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2章 配”信者”達 03

堤達の住むガジェットカフェ・レナス入るテナントビル・2F御子神スピリチュアル。


「毎度ここに来て思うんだけどさ、スピリチュアルって言いにくくない?」

「あー思う思う。すぴりあるちゅーってアルチュー(アルコール中毒)の一種みたいだよな」

「そんなこと思うのお前だけだよ」

「皆さんなんか・・・色んな事起きてるのにマイペースですよね・・・」

みどりっちが苦笑いしながらに一団から一歩下がった位置にいる。

おおう。ここに来て同類と思われたくないと!?

私はぐいぃいっとみどりっちの腕を無理やり組んだ。

「さぁ行くべし!悪党はそこにいる」

「お前らに言われるのは大概だよ・・・」

モエラが呆れた顔をする。

構うもんか。

こういうのはやったもん勝ちよ!

「ほらバカやってないで行くぞ」

「馬鹿だってぇ?!」

「もういい、モエラ、空いてるか?」

コータローが重厚な調度品に彩られた扉の前にモエラに尋ねた。

「んぁ、あいてねぇ。あのクソ店閉めてんなら看板ぐらい下げろよ」

「しょうがないな、裏の昇降口から行くか・・・百合園さん、そっちに非常口あるでしょ?

そこ開けて、そこから一旦外の階段の方に出て」

「あ、はい。ここですね」

みどりっちは隅の方にある薄っすらと緑の電光板が輝く裏口の扉を恐る恐る開く。

扉を開けると吹き抜けがいいのかひんやりとした空気が突き抜ける。

「・・・・・・・・・・なんか声がする?」

あ、こ、これはまずいパターンかもっ。

「み、みどりっち~こっちっ、こっちきてこれはまずいかもっ」

ヤバい、痴話喧嘩かまたは修羅場かもしくは・・・いたしているわけないよな。

「おっ、なんだ修羅場かぁ~コッソリ覗こうぜ」

「やめとけモエラ、高校生の子もいるんだぞ」

コータローがモエラの腕を掴んで引き離そうとするが好奇心の方が勝っているようだ。

「いいじゃんよ、ちょっとだけ。あ、もしかして既に仲直りしてヤッてる最中とか?!みどりっちカメラ、カメラ用意!」

「え、ええええ、ええええそ、そんな、いや、そのでも、だ、駄目ですよそんなっ、マズいですよぉ」

言いながらショートカットでカメラ起動してんじゃねー!!(しかも動画モード)

「いいから行くよぉ、お、空いてる空いてる。んじゃま、お邪魔ぁ~」

「くらぁーモエラ!(小声)」こらコータロー!

「ヤバいって!(小声)」ヴァかモエラ!

「わ、私が先頭じゃないとモエラさんが邪魔でっ(小声)」みどりっちぃ!

「ちょ、私が覗けないだろっ!(小声)」

全員して何やってんだ・・・。

そろりそろりと扉を開けた先に待ち受けていたのは・・・しかめっ面の御子神さんだった。

「皆さんお揃いで・・・」

「あれっ、御子神さん?や、やだなぁ居たんなら返事してくださいよぉ表から声かけたんですよ」

コータローその言い訳はまずいってっ。

「そうですか?南さん(モエラ)が大切な表扉をゲシゲシ蹴っていた様子しか映っていませんでしたが・・・」

「あ、ああ、防犯カメラ。そ、そりゃそうだなぁーいやぁ参った参った」

コータローがモエラに助けを求める様な目で見つめる。

いや、モエラに求めても駄目でしょうに。

「い、いよぅ、御子神ぃ~ひさしぶりだなぁーまた女にちょっかいかけてんじゃないのかぁ」

モエラっ、そのネタは昨日私がやったっ!

「心配なさらぬとも、行かず後家なあなたにちょっかいなどかけませんから、私にもプライドとォオオオオオオオオオオおおおお!?」

(何事?!)

