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2章 配”信者”達 02

映像には四分割でそれぞれ別撮りしていると思われる者が映し出されていた。

左上側がリーダー格なのか一番大きい割合を占めており、そこから下、右、右下と続く。

統一性がないのか利害関係のみ一致しているのか、ただナイトハルトを妄信しているのかは解らないが

それぞれ個性に富んだ風貌でいずれも仮面や兜(と思われるヘルメット)などを被っており

その表情を窺い知ることは出来ないわ。

”今この映像を見ているすべての人間に告ぐ、先程県立右左高校で起きた爆破事件、

これは我らの警告である!”

「この人はちょっとオッサンのような声をしてる、変声機も当ててない。捨て身とか?」

私はふいに思ったことを口にした。

「うーん、どうだろうな。最近はAI音声と人物が別、もしくはその両方が元々フェイクだっていう可能性もある。

あんまり先入観に捕らわれない方がいい」

「コータローはたまに先生のようなものの言い方するね」

「マジか・・・自分じゃ気づかないが、それは俺がそれだけ歳食ったってことなのか」

思わぬ突っ込みに軽いショックを受けて頭を抱えているようだった。

すると映像の他のメンバー、かなり早口の少女のような声の仮面がしゃべりだす。

”いいですこと?!あの爆破は今回人気のない場所で爆破しましたが次はそうはいきませんわ!

もしナイトハルト様を邪魔立てするものが現れたら・・・解りますわね”

”ちょっとちょっと、ハート?ちょっとそれは過激すぎるかなぁ・・・すみませんね皆さん。突然のことで驚いておりますよね。

ご安心ください。実行したものも私達も、あそこに人がいないのを確認したと同時に爆破しました。

犠牲者が出ないことに細心の注意をはらい・・・ね。

ああ申し遅れました・・・私、クローバーと申します。我らナイトハルト様の・・・まあ有志で集まった親衛隊のようなものですね、

国境なき騎士団のネゴシエーターなんかをやらせていただいております”

右下の緑のヘルメットのシルエットが柔らかい物腰で話し出す。

「男・・・だな。かなりの美声だ、いいなぁーなんでこんな羨むような美声の持ち主がテロ行為なんてするんだ?」

モエラがどこから取り出したのかこしあんタイ焼きをかじりながらボヤク。

「そんなのわかんないですよ?声は良いけど蓋を開けたらそりゃ酷いってことに・・・」

「みどりっちそんな経験あんの?」

「あ、あああ、あるわけないじゃないですかぁ!!」

なんだろう、この緊張感の無さ。

私達は今お膝元で行われているであろうテロ行為に戦々恐々としなければならないのに

これではまるで昼下がりの座談会じゃないか。

”―――とはいえ、皆さんもご存じのようにナイトハルト様の活躍は既にあらゆる方面において影響が出ております。

先日では多大な横領事件の主犯格である政治屋のスキャンダルを暴露したのもナイトハルト様・・・

もっと細かいところでは地下アイドルの行き過ぎた実態を白日の下に晒しだし、風紀を取り戻したのもナイトハルト様・・・

もはやナイトハルト様の正義を示す行動は日本にとどまらず、世界にも影響を及ぼしております。”

”そのとーりぃーーー!!”

な、なんだぁー次はずいぶんとドスの聞いた女性の声が聞こえてきたなぁ。

”ナイトハルトはな!正義の味方なんだっ!私達ではどうすることも出来ない権力者どもっ、

上級国民どもの汚い罪をさらけ出してくれる。ならそれを私たちが裁かないでどーするってこと!”

”ダイヤの言う通りですわよ!正義は今私達にあるのですわ!”

ダイヤと言われたおおよそその尖った乳から女性と思われる風貌の者がその胸を張り画面いっぱいに見せつけていた。

「言われてるよみどりっち~」

「け、県の職員は上級国民なんかじゃないですよぉ!」

「自覚はあるんだな・・・」

みどりっちは顔を真っ赤にして不貞腐れている。

イラン事言っちゃったかな。

あ、またリーダー格のおっさんがなんか喋ってる。

”我らは決してナイトハルトと直接関係しているわけではない・・・いわば感銘を受けたものとして支えると誓い、

集い結束した者たち・・・この動きはもはや世界中で始まっている、よもや止められない”

「こいつはきっとスペードだな、やってることはぶっ飛んでいるにもかかわらず考えることは子供じみてんだよなぁ」

コータローは頬杖を突きながら画面を眺め、茶をすする。

すると何かに気が付いたのか、いきなりハッと目を見開き私に詰め寄る。

ち、近いっ!

「ノート!この映像、後で見れるか?」

「TV映像なら公式から野良まであちこちにすぐデータ転がるよっ」

「解った。ちょっと後で確認したいことがある・・・」

(??)

コータローは時々人が変わったかのようになる。

昔からだから違うにしろ更年期とは思いたくない、まあまだ若いし。

”今回はナイトハルト様は少々手こずっておられる様子でしたので話し合って加勢しましたのっ、いいかしら

ナイトハルト様の邪魔をするものは―――あら?”

