2章 配”信者”達 05 side-note
”どうだ着いたか?ここから眺めるに華麗な着地だったが”
「見ただろ?!」
”何を・・・?ノートのスペシャルでハイセンスでセンセーショナルな・・・”
「もういい!中に入ったら連絡する!切る!」
”ちょ・・・おま・・・・”
くそっ~なんてものを晒してしまったんだ・・・。
一生の不覚なり。
とっとと終わらせて早く帰ろう、そしてコータローの頭に打撃という名の記憶消去術をかけておこう。
あ、グラフィックボードは脳裏に焼きごてで焼きつけてやる。
私はエアボードの電源を切ると脇に抱え込んで屋上出入口へと急いだ。
屋上と言ってもこの基地局は基本建物は二階建てで中央には馬鹿でかい電子アンテナが高々とぶっ建てられている。
(ここは防犯の類は無い・・・一階だけ厳重なのは泥棒対策?)
そうは言っても中には金目のものなど何もなく、あるのはデカい筐体やとても管理機器だけである。
とても一人で持ち運べるものでもない。
まあ、いいか。最近物騒だしね。
一応指紋や痕跡を残さないようにグローブとマスクをして。
・・・・・・うん、完璧。どう見ても不審者。
何時の頃か疫病が流行って日本中あちこちマスクやらフェイスガード付けたやつらが居たそうだけど。
その頃なら今の私の頭まですっぽりのクマちゃんマスクも”ファッション”の一言でいけたのに。
「陰キャの時代が待ち遠しいぜ・・・」
そして私は子供だましのドアのカギを秒で開けるととっとと下へ降りていった。
「・・・・・・・・・・・熱っ!!」
秋も深まるというのに室内は異様に暑かった。
辺りの壁を見るとファンを始めとした排気処理は行われているようだったがそもそも
基本無人であるため空調などは切られていた。
しかもあまり人の出入りもない為か埃っぽく、長らく掃除をした様子もない。
「ここの管理人は首にしろぉーチキショウぅ・・・あつぃいいいいい!」
スマホの気温を見る。
(外気温34℃?!馬鹿じゃないの!!)
”おーい、ノート。降りたのか?どうだ、前と忍び込んだ時と・・・”
「ぎゃあっ!ちょっと急に連絡してこないでよ。びっくりして失禁寸前じゃない」
”スマン。後、替えのパンツは無いからな”
「もしそうなったら一万のレース入りのパンツ買わせてやるからな」
”マジすんません・・・オナシャス”
「こっちから連絡するから勝手にしゃべらんように」
全く、いつまで子ども扱いなのか・・・・。
さあ、早く仕事を片付けて帰ろう。私は定時至上主義なんだ。
私は社会人になったら絶対残業なんてしない。
私にとって何より大事なのは自分時間なのだ、陰キャゆえに。
金など要らん、コータローにせびるから。
(交換機、交換機・・・あった。前と変わらずかぁ)
リュックを下ろして”商売道具”を手早く広げる。
所定のコネクトを接続して愛用のうさぎさんモバイル機をオンにする。
「さてさて~ちょっくら失礼しますよーお邪魔しまーす」
私は検索に日付時間、回線種、サーバなど出来るだけ焦点を絞ってアクセスログの記録を漁ってみる。
「・・・ふむ・・・ふむ・・・・・うーん、まだ広範囲すぎるな。コータロー?」
”どうした?見つけたか?”
「海外経由のIP引っ張ってきてるけど、まだ絞り込めない。なんかいい案無い?」
”そうだな・・・回線種別はしたんだよな?後は・・・そうだ、ライブ動画だったんだろう?時間指定してみればどうだ”
「指定とは?」
”ライブ配信者なんだから必ず接続時間はライブの配信時間と合致するはず。接続時間もノートのうさぎさんPCなら検索条件に
含められるだろう”
ああ、そういう事。つまり特定の時間に”決まった時間”だけアクセスした奴を上げればいいわけだ。
「了解了解っ。ちょっくらやってみる」
しかし熱い・・・慣れてきたのかだいぶマシになってきたけど汗がPCや電子機器に落ちないか心配だ。
そう言えばタオルタオル・・・リュックの奥に・・・あった。
ふきふき。
お、なんか風も吹いてきて涼しくなってきた。
”どうだ?見つかったか?”
「1件キターーーやったぜ私、20万グラボゲットだぜ」
”20万?!2万の間違いだろう!”
「今日日20万なんてグラボの中じゃ脆弱の部類ですよだんな」
”くう・・・(ザー)ふざけ・・・・(ザー)”
ん、なんか調子悪いな。
ま、いいか。んー楽勝じゃん、風が涼しくて気持ちいい!
勝利の風は私に吹いている。
ん、吹いている?
”ノート(ザー)・・・そっち・・・・(ザー)(ザー)”
「え、何々っ」
不意にとてつもない悪寒を感じ顔を上げて振り返ってみる。
私の眼前に現れたのは四基のプロペラを駆動させながら空中を浮遊する小さなボールのような代物だった。
しかも既に周りには数機存在する。
「 !? マイクロ(小型)ドローン!」
「動かないでくださいましっ」
しまったぁ、そういえば慣れているせいか辺りに人がいないかくまなく調べるの忘れてたぁ!