「ちょっと失礼!」

くぉおおおお!いつもはデレデレになる私を押しのけたぁ!?

「お初にお目にかかりますね・・・ようこそ我スピリチュアルカウンセラーハウス・御子神スピリチュアルへ。

私は当店のカウンセラー兼代表取締役CEO・御子神 台と申しますっ」

「は、はぁ」

何見栄張ってCEOとか、ただの自営業だろう。てか狙いはみどりっちかぁ~!

「大変っ可愛らしいお嬢様っ、素晴らしい。能登さんと同じ制服を着てるところを見ると同級生ですね?

良くいらっしゃいましたっ。私はノートさんの友人でもあるのです、ぜひお近づきにっ

なに、緊張する必要はございませんよ。この御子神、今日の日の事は既に悟っておりました」

血眼になって乳を全力で見てしゃべるなっ!顔を見て喋ろ!てかいつから友人になったっ!?

「あの御子神さん・・・お聞きしたいことが―――」

「あー堤さん、あなたは奥に給湯室がありますので全員のお茶を用意してくださいっ。

私はいつものカモミールプレミアムを、あなた方は適当に、そして彼女はそう、彼女、お名前を?」

みどりっち、ガン無視しろそんな奴ってか全てを悟っていたんじゃないのか。

「え、えっとあの。百合園です。百合園 緑・・・・」

「百合園みどりさんっ!なんて美しい名前なんだ。私は占い師としての側面も持っておりますが、みどりさん。

貴方の姓名判断はかなりいいですよっ」

秒で姓名判断っ!?

「みどりさんは・・・そうですねっ・・・その・・・そんな、16さいで・・・ミルクっ。

むほっ・・・・こんなっ、やだっ、・・・・ほうまんなっ、ミルクがっ、ミルクティー!そう、素晴らしきロイヤルな!ミルクティーを!」

と、言いながら何をトチ狂ったのかみどりっちのブラウスをめくり上げた。

はち切れんばかりのモノをこれでもかと抑え込んでいるあふれんばかりのものを詰め込んだブラがご対面。

「・・・はい?」硬直するみどりっち。

・・・・・・・。

「コータロー?」

「なんだノート?」

「ちょっと御子神ぶっ飛ばしていい?」

「・・・・・・・・・・・・もちろんさぁ!」

コータロー、久しぶりの満面の笑みだなぁーぜったいこいつも見てるな。

「あ、私も加勢するわぁ。こいつの口の中にお茶ッ葉詰めようぜっ!」

久しぶりに切れちまったよ・・・・屋上行こうぜ、屋上、ビルの屋上だけど。


カウンセリング室。

広い円テーブルには人数分のティーカップとお茶請けが並んでおり一同はそれを囲んでさながら座談会のようだった。

若干1名顔がボロボロだが。

「・・・・・・・・ああ、あの人ね。カウンセリング受けてる人、たまに来るのさ」

御子神さんは私の華麗なストレートによって歪められたメガネのフレームを直しながら呟いた。

「JKの乳をガン見した罪はおめーわなぁ~てか堤よ、おめーも見ただろ?同罪だぜ同罪」

「見てない、断じて!」

コータロー、鼻の下伸ばして何言ってんだか・・・しかしモエラが馬鹿みたいにアールグレイに角砂糖を大量に投入している、うぇ~。

「しかし御子神さん、あなたとの付き合いも長いので今回の件は強請りたかりのネタぐらいで留めますけど、

次は問答無用でポリスメンですよ」

「あい・・・ずみません・・・つい、あまりの逸材に・・・」

逸材言うな・・・。

「ま、まあノートのおじさんもいいじゃないですか。こうやって反省してるんだし」

「あっまーーーい!甘いみどりっち!モエラの飲んでるアールグレイ並みに甘ーい!

そうやって甘やかすからすぐ男はつけあがる!一罰百戒!謝罪無双猛省伝!」

折角つかんだ御子神さんの弱み、ここで使わずにいられるかぁ!

