森森の罠 その7
「シュッシュシュッシュシュシュシュ」
蜘蛛が何かいいたげに話しているが僕はモンスターの言葉が分からない。仕方なく、アルテミスの方に顔を向けて
「蜘蛛さんが何かいいたそうだけど、アルテミス分かるかな?」
「ウッキユウキュウキュウキュキュキュ」
アルテミスがコクンと頷き乍ら、早口で……
多分蜘蛛さんの言ってることを翻訳してくれているのだろう。蜘蛛語を兎語で…………。
うん、ぜんぜん二人が何話してるか分かんない。
どうしたものか?このクエスト、蜘蛛さんの協力が必要不可欠なんだと思うけど、どうやって蜘蛛さんとコミュニケーション取れと?
コミュニケーション取れたから、クエストが発生したし、なら、普通の蜘蛛さんとも話せるよね?っていう仕様なら一言申したい。
「人語が喋れる仲間が人質に取られたんですけど、一体どうやってコミュニケーション取れと?」
運営さん、これバグじゃないですか?バグですよね。
またまた心の中で盛大にため息をついてしまう。母親からは、幸せが逃げるからため息はやめなさいと言われているのだが、どうしても壁にぶつかった時は出てしまう。実際には、ため息はついてないのでいいではないかと思うが、母親からすると表情で分かるのだそうな。
バグでもこの際なんとかするしかない、自分の両側のほっぺたを両手でバシンと叩き、頭に刺激を入れる。
人間、理不尽なことはいついかなる時もあるものだ。
高校の時なんかは、僕の出身は雪国で、電車通学していたのだ。冬のとある日、いきなり朝から積雪80センチの雪が降った。稀に見る大雪である。
親は、車通勤で、この程度の積雪なら数年に一度は降ってるから、慌てることなく、駐車場の雪掻きをして、除雪車が雪をどかした後の道路を使って仕事に出掛けていく。しかも、いつもより2時間も早く。
雪がなにも積もってない日から、いきなり積もると、除雪車もそこまで手が回っておらず、除雪されてない道が大半だそうだ。それに、ノーマルタイヤからスノータイヤに変えてない車が多いので、各地でスリップして、脇道に突っ込んで、道路が渋滞するらしい。
ということで、僕は駅まで徒歩30分の距離を歩いて行くことになる。えっ、学校は休みにならないかって?連絡が来ないので行くしかないみたい。
駅に着けども、始発の電車も2時間待っても来ない。来たら来たで、満員電車。遅延措置があるだろうと次の電車で行くことに。他の乗客も大半が乗れていない。
その2時間後に電車が来て、学校に着いた時には、3限目が始まっており、先生に遅刻した理由を話すが、
「レオ、お前は遅刻だ。遅延措置は認めない。」
「えっ、いや先生、認めないって言われても公共交通機関が止まって来れなかったんですけど。」
「レオの言い分も分かる。だがな、他の生徒の大半は1限から来てるしな。電車で無理なら自動車や徒歩という手もある。出来ないと決めつけずに、出来る方法を探しなさい。学生だから、配慮してあげても良いのだが、社会に出てからは、そんな理不尽なことが山のように出会う。上司の失敗を部下が被るとかな。」
「はっ、はぁー」
空いた口が塞がらない。
「大人になる前に、理不尽に対して免疫をつけとけ。つけておけばむかっとすることは、それでもあるだろうが、何も出来ずに終わることはない。やれることが見つかるし、出来ることになるはずだ。どんな環境でも前に進めるだけの強さを持て。」
高校の先生のあの言葉が今も脳裏にクッキリと残っている。僕には、まだまだ理不尽耐性が少なく、壁にぶつかると停止してしまうことが多々ある。
が、それも回数を重ねるごとに免疫が多少なりともついてきたのか、フリーズする時間自体は少なくなってきている。
たまに常識を覆す上手な一手を打てることもある。
今回も理不尽発生。対応しなきゃ。