吹いていた風はドローンの風か・・・。
「ログを取る必要はございませんわ・・・あなたはここでゲームオーバーですのっ」
(しまったぁ。コータローの無線にノイズが混じってる時点でドローンを疑うべきだったっ)
そしてこいつの声、今時こんな奴いるのかというぐらいの高飛車な態度。
ま、まさかぁ。
「あ、あんた”ハート”でしょ。今時語尾に”まし”とか”ですわ”とか付ける女はアニメかイかれたメンヘラぐらいしかいないからっ」
「な、なんですってぇええええ!あなたっ、今自分の立場がわかってるんですの?!」
周りのドローンが私の目の前で遊覧飛行する。
この球体ドローン・・・どっかで見たことが・・・ああっ。
「こ、これって・・・軍用ドローンですかぁ?!!!」
「今頃気づきましたのね・・・そうですわ、中は爆弾入りの軍用ドローン・ボールサイファーですわ。
爆破威力は下げているものの、あなたに歩けないほどの大火傷を負わすことぐらい容易いですわよ」
ひぃいいいいいいいいいい!な、なんでこんなことにぃ。
「さぁ、ナイトハルト様を嗅ぎまわる曲者。あなたの正体を白状していただきましょうか」
ど、どうしよう。こ、こんな時はコータローならどうするか・・・えっと・・・うーんと・・・その・・・あの・・・ああそうだっ。
「そういうか・・・あんたがハートかどうか怪しくなってきたなっ。なんだよ、そのはだけた服!乳が見えそうだよ!露出狂じゃないの?」
「こ、これはここがあんまりにも暑いから仕方なく脱いだだけの事っ!そ、そういうあなたこそ何そのふざけたマスクは?!
犬になったつもりですの?!」
「いぬだってぇええ!?これはクマなの!クマちゃんマスク!」
「ふん、わたくしよりあなたの方がよっぽど不審者ですわっ、飛んで火にいる何とやらですわ」
よしよしよしー何とか話を逸らす事が出来た。このままコータローが異変に気づくまで・・・。
「てか話をそらしてますわねっ!そうは問屋がおろし金ですわっ!」
「おろし金ですかそうですか・・・」
まあ、そうだね。気づかんわけないわな・・・・・・どうしよーーーー。
「ナイトハルト様はここで張っていればカモが来るとおっしゃってましたがこんな間抜けとは・・・わざわざAIカメラを付ける必要も
無かったですわね」
やっぱりナイトハルトの差し金か・・・しかもAIカメラもこいつが付けたなんて、こいつ金持ちかっ。
金持ちマジ許すまじっ!!!
「な、何ブツブツ言ってるのでしょうか・・・ちょっと怖いですわっ。っ?!ちょっと待ちなさい、それは何なの!!」
「な、なにって何のこと?!」
「それよそれ!その脇に挟んでいる白い板。怪しいですわっ!床に置きなさい!」
嘘ッ!マジでこいつエアボードも知らないの!?周知の事実、知らないのは田舎の爺さんばあさんぐらいだぞっ。
なんてことだ・・・この人あんまり外でないんだ・・・私以上の陰キャがいたなんて。
そう言う意味では親近感湧くなぁ。
私は脇に抱えていたエアボードを床に置いてハートの方にゆっくり押し出した。
「それは一体何?!」
「え、エアボードです。怪しいもんじゃないよ、みんな知ってるし」
「え、エアボード?!も、もちろん知っておりますわよっ当たり前じゃない。腕前はプロ級ですわ!」
あ、こいつ絶対知らない。
・・・ちょっと待って、チャンス到来かもっ。
「・・・プロ級なら使い方もわかるでしょうに、バッテリー抜いて無効化したら?」
「わ、解っておりますわよ。ええっと、これは、どういう、その・・・み、見慣れない型ですわね、古いのかしら?」
手に取って試行錯誤するハート、もう少しだ、もう少し角度を変えろ!
「えーと、ここの、あ、こ、このダイアルですわねっ」
キたぁ!
「ダイアル一杯に回して。黄色のボタン押すの」
「黄色のボタン・・・」
きゅいん!スコーーーーーーーーーン!!!!!
「ぶぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「うわ痛そう・・・・・・気絶したかな、ご愁傷様」
エアボードはダイアルが目いっぱい回されたことによって最大出力になり、更に手に持っていた位置がセーフティロック解除の感圧場所に
なっていたことで”ミサイル発射”状態になっていた。
再び感圧が外れてセーフティが掛かりゆっくり落ちてきたエアボードを片手で取ると思わず勝利のポーズをとってしまった。
「恥い・・・・あ、そうだこいつのスマホっ」
年の為浮遊するドローンを警戒しながらハートの手に持っていたスマホを拾い上げる。
「よしっコントロール掌握。ドローン切って、カメラもこれで見てたのか・・・無力化しよう」
ドローンがぽとぽと地面に落ちるのを確認するとコータローに連絡を取った。
”・・・・・・・・どうした!?何があった!ノート!応答しろ!”
「コータロ、おつかれ」
”よかった。さっきからすごいノイズで音信不通になってたぞ。一体そっちで何があった?”
「ハート捕まえちった」
”・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?”
グラボはもうプロゲーマ仕様で決まりだと確信した瞬間だった。




