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なんでも屋

初投稿です、こんなニッチなジャンルを読みに来ていただいて感謝感激です!

欧州のある国の街、ローア。






小さな地方都市で、穏やかな街。






珍妙な怪奇事件が起きるが、別にここだけの話というわけでもない。





そこの裏路地にある寂れた何でも屋ハウス・デア・ディンゲ。


 



客の通りも少なく、まず普通の人なら辿り着くことは稀、と言っても売れてないわけではない。






「しかし、平和な事案ばっかだ。マンゴラドラの採取は割りに合わんし、少し刺激が足りないな」






そう言ったのは、店主のハンス・ドロッセル。


39歳とだんだんと枯れていく年齢だが、清潔感のある長髪に顔つきは男前だ。きっとその魅力は衰えていないのだろう。






ハンスは煙草に火をつける。


綺麗な銀色の灰皿に煙草の灰を落とす。昨日まであった大量の吸い殻はどうやら弟子ーーと言うよりかは従業員が捨ててくれたみたいだ。







彼女はハンスの弟子と自称しているが、彼自身はあまりに人を育てることに興味はない。唯の成り行きの結果だ。






今日は仕事もないので、暫定的な休日だ。彼女が目を覚まして来るのは昼頃だろう。





ハンスも彼女も"夜行性"よりの存在と言えるし、当然彼女が起きてくるのが遅いのは当然だ。逆にハンスが例外なのだ。


 



その時だ。ドアをノックする音が響き渡る。






「客か......人か魔か」 





ハンスは座っていたソファから腰を上げ、灰皿に煙草を押し付けた。



ハンスの何でも屋は、現代の裏に潜む人外向けで商売をしている。


普通の客の対応の方が楽なので嬉しい、それが本音。





「いらっしゃい」





扉を開けると、そこには若い女が立っていた。




ハンスは一目で分かった。




目の前にいるそれは人間ではない。





女の外見は、淡麗だ。長いブロンドの髪に、この現代において似つかわしくない古風なドレス。

肌は綺麗ーーいや、死体のそれだ。


人形臭い人外。




「何用でしょうか? お嬢さん」


 

それがなんだというのか、ハンスはこう言った面倒な存在を金に変えているのだ。


 



「私はただの付き人、本題は主人あるじからお聞きくださいませ」



人形女、あるいは死体女は身体を横にずらす。


その後ろからより小柄な少女が姿を現した。




年齢は15歳もいかないくらいか、左右非対称に部揃いの髪、顔は眼帯が目立つ。

何重にも布を重ね合わせた黒いローブ。

小さな身体には似つかわしくないほどの堂々とした態度。




あからさまに只人ではないことだけは分かる。



 

「依頼を頼みにきた。良く働いてくれると聞いている」


  



少女はそうとだけ言った。



彼女の片方だけ現在の瞳はドブの底のように濁っていて、どうも好きになれない。

正直、久しぶりの嫌な客の気がしてならない。




ハンスはとりあえず、中に招き入れ来客用のソファに彼女を座らせる。彼女の従者は背後に立ちっぱだ。






「それで依頼内容はなんですか? 一応言いますが、人殺しと大っぴらな犯罪は無理です」


「心配はするな、ただの探し物だ」


「何をお探しで?」





ハンスは少し眉を顰める。

というのもこの手の探し物は非常にめんどくさいものが多い。




「これと同じもの......カトレア」



少女は従者をそう呼んだ。


人形女改めてカトレアは、懐から一本の古い鍵を出す。



銀色の大きな鍵だ。手のひらに収まるかどうかの。




「結び目の鍵、そう呼ばれていた魔具、もう一つ同じものがあるはずなのだが、不服ながら私の手元にない。見つけて欲しいわけだ」




結び目の鍵ーー聞いたことはない。あの"情報屋"の知り合いなら知っているかもしれない。



カトレアが相場より多い金額の入った袋をテーブルの上に置く。



「これは前金だ。見つけて渡してくれるのなら、これの3倍は出す」



前金ですら相場より多い金額だ。大体こういうパターンは本当に嫌なことが多い。



「依頼は受けさせてもらいます。成功できるかは約束はできませんが」


「できれば、必ずして欲しい」



なんとも冷淡な印象を受ける。一体何者だろうか。




「ところでお名前を伺っても」




著名な魔法使いや魔女ーー人間よりの異形についてならある程度名前は押さえてある。

これで聞いたことのある存在なら、少しくらい安心できる。



「リゼ、リゼ・フォルト」




しかし帰ってきた返答は、全くもって知らない名前だった。





しかし、フォルトだけは聞き覚えがある。




かつて疫病を抑えた白魔術師の家系の姓だ。


しかし、そのすべての血縁は異端審問で当の昔に全員が殺されている。流石にその家系と関係はないと思うが。




「鍵は置いていく、それに関しては無くしても見つけられるように細工してあるから心配は無用。それと、見つかり次第カトレアに報告を頼みたい」



リゼはそういうと、カトレアが封筒に入った何枚かの白紙の手紙を渡してくる。



「その紙を破れば、カトレアがここまでくる。何か進展があればそれで頼みたい」




リゼとカトレアはそう言い残し、その場を立ち去った。




「面倒にならなければいいが......まぁ大丈夫だろう」



しばらくの沈黙の後、テーブルの下に隠していた灰皿を上に置き直す。


テーブルの上に置かれた封筒を見つめながらも、煙草に火をつける。






「にしても古風だな、今どき魔術師もスマホくらい使うぞ」

よろしければ、ブクマ等々よろしくお願いします。励みになります!

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