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世界の危機なんて縛りプレーで余裕だが?  作者: アサヒ
五章 バカの四人羽織
35/40

35話:暇を持て余した、勇者たちの、遊び

 ついにナキの最大強化が切れた。

 纏っていた魔力が減衰し、肉体が通常の強化状態へ戻る。

「チッ。どうするかな」

 ナキは受け止めたボールを弄びながら、一丁前に次の手を考えてるような顔をする。

 そこへすかさずリシャが指示を出した。

「ナキ。そのボール、ハレにパスして」

「パスだァ?」

「んっ。あいつに返してあげて」

 まるで、拾ったものを持ち主に返すのは当然、とでもいうような口調。

 無論モンスター相手にそんな道理を守る必要はないのだが、そこはナキ。

「そッか。ほらよ」

 素直に投げ上げられた青い球は、緩やかな放物線を描き、きれいにハレの手元へ。

 パシッ。

 

 それを、ハレは受け取った。


「ロン」

「最高だリシャ! 愛してるぜ!」


 いろいろ試した検証の一手が、ついに攻略の足掛かりをつかむ。

 足りなかったピース。概念の特定。そこからの攻略法までもが、一瞬でロンの脳内に組み上がる。

「自由。やつの纏ってる概念は、自由の青(・・・・)だ」

「んっ……なるほど」

 ロンの口から暴かれるハレの秘密。その一を聞いて、リシャは十まで理解した。

 しかしあアホの子二人はそうもいかない。

「あァ? それがなんで絶対防御につながるんだ?」

「そうだよ! 自由人は無敵ってわけ?」

「自身の自由な行動を阻害する意思と行動、その全てを遮断しているんだ。不死属性ってよか、干渉拒否なんだよ!」

 純粋な自由(・・)の渇望。それがハレの特性。

 故に、自身の自由(・・)をわずかでも阻害する他者からの干渉、その一切を受け付けないのだ。

 蹴ろうとしたボールを横取りされるのは自由の阻害(・・)。ボールを返してもらうのは自由の後押し(・・・)

「つまりどういうことなの⁉」

 フリンテはいまいち理解できていないらしく、パルクールを続けつつ簡潔な説明を求めてきた。原理を避けて結論だけ教えてくれと。

 その意思を汲み、ロンは端的に答える。

攻撃(・・)は、一切通じない」

「「何一つ好転してねえ⁉」」

 その言葉足らずな解説に、きれいにツッコミがハモる。

 しかしロンとリシャが不敵な笑みを浮かべていること。これがあることを証明していた。

「でも、見つかったんだよね? 打開策!」

「理屈はな。三分だけ時間をくれ。作戦をまとめる」

 原理は判明した。あとはどう実行するか、具体的な手順を考えるだけだ。

「……まともな手段考えてよ?」

「いつもまともだが?」

「だあぁもうわかったよ! 行くよナキ!」

「おうッ!」

 言われた三分を稼ぐため、フリンテはまた高速軌道に入り、ナキも周囲を走り回る。

 最大強化を失ったナキに、砲撃を直接受け止めるほどの防御力はない。しかしその強化は通常状態でも一級品。パンプアップされた脚は超速を生み、砂漠だろうが嘘のような速度で駆け回る。

「ロン、どうするの?」

「そうだな。思いつくのは、自由を害す意思なく結果として(・・・・・)ハレに攻撃する方法だ」

 概念魔法とは、純粋な想い……つまりは意思(・・)に起因する。

 ハレの防御対象の判別条件もおそらくはそこ。ハレの自由に干渉する意思があるか、無いか。

「何も知らない魔法使いに、何の説明もなくここら辺を遠距離爆撃させる。別のモンスター用に仕掛けられたトラップに誘導する。何も考えず頭空っぽにして攻撃しまくる。このあたりは有効だろうが……」

「おもしろくない、よね?」

「あぁ。これは正攻法だ」

 ロンはロマンに憑りつかれた男。

 そんな男が、用意された攻略法で満足できるわけがない。


「正面から、ぶっ飛ばす!」


 ドゴッ! バキッ!

 その時、また砲撃が放たれた。

 ナキもフリンテも直撃は免れたものの、風圧を喰らい土に転がされている。さっきまでは余波程度で体勢を崩されることはなかった。

 

 そしてなんと、リシャのバリアにひびが入っている。さらに威力が上がっているのだ。

 

「ロン……まだ、なの?」

 肩で息をしながら、肘を突き、必死に体を起こすフリンテ。ナキはまだしも、彼女はそろそろ限界だ。これ以上威力を上げられたら、本当に余波が即死ダメージになってしまう。

 しかし、

「いや、充分だ。威力上がんのは好都合。お前ら指示出すからよく聞けよ!」

ここで、暗黒知将が立ち上がる。

 その不敵な笑みを見て、ナキとフリンテが「おせえよ」と口端を緩める。

「フリンテはナキに感覚共有。回避は考えなくていい。感知全開でバカをサポートしろ!」

「了解!」

「リシャは、バリアを形状変化してナキの右脚を覆ってくれ。脚の動きに追従するように」

「んっ」

「そして、ナキ!」

「おゥ」

 そこまで言って、ロンはリシャのバリアから歩み出る。

 ナキの近くまで行くと、立ち上がったナキの胸に右の拳をトスッと打ち付けた。

「俺らを信じて、全力で奴の球を蹴り返せ」

 ロンの指示は、ハレのボールを利用した攻撃。先程通用しなかった上に、明らかにハレの意志を害する行為だ。


「奴の遊び(・・)に、全力で付き合ってやるぞ」


 否。

 これはハレが求めた行動。ずっとやっていた球蹴り遊びだ。

 思えばハレはずっと笑っていた。そう、ずっと遊んでいたのだ。

 もちろん確証はない。ハレが遊んでいる(・・・・・)というのはロンの推論でしかないし、そもそもその概念が自由の青(・・・・)ではない可能性すらある。

 これは賭け。それも、当たっていたとして尚、不利な勝負。


「へェ。面白そうじゃねェか!」


 だからこそ、遊びに真摯なアホウドリだからこそ全力でぶつかる。

 埒外からの攻撃などという無粋は犯さない。

 ハレの求めた行動……その意思に沿う形での球蹴り合戦。

 ハレの自由の範疇で、正面切って殴り飛ばす。

「作戦、開始!」

 ロンは宣言と共に、回収しなおしておいた余剰魔力を拳を通してナキに受け渡した。

 リシャと違って魔力の波長を合わせられない以上、他人への魔力譲渡はロスが大きい。渡せてもせいぜい二割といったところだ。

 それでも、最大強化数秒くらいはもつ。

「これで何とかしろ」

「充分だッての」

 魔力を渡し終えたロンは拳を引き、ハレに向き直って声をかける。

『ようガキんちょ』

 今まで話していた言語とは違う。それは古代の言葉だった。概念魔法が日常に使われていた時代の言語だ。

『遊んでやるから、ちょっと待ってな』


次回

《刹那の見蹴り》

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