「まあいんじゃね?なんでも喋ってくれるみたいだし」

「そ、そう。それに今なら無料カウンセリング券(10万円相当)を持っちろん緑さんにお詫びを兼ねてプレゼントいたします!」

「まあそれはいらないんですけど、そろそろ本題に入りませんか?」

さすがみどりっち、育ちがいい奴は容量もいいわ~ってそりゃ普通か。

「で、そのデブ專・・・失礼。水商売のふくよかな女性はここの常連。

スペードマークのマスクした親父声の男は御客さんにはいないんですね?」

コータローが確認する。

「なんですかそのスペードマスクって・・・だいたい基本的にウチは男性のお客人は少ないのですよ。

それに真理さんとは今日の昼前ほどに予約していたので・・・」

「カウンセリングの内容は?タッチはあり?なし?」

「南さん・・・あのですね。あなたのような品の無い商売とは違うのですよ。守秘義務です、顧客情報は守られてしかりですよ」

「堤~青少年保護育成条例~」

「だーもぉう!さすがにそれは駄目なんですってば!聞き分けてください!」

流石にそこまでの情報は無理か・・・というよりスペードのカメラには何故二人が写っていたんだろう?

私は立ち上がって周りを見渡す。

「御子神さん、店内に防犯カメラはあるの?」

「ないですね。あ、でも今日はネットミーティングで使用したWEBカメラを設置しておりましたね」

「それだ。御子神さん、ちょっとその辺り、詳しく見せてくださいませんか」

「いいですけど・・・あまりプライベートなものまで見せるのはちょっと・・・」

「御子神さん主演の動画に興味はありませんから、早くお願いします」

あ、御子神さんの顔が凍り付いた。

まあそりゃそうだ。データは前に逐一拝見したからね~吐きそうだったけど。

「今日は厄日だ・・・」

立ち上がって御子神さんはよろよろと奥へと消えていった。

「厄日ならご自慢の占いで何とかしろってんだ」

「モエラもたまにはいい事言う」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・どうだ?」

私とコータローがデバイスを御子神さんのノートPCに繋ぎ、データを洗い出す。

「ちょっとふたりとも、なにやってるんですか?何やら見たことないような英単語が沢山、専門用語?

まさか危ない事でもしてるんじゃ」

「まあ、御子神は黙ってろよ。日頃女に危ないことしてるお前じゃあるまいし」

モエラがコータローの肩に持たれながらディスプレイを覗き込む。

「そのさっき話してたネットミーティング、デブ專・・・もとい真理さんは参加してましたか?」

「・・・まあ、御客さんの情報を漏らすのは厳禁ですが・・・ええ、一緒に参加しておりました。

ネットミーティングは私と真理さんを含めて八人で実施しておりました・・・議題は――」

「あ、その辺りは良いです」

ふむ、となるとやはりスペード映像に映っていた二人は一応辻褄は合うのか?

「コータロー、気になるアクセスが二件」

「どれだ?」

「この二つ、一件目はやたらと海外串を入れてアクセスしてるけど

ここからそう遠くない中継地点から直接繋いで接続してる、スゴッ!

もう一件は県総合庁舎から。こいつはIP偽装」

「県庁ですか?私のお客様にはいらっしゃらなかったような気が・・・」

県庁という言葉にみどりっちが肩をピクリとさせて反応する。

「ええっ?!そんな、県庁に悪い人が・・・」

「心配しないでみどりさん、私がいれば不安も心配もいりませんよ」

驚くみどりっちに御子神さんが余計なことを言う。

コータローがその時耳打ちする。

(ミーティング動画はコピッた?)

(もち)

「よし・・・」

コータローは自分で入れた紅茶を一気に飲み干すとおもむろに立ち上がった。

「お邪魔しました御子神さん。何かありましたら、今日は遅くなると思うのですがレナスまで」

「ところであなた達なにか危ない事に首を突っ込んでるのではないのですか?

