐があり、魔王の手に渡す前に、剣を奪還してくれたのだ。
しかし、今の勇者は頼り甲斐がなく、もう諦めるしかない。
勇者の剣が魔王の剣になるまであと少し……その時だった!!
「ハイパーファイヤー!」
どこからかともなく、呪文を唱える声が聞こえる。選ばれ様のしか使えない炎の究極呪文『ハイパーファイヤー』、人間で唱えられるものは1人しかいない。
……そう、最強の魔法使い『ユウカ』である。
彼女が放った呪文は、魔王を焼き尽くした。なんと魔王を一撃で倒したのだ。「ば、馬鹿な……この私を一撃で……」魔王は一瞬で生き絶えた。
「ユ、ユウカ? お前の魔力はどうなってるんだ? 魔王を一撃って聞いたことないぞ??」
「私の魔力が、先代勇者の使いのユキ様の2倍と言われて、さっきのブレスレットで3倍、さらに魔力を集中させる特技を使って3倍の威力にしました。つまり、単純計算でユキ様の18倍の威力の技を打ちました」
頼らない勇者に任せられないと思い、ユウカは一撃に全力を注いだのであった。
そして、勇者達は「ユウカだけは怒らせてはいけない」と改めて肝に銘じた。
こうして、2代目勇者御一行は、魔王討伐に成功した。
2代目、本物の勇者は、魔法使い『ユウカ』であった。