映像が乱れ始める。

”ふむ・・・どうやら彼の意にそぐわなかったようですね・・・今日はここまでにしましょう”

”それでは諸君、アディオスーーーーーー”

”映像はここで終わっております。専門家の分析では―――”


「こいつらはどうもネット上で有志で集まった連中のようだな。だが見るからにローンウルフに近いものもある、厄介だ」

「ローンウルフってなんですか?」

コータローのぼやきにみどりっちが疑問を投げつける。

「ソロ、一人で思想に駆られたりしてテロする人間を指す。こういう奴は警察が事前に察知するのは極めて困難らしい・・・

お、ノート。そこでストップ。そこから0.5倍再生してみてくれ」

「おおーーん?何にもなさそうなんだけど」

コータローは一人目、スペードが後半喋っているシーンでストップをかけて画面を食い入るように見つめた。

若干ヘルメットがアップされたところで一瞬光が反射する。

「ストップ!拡大して、メットの方」

「顔は映らないんじゃないの?」

「いや、別のもんは映っている!」

私達は全員ノートパソコンのディスプレイを一点に見つめた。

異様だ・・・私達もなんたら騎士団といい勝負かもしれない。

「ああーーーーー、解った!私解っちゃったかも!」

みどりっちが急に声を荒げだす。

「ああ、ハイハイ反射ね。昔あったわ、瞳孔に映っているやつとか」

モエラも正解が解ったのかやれやれといった様子で茶をすする。

「え、なんなの?私解らん・・・」

「ノート、その部分だけトリミングしてAI解析で鮮明化してみろ」

「うーん?」

だめだ、まったくわからん。

この手の方面に詳しいであろう私が解らんのに、疎いであろうモエラとみどりっちは既に正解にだどり着いたという。

ちょっと悔しいってあれ?!これってもしかして。

AIが鮮明化した映像を見て驚いた。

「ひ、人が写ってる!」

光が反射した時に一瞬だけヘルメットに小さく僅かだが人のシルエットが写ったのだ。

「拡大しよう。たぶんこれはスペードの居場所を知るのに重要だ」

「てか堤よ。お前がこれに気が付いたんならサツも百パー気づくんじゃね?」

モエラがそう言ってにやけながらコータローにもたれ掛かる。

おーい、近い!間違っても私はモエラを”お母さん”と呼びたくない!離れろ~

「警察もお役所仕事(遅い)だと信じよう。こいつに近づけば何らかのナイトハルトの情報が得られるのは間違いないはず」

「なんだぁ、ナイトハルトってのはそんなに金になるのかぁ?」

「なるかもしれんな、だがそれよりも心配なのはこいつが俺とノートの素性を掌握しているかもしれない」

「・・・・・・そりゃー笑えんわな」

モエラが真顔に戻る。

そうだ、私達はなんとしてもナイトハルトを阻止しなくちゃならないんだ。

「あ、知ってる・・・私知ってます!この写っている人知ってます!」

みどりっちが興奮した様子で大きすぎる胸を揺らしながら腕を振る。

とりあえず見てる見ないは別にしてコータローの脇腹にフックを入れて悶えたところで誰なのか聞いてみた。


「これ・・・朝の朝礼に映っていたデブ專の女の人ですよ!」

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・。

・・・・・・・・。


「デブ專?なにいってんのみどりっち・・・」

事情を知らないモエラが唖然と口にする。

「あ、ああ私達の学校でちょっとねっ。コータロー、これ、朝送った動画データの奴」

「・・・あああ、わかる、わかるぞ。さらに凄い事にその横の方にもう一人写ってるだろう?ってか何故無意味に脇腹フック?」

身もだえするコータローなど放っておいてさらにデブ專女の横をクローズアップする。

「ええ、ええ、えええ、マジ?マジなの?!」

「し、知り合いなのノートちゃん?」

そこには私が幼少のころからよく知る人物が映し出されていた。

「御子神さんじゃん・・・」

「御子神って堤んところの二階で胡散臭い占いやってる誰彼構わず女にちょっかい出すクズの中のクズか?」

モエラも面識があるのか写っているシルエットを凝視する。

「ヤバいな・・・よってウチから近すぎる。とりあえず御子神さんの所に行くのが最優先か、よし、善は急げだ、とりあえずうちに戻るぞ」

「戻るって戻ってどうするの?」

「本人に直接話を聞く。あと、モエラ。どうせ学校は暫く休校になるから暇だろう?お前も付き合え、人手が欲しい」

モエラはそれを聞いて少しいやらしい顔つきになった。

「バイト代・・・当然出すよな?」

「くっ・・・まあいい。俺とノートの人生が掛かっているんだ」

コータロー、可哀そうに・・・でもハイエンドのグラボは絶対譲らないからね。

「あ、あの私。その、ど、どうしよう」

みどりっちが恐縮そうに私達を見つめる。

どうしようか・・・もはや無関係とはいかないしでもかといって私達の片棒担がせるわけにも。

「百合園さん、暫くノートのそばにいてやってくれないか?ノート不安だと思うんだ」

「!!」

え、私別に不安とかそんな。

「わ、わかりまぁした!頼まれました!ノートちゃん!私が付いてる!な、なんらなお泊りも!」

「いいぃ?!いい!いい!お、お泊りは遠慮します!」

「ビデオカメラどこだっけ?」

「こらモエラぁ!」

大丈夫なのか、これじゃあまるでただの仲良しサークルじゃないか。

人生かかってる一大事だっていうのに。

でもなんかこういうの久しぶりな気がする。

いつもはコータローと一緒にパソコン弄るだけだし。

どうせなら、ね。

何かを悟ったのかコータローは笑いながら席を立った。


「どうせなら、楽しくいこう」

ピンチになればなるほど楽しもうとするその精神は昔から変わらない。


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