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世界の危機なんて縛りプレーで余裕だが?  作者: アサヒ
二章 決闘なんてしたところで大抵何も決まらない
10/40

10話:深夜テンション

 アホウドリは誰もまともに料理ができない故に、おいしい料理という言葉でリシャの腹が刺激されるのは必然。これは既定ルートだった。

「あの、ちなみに、素材の方は……」

「商業連合と相見積を取って決める。負けないよう頑張ってくれよ」

 そういいながら、ロンは異空間からワイ君の鱗を一枚取り出し、机に置く。

 査定のためのサンプルというわけだ。

「商業連合本部にも一枚預けてくる。高かったら百枚ばかり売ってもいい」

「しょ、承知しました……」

 この提案、どちらか高い金額を提示した方に売る……というような意味に聞こえるだろう。だが実際は違う。決して|どちらか一方に売る《》なんて言っていない。競争意識を持たせ金額をできるだけ吊り上げてから、どちらにも百枚づつ売るつもりだ。最大利益を出すための悪知恵である。はっきり言って詐欺である。

「それじゃ、俺たちはもう帰っていいな?」

「あ、あぁ、構わない。時間を取らせたな」

「あっ皆さん、祭りではお一人ずつ挨拶してもらうことになると思います。感動的なのを考えといてくださいね」

「はいはい」

 おざなりな返事をして、よっこいしょと腰を上げる四人。

 ナキに至ってはあくびが出ている。よっぽど退屈だったのだろう。交渉事はロンの担当のため、大体いつもこうなってしまう。

 応接室を出て、二人に見送られながらギルドを後にする四人。

 既に時刻は昼を回り、日差しがこれでもかというほど照っている。

 街の様子はまだまだ平常運転だが、新しい勇者が生まれたという噂が広まれば、上を下への大騒ぎになるだろう。少なくとも勇者祭後は、アホウドリの四人は時の人だ。

 面倒くさいなと、ロンは一人ため息をつく。

「そういえば、ひとまずやりたいこと終わっちゃったよねえ」

 そんな中、フリンテがポツリと現状を振り返る一言を放った。

 確かに、スレイ(・・・)はできなかったまでも、黒龍を攻略するという目標は達した。差し当たっての目標は無いと言っていい。

「んじゃ、新しいボードゲームでも買って帰るか?」

「タカーンがいい」

「いいねいいね。結構人気あるって聞いたよ」

「んじャ、俺もそれでいいぜェ」

 冒険者パーティ、アホウドリ。新しい勇者たちがひっそりと、このセラの街に爆誕した。

 しかしひとまずは、いつもの静かな日常に帰っていく。



 静かな日常に帰るはずだった。

 しかし事件が起きた。

 面白すぎたのである、新しく始めたボードゲームが。

「うわあああ! また四位だよおお!」

「ちくしょう。俺の小麦縛りプレーがぁ……」

「ハッハッハ! お前ら弱すぎだぜェ!」

「敗北を知りたい」

 昼も夜もなくタカーン、疲れたら寝て、起きてタカーン。寝てタカーン。

 タカーンタカーン。

 当然勇者パレードの存在などすぐに忘れ去り……、

「あほのみなさ~ん、準備できてますか~。入りますよ~って、うわっ!」

当日、受付嬢ミスメルが呼びに来た時には、四人とも二徹明けの状態でタカーンに向き合っていた。

「ははッは……、ぜんぜんかてなく、なッてきたぜェ」

「道はすべて、ふうさする……」

「あははは、今回の土地はあたりだぁ」

「ふっ。すべての縛り勝利まであと少し……ん?」

 全員目がイッてしまっている中、ロンが来客に気づき顔を上げた。

「よう、どうした? えっと……コムスメ?」

「ミスメルです! ちょっと皆さん何やってるんですか! 今日は勇者祭ですよ! 準備できてるんですか⁉」

「「「「まあ忘れてたよね」」」」

「でしょうね‼」

 そこからはてんやわんやである。

 ミスメルに急かされ、寝不足のまま慌てて風呂に入って身だしなみを整える四人。

 慌てすぎて、フリンテはラッキースケベを披露し、リシャは間違えてロンのジャケットを羽織り、ロンは小指をぶつけ、ナキは踊りだす。

 そんな艱難辛苦を乗り越えて、四人はついに会場へと到着した。

「はあ、はあ……。正直、黒龍戦より過酷だった」

「リシャが覚醒の魔法を思い付いてくれて助かったよぉ」

「副作用には……目をつむってほしい」

「へ?」

「効果中、深夜テンションになる」

「あははは! それって目が覚めたっていうよりキマッてるだけじゃん!」

 しかし後に、この副作用が事件を起こすことを四人はまだ知らない。

 とにもかくにも、四人は街の中央広場に案内された。その中心には木造の巨大なステージが建設されており、既にたくさんの人々が新しい勇者パーティの登場を待ちわびている。広場から延びる石畳の道には所狭しと出店が並び、華美な装飾も手伝って絶頂のお祭りムードだ。

 しかしどうやら、アホウドリが件の勇者パーティだという事実は広まっていないらしい。この二週間、四人の家に押し掛けて来る者がいなかったのもそのせいだろう。

 なるべく勿体ぶって、この場でお披露目したかったのかもしれない。

「時間になったら、皆さんにはあのステージに上がっていただきます」

 一般客から隔離されたエリアで、ミスメルが今後の流れを説明し始める。

「まず皆さんに登場してもらい、パーティの紹介を行います。これまでの経歴紹介……は、あえて省略します」

「賢明な判断」

「そこから、セラの市長さんからの挨拶や来賓挨拶が続きます。その後で皆さんには、前に話した通りそれぞれ挨拶してもらうんですけど、まあ当然……」

「「「「考えてない」」」」

「でしょうね」

 ミスメルは「このアホども……」とぼそりとつぶやき、額を抑える。

 さらりとした栗毛がその仕草によく映えるが、内心はそこまで爽やかな状況ではないのだろう。

 勇者の演説といえば、歴代勇者の石碑に刻まれたり、故事成語扱いで飲食店などのいたるところに飾られることもある。それほど重要なものなのだ。

「まぁ、私が心配することでもないんですけど……。とにかく、アドリブでもいいんで、いい感じにお願いしますよ。みんな楽しみにしてるんですから」

「「「「は~い」」」」

 しかしここで、リシャの副作用が軽く火を噴くことになる。

「あっ、いいこと思いついた! どうせだったらみんな、こんなのどうかな……」

 そう、四人とも現在深夜テンション。しょーもないことを面白がってしまう精神状態なのだ。


4人がやってるのはカ〇ンです。


次回

《挨拶バトル》

投稿時間は明日

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