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【ホムンクルスダンジョン】二

「え?」


見られている。不気味な【ツカイマ】達に見られている。まさか、自分も【ツカイマ】である事かバレたのか? いやいやまさかそんな訳がない。

と、内心色々と考えていたソウジ。


人型の【ツカイマ】は一斉にソウジに向かって走り寄って来た。


「うわうわうわ!」


狙いが自分である事に気がついたソウジは急いで出口まで走り【ホムンクルスダンジョン】の外に出る。


「ふぅ。」


逃げられたと思い一息つこうとした時、肩を強い力で掴まれ引き倒される。


「うぇ!?」


背負っていた籠が緩衝材がわりになり痛みは少なかったが地面に倒れた事には変わりない。起きあがろうと見上げた時、逃げられたと思っていた【ホムンクルスダンジョン】の【ツカイマ】がソウジを囲んで見下ろしていた。


「なん、で。」


【ツカイマ】はダンジョンの外に出られない。それが一般で知られている常識だった。

しかし今こうして【ツカイマ】はダンジョンの外に出ている。それによって辺りは【ツカイマ】が外に出ている事に人々は驚き、恐怖し、すぐに怒号や悲鳴が響き渡った。

【ツカイマ】達はそんな人々に我関せずと言った様子でソウジの肩や足を掴み【ホムンクルスダンジョン】へと連れて行こうとする。


「ちょ、やめろ!」


咄嗟に足を動かし【ツカイマ】の一体に蹴りを入れると勢いよく【ツカイマ】が吹っ飛んだ。


「この!」


力任せに残りの【ツカイマ】から逃れる。

距離をとったソウジを捕まえようと【ツカイマ】達が動こうとした。


「このやろう!」

「おらぁ!」


しかし外にいた探索者達が【ツカイマ】を討伐しようと立ち塞がり、次々と討伐していく。


「おぉっと?!」


目の前で起きた【ツカイマ】が討伐されていく姿に恐れ慄くソウジ。後退りして、ようやく両手で持っている【ツカイマ】の存在を思い出した。


「やべ。これどうしよ。」


今だに鳴き声を上げてもがく蝙蝠に似た【ツカイマ】を放り出すわけにはいかない。どうしたものかと考えた時、ソウジの足元が揺れる。


「ん、地震?」


外にいた【ツカイマ】が他の探索者の手によって全て討伐された直後、揺れが大きくなる。


「うわっでか」


独り言の途中、ソウジの足元の地面から巨大な【ツカイマ】が勢いよく飛び出してくる。どことなく蛇に似た【ツカイマ】が大きな口を開けて地面ごと上に吹っ飛ばされて宙に浮いたソウジを丸呑みする。そしてそのまま地面の奥底へと引っ込んでいった。

残ったのは地面にぽっかりと空いた底の見えない穴だけ。

一部始終を見ていた探索者達は現実を受け入れるのに時間が掛かった。




◆◇◆◇◆



「うぉわ?!」


【ツカイマ】に吐き出され地面に倒れるソウジ。その拍子に捕まえていた【ツカイマ】が飛んで逃げていく。


「…ここ、どこ?」


吐き出された先は研究施設のような場所だ。

【ホムンクルスダンジョン】一層に比べて明るいその場所には培養液の中を浮かぶ見た事の無い生物が入ったガラスのケースが並んでいる。

他には何かを計測する機械や手術台が置かれている。


「ようこそ私の研究所へ。」


見知らぬ場所に連れてこられて困惑しているソウジの背後から女性の声が聞こえてきた。振り返ったソウジは後ろにいた女の格好を見て絶句した。

下半身はハイヒールに黒いズボン。そこまではまだいい。

問題は上半身だ。白衣だけだ。白衣の下には何も着ておらず白衣は一つもボタンを留めていない。その為、腹が丸見えで白衣をめくってしまえば乳が丸出しになってしまう状態だ。

女の非常識な格好に、主に丸見えになりそうな乳にソウジは釘付けだ。


「驚いたよ。まさか【ツカイマ】が探索者の真似事をするとは。ここに連れてくるまで君の事をもしかしたら人間かもしれないと思っていたが、やはり私は間違っていなかった! 君は【ツカイマ】だ! そうだろう。」

「えぇ、まぁ、はい。」


青と黒のまだら模様の不可思議な髪色をしたショートヘアの女は興奮した様子でソウジに話しかけている。

一方ソウジは女の乳にしか目がいっていない。乳に集中していて生返事だ。


「君みたいな【ツカイマ】は見た事が無い! 聞いたことも無い! 知らないは由々しき事態だ。そうだろう?」

「え、はい。」

「分かってくれるか! ならば早速協力してくれ!」

「え?」


ソウジが乳に夢中になっている間に屈強な肉体を持つ人型の【ツカイマ】に掴まられそのまま手際よく手術台に乗せられて拘束される。


「え? え? え?」


あっという間に動けなくされたソウジ。力任せに抜け出そうとするが今のソウジの力でも拘束を破る事が出来ない。


「さぁ早速開こう!」

「ちょっ! 待て! あんた誰だ?! ここどこ?!!」


ようやくその質問をしたソウジに女は動きを止める。


「これは失礼。私はここの家主。いや、【マジョ】と言った方が分かりやすいかな。」

「…え?」

「初めまして。私は【人造のマジョ】、ハラーリャ・P・ロロナータだ。」


女、ハラーリャは興奮を抑えきれない様子で笑う。


「自己紹介は済んだ。では早速やろう! 協力に感謝するぞどこかのダンジョンの【ツカイマ】くん。」


笑ったままそう言ってハラーリャは道具の準備をする。

刃物。

注射器。

全てソウジの体を調べる為の手術道具だ。


「ちょ、ま」


ソウジが声を上げようとした時、ハラーリャの【ツカイマ】によって猿轡を噛ませられる。大声を出そうとしても猿轡によって遮音される。


「ではまず腹を開こう。」


衛生手袋をはめたハラーリャはソウジの服を捲り上げて腹を露出させると少し触った後、開腹宣言をしてメスを手に取る。

金属の冷たさに命の危機を感じたソウジは逃げようと必死に体を激しく揺らすが拘束は全く外れない。


激痛から悲鳴を上げたかったソウジだったが、猿轡はその声すら吸収した。

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