こんな麗しい緑さんにノート(ついで)まで巻き込んで・・・・昔からあなたという人は」

御子神さん・・・まあ基本悪い人ではないからな、異常性癖はあるけど。

「心配ごめんなさい、御子神さん。詳しくは話せないんですが少し野暮用なんです。

ご迷惑はこれ以上おかけしませんから」

御子神さんは軽くため息をつくと立ち上がり、身なりを整えた。

「まあ、昔からあなた達は暇しませんね・・・また何か聞きたいことがあれば連絡ください・・・

あそうだ緑さん、連絡先っ!」

「ありがとうございましたーさぁ帰るぞぉ!」

全然撤回、こいつに乳のデカい女は厳禁だぁ!


ビルの外、ガジェットカフェ・レナス前にて。

「さてと・・・じゃあノート、行くか?」

「はあ、どこに?」

え、嘘、ま、まさか。

「ネットの中継所まで」

「ええっ―――ま、マジで?!近いとはいえ高速道路で20分ぐらい走る・・・あぁ!いや、あのNで高速乗りたくないっ」

モエラが事情を知ってか笑い声をあげた。

「あれで高速乗ると怖いんだよなぁ、100キロぐらい出しただけでそこいらのジェットコースター超える怖さがあるぜ」

「助手席に乗るとき手前の方見るからだよ、後部座席乗れ」

「ええええーーーそれも嫌だぁ!」

絶対嫌だぁ!小さいころ事故りそうになってトラウマなのにぃ。

「んでっ。もう一つはどうする?私行ってこようか?」

モエラは過去に”仕事”を手伝ってもらったことが数回あるので容量を掴んでいる。

くそ、抜け駆けとはズルい。

「ああそうだな。頼めるか?」

「あ、あの私っ」

その時みどりっちが息巻いて声を上げた。

「私も連れて行ってくださいっ。県庁で悪い人がいるなんて・・・お父さんお母さんが心配でっ」

「みどりっち~大丈夫だってっ。こういうのはウジウジした職場でも目立たない根暗がやってんだから(偏見)」

みどりっちも少し責任感じてんのかなぁ?

「・・・・・手伝ってくれるのかい?」

「コータロー!正気?!」

「百合園さんの両親は県の職員だ、何かあった時の逃げ口上に使える。手伝ってもらえるなら上等じゃないか。

もちろん、バイト代も出そう」

もおおおおおお!バカバカバカ!そうやっていっつも何か巻き込もうとする!

「ええっ?!バイト代なんてそんな」

「貰っとけ貰っとけっ、こんな貧乏人が金くれるなんてめったにないよ~」

「良し決まりだ。じゃあここからは二手に分かれよう。俺とノート、モエラと百合園さんでバディを組んで行動だ。

必ず報告を入れてくれよ。こちらからも連絡する」

「はぁああああああ・・・・」

「ノートちゃん・・・元気出して」

みどりっち・・・ぜったい非日常体験楽しんでるに違いないよ。

こっちは重労働が見え見えなのにぃ。

「よぉおし。じゃあみどりっち、車取りに店まで戻るぞぉ」

「は、はい。よろしくお願いいたします、その南・・・さん?」

「モエラでいいって。んじゃな堤、へまんなぁ!」

モエラに引っ張られるようにみどりっちはいってしまった。

感化されて性格変わらなきゃいいけど。

「んじゃ、俺達も早速行くか?」

「ふぇ?ああ!忘れてたぁ、高速!」

「もう遅い、さぁ俺のNが(限界の)うなりをあげるぜぇ!」

ひぃいいいいいいいいい!


十五分後、高速道路にて。

「ぎぁああああああああああ!ふにゃあああああああああああああ!ご、ごわぃぃぃいいい」

この車、の、板、ドアの、薄板感がぁ!

怖さが倍増するぅ!

すっ、すぴーどめーた~!

ひゃ、ひゃくに、にじゅう!?

「わっふぅ~」

「死ねっ!コータローしねぇ!」

車で吐いたのは久しぶりだ。


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