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世界の危機なんて縛りプレーで余裕だが?  作者: アサヒ
四章 勇者ⅤSピ〇トグラム
28/40

28話:とりあえず何でも試してみるのは大事

 同時刻。

アルバのダンジョン第十層。

円柱状の岩の柱が大量に立っているエリアに、勇者パーティ|夕凪《》の四人が潜んでいた。

 目的はハレの討伐。

 決戦の場に十層を選んだのは、他の階層に比べて広く地形的にも有利だからだ。

 ハレの攻撃は強力。四人で防御を固めれば数発なら防げるだろうが、それでは勝てない。そうなると立体的な動きで避ける他ない。

 ハレに対して防戦に回れば確実に削りきられる。

 撃ち込まれる球は足で避けつつ、有効な攻撃手段を見つけ出す。これが夕凪の立てた作戦だ。

「想定だと、そろそろだな」

 チームメイトの一人が、プリシラに声をかけた。

 プリシラ以外の三人は皆男性冒険者。男女比で言えば丁度白銀の騎士団と真逆になる。男勝りなプリシラに恋愛感情を抱く者は、今のところ現れていないが……。

「えぇ、そうね」

 四人は現在、一本の石柱の天井付近に足場を作り隠れている。

 ドドドド。ダタタ。

 眼下にはモンスターの大移動。

 デミオーガ、地竜、金蟻……既に九十九層のモンスターも見受けられる。

 一体一体が雑魚とは言い難いフロアモンスターが洞窟を揺らし、その振動は石柱に潜む四人の精神すら揺さぶってくる。

 これらが全て地上に出ると考えたら、今すぐにでも焼き払ってやりたい衝動に駆られるが、今は見逃すしかない。

 魔力の消費は最小限に抑え、万全の体制でハレを迎え撃たねばならない。

「歯がゆいですね」

「えぇ。地上の皆のためにも、今は少しでも攻略法にアテを付けるわよ」

 などと、焦りを紛らわすかのように小声で打合せをしていたところ、

『ハハハハハ』

「「「「…………っ!」」」」

 ついに、聞こえた。

 忘れたくても脳にこびりついて離れない、あの声。

「プリシラ……」

「まずは私の最大火力をぶつける。たぶん効かないでしょうけど、周りのモンスターは一掃できるはずよ」

 少しでも地上の負担を減らすための、広範囲を巻き込む攻撃。プリシラはその準備にかかる。

 洞窟の薄暗い闇の奥に、ぼんやりと青白い発光体が見えた。

 ハレだ。

「行くわ」

 プリシラが両手を構えると、そこに火球が一つ出現する。

 大した大きさではないが、その密度が尋常ではない。手のひらからあふれる炎が、どんどんとその火球に凝集されていく。

 それは小さな太陽のごとく赤く白く輝きを増していき、洞窟内が真昼のように照らされた。


炎の赤(・・・)。紅薊」


 たった一言の詠唱。それをきっかけに、火球から赤き濁流が決壊し洞窟を駆け抜けた。

 失われた概念魔法の一つ。炎という概念そのものを顕現させ、形を成し、放つ。

 その炎は岩盤を溶かし、肉を焼き、石柱がバタバタと倒れていく。

 見渡す視界全てが煉獄に染まった。

 蔓延るモンスターは悉く飲み込まれ、炭も残らず消えていく。

 本来なら、プリシラたちも余波だけで消し炭になっている火力だが、そこは魔法。自分達には影響がないようコントロールしている。

 しかしその光景は肌に灼熱を錯覚させるほどに鮮烈だ。

「炎が消える。皆動く準備を」

「「「了解」」」

 九十九層のボスを焼き殺した一撃だが、それがハレに通じないことは織り込み済み。

 炎の勢いが弱まり、消え、溶けた岩肌が急速に冷え固まったとき、そこには変わらずの姿でハレが立っていた。

『ハハハハハ』

「散開!」

 プリシラの合図で四人は柱の上から飛び退る。後方に残る石柱に次々と飛び移り、ハレに的を絞らせない。フリンテには遠く及ばないものの、俊敏で訓練された動きだ。

 そのパルクールに、ハレは視線を散らし翻弄されている……ように見える。目がないためわからないが。

――あのハレ相手に、接近戦は下策中の下策。さあ、ここからが勝負よ!

「ガリル!」

「おう!」

 移動しながらプリシラが指示を出し、ガリルと呼ばれた細身の男が応じる。

「……空間魔法、結界アーカーシャ」

 呪文を詠唱し、ハレを指さす。すると、ハレを丁度囲えるくらいの立方体の光の箱が展開され、その青白い体を包んだ。

 魔法の中でも屈指の難易度を誇る空間魔法。それを応用した拘束用の結界だ。

 構築に時間がかかるため、対象を拘束するために事前に拘束しなければならないという使い勝手の悪さはあるが、移動速度は早くないハレ相手なら相性がいい。

 これで拘束できればよいのだが……、

「ちっ、だめか」

 しかしハレは、何事もないかのようにその光の箱をすり抜け歩み出てきた。

 通り抜けた結界の壁は、型抜きのようにハレの形の穴が開いている。

『ハハハハハ』

 あざ笑うかのように声が響く。

「次! シオタ!」

「仕方ありませんね!」

 間髪入れず指示が飛ぶ。

 まるで少年のように幼い見た目のシオタが、次なる一手を展開した。

「精神魔法。チャームボイス!」

 それは、一定時間自身の声に魅了効果を付与する魔法。

 完全に対人用の手札だが、極稀に効果があるモンスターもいると聞き、プリシラの指示で習得していたものだ。物理的な攻撃が有効でない以上、こういった精神攻撃が案外効く可能性があると。

 その蠱惑の美声が、ダンジョン内に伝播する。


『こんなことやめてよ! お姉ちゃん!』


「「「…………」」」

『ハ、ハハ……』

「だめじゃねえか!」

 チャームボイスによって放たれたシオタのありがたいボイス。

 しかしそれは、ハレに一笑のもとに切り伏せられた。

 心なしか引き笑いだった。

「もしかしたら、ハレは男なのかもしれんなぁ。プリシラ、次はどうする?」

「……お姉ちゃん、もうこんなことやめるわ」

「プリシラぁ⁉」

「はっ! ごめんなさい。つい」

 シオタのショタボイスによだれを垂らしていた一名が、正気を取り戻す。

「シオタの声が効かないなんて、ここまでの相手とはね」

「予想通りだろ」

『僕もそう思います』

「ふぐぅ!」

 チャームボイスは一定時間継続し、覚えたてのシオタでは途中でのキャンセルができない。

 約一名に都度影響が出るのを危惧して、「暫く黙ってろ」とガリルがシオタに指示する。

「はぁ、はぁ。次、マスクル!」

「おうよ!」

 最後に呼ばれたのは、筋骨隆々の大男マスクル。

 チームのタンク役であり物理アタッカーであるが、彼も今回のために魔法を覚えてきたという。

「頼むわよ!」

「任せろ!」

 マスクルは柱の移動をやめ、ハレの目の前に着地すると、盛り上がった二の腕を握りしめる。

「光魔法。ダブルバイセップス!」

 ぺかー。

「……」

 ぺかー。

「……」

 ぺかー。

『……』

 それは筋肉自慢大会用、筋肉発光魔法。効果、しあがる。

「後半二ついらなくなかったか?」

『僕もそう思います』

「いるわよ! 少なくともショタはいるわよ!」


違うよ。魔法少女プリティ☆ベルじゃないよ。


次回

《不死属性》